シナリオ・プランニング
シナリオ・プランニングとは?
「シナリオ・プランニング」とは、将来起こりうる複数のシナリオを描き、よりよい経営判断を導き出すための手法です。未来に何が起こるかは誰にもわかりません。さまざまな可能性を検討し、長期的な視点で戦略を立て、チャンスに変えることを目指す手法です。シナリオ・プランニングを実践し、複数の行動パターンを作成しておくことで、将来を過度に楽観視することがなくなります。また、予想外の事態が起きたときも不安に飲み込まれず、将来に備えられるようになります。
未来予測は正確でなくていい
シナリオ・プランニングが目指すゴールとは?
シナリオ・プランニングが確立されたのは、1965年。英国に本拠地を置く、石油やガスを扱うシェル社(旧称:ロイヤル・ダッチ・シェル)が、何が起こるかわからない未来に適切に対処するための取り組みを始め、現在に至るまでこの手法は引き継がれています。当時、米国・欧州・日本では石油の需要が急増し、石油埋蔵量の減少が予見されていました。いずれ石油の需要と供給のバランスが崩れ、石油供給国が主導権を握ることを想定し、さまざまな対策に乗り出したのです。
シナリオ・プランニングは、未来をいかに正確に予測するかを目的にしているわけではありません。複数のケースを視野に入れ、意思決定層のメンタルモデル(自覚なしに持っている価値観、思い込み)を柔軟にし、意思決定の質を高めることを目的としています。また、対処法を検討するプロセスにおいて、自社が大切にしたい世界観や物事が見えてきます。そのため、シナリオ・プランニングはプロセスそのものが目的と言うこともできます。
実践方法はいくつかありますが、書籍『実践 シナリオ・プランニング』(新井宏征著)によると、シナリオ・プランニングは次の7ステップで解説されています。
(1)シナリオテーマ設定
(2)外部環境要因リサーチ
(3)重要な環境要因の抽出
(4)ベースシナリオ作成
(5)複数シナリオ作成
(6)シナリオ詳細分析
(7)戦略オプション検討
シナリオ・プランニングを取り入れるメリットは、思い込みを排除できること。事業が順調なときほど「今後もうまくいくだろう」と考えがちです。想定外の出来事をあらかじめ検討することで、現状維持バイアスを取り外すことできます。それにより既存の事業や顧客、ビジネス環境に対する固定観念が緩まり、現状にとらわれないアイデアや戦略が生まれやすくなります。経営層や従業員が思考プロセスを共有し、事業戦略や施策に反映させていく。シナリオ・プランニングはそのためのコミュニケーションツールなのです。
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