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【ヨミ】ジンケンデューデリジェンス

人権デューデリジェンス

人権デューデリジェンスとは?

人権デューデリジェンス(Human Rights Due Diligence)とは、企業が増大する人権リスクを調査・特定し、防止およびトラブルを対処する取り組みのことです。具体的には、外国人技能実習生の過酷な労働環境や賃金未払い問題、下請け工場での強制労働・児童労働問題、新疆ウイグル自治区やミャンマーなどにおける人権侵害問題などが挙げられます。また、近年注目されているサステナビリティを重視する動きもあり、世界的に「ビジネスと人権」の問題に取り組む動きが出ています。

そもそもデューデリジェンスとは、「Due(十分な、正当な、しかるべき)」「Diligence(努力、注意、勤しむ)」という意味があり、投資対象となる企業のリスク・リターンを把握するために、事前に調査を行うことです。主に金融業界におけるM&Aや企業・組織再編の場で使用します。この考え方を、人権リスクに応用したのが人権デューデリジェンスです。

掲載日:2022/11/18

1.人権デューデリジェンスとは

近年、グローバル化の加速によって、企業のサプライチェーン(供給網)や取引先は世界各国に拡大しています。企業活動に関わるすべてのフェーズ・範囲において人権を犯すリスクは広がっており、企業はその管理を徹底しなければなりません。

ジェトロ(日本貿易振興機構)が実施した2021年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、人権尊重方針の策定を行っている企業は、全回答企業の38.1%であり、大企業では64.3%、中小企業では32.7%と大きく差が開きました。中小企業では「数年以内に方針策定を検討する」「今後も方針策定をする予定はない」と回答する層が一定数あり、予算や工数をかけられない状況であることがうかがえます。国際経済連携推進センターが作成した「中小企業のための人権デュー・ディリジェンス・ガイドライン」などを参考にするなど、中小企業においても人権デューデリジェンスの取り組みを強化していく
ことが求められています。

アンケート調査のグラフを基に『日本の人事部』編集部が作成

人権リスクとは ―具体例―

人権リスクとは、企業が事業活動を通して、労働者、消費者、地域住民といったステークホルダーの人権を、直接的・間接的に侵害しかねない危険性のことです。企業の事業活動の範囲が拡大する中で、人権リスクは多岐にわたる上、より煩雑化・複雑化している状況です。具体的に以下が挙げられます。

(1)賃金の不足・未払、生活賃金(2)過剰・不当な労働時間 (3)労働安全衛生 (4)社会保障を受ける権利 (5)パワーハラスメント (6)セクシャルハラスメント (7)マタニティハラスメント(マタハラ)/パタニティハラスメント(パタハラ) (8)介護ハラスメント(ケアハラスメント) (9)強制的な労働 (10)居住移転の自由 (11)結社の自由 (12)外国人労働者の権利 (13)児童労働 (14)テクノロジー・AIに関する人権問題 (15)プライバシーの権利 (16)消費者の安全と知る権利 (17)差別 (18)ジェンダー(性的マイノリティを含む)に関する人権問題 (19)表現の自由 (20)先住民族・地域住民の権利 (21)環境・気候変動に関する人権問題 (22)知的財産権 (23)賄賂・腐敗 (24)サプライチェーン上の人権問題 (25)救済へアクセスする権利

このような人権リスクを放置していると、企業イメージの低下だけではなく、悪評や風評被害、不買運動といったレピュテーションリスク、株価下落や経営破たんなどの財務リスク、従業員の業務ボイコットや大量離職などの人的リスクなどが起こりやすくなります。企業経営に大きなマイナスの影響を与えかねません。

ここで注意しなければならないのは、取引先が人権リスクを犯した際にも、企業の責任として問われる可能性がある点です。今後企業には、自社内はもちろんのこと、調達から生産・販売・リサイクルといった、サプライチェーン全体における人権リスクの管理・対応が求められます。

企業に求められていること(指導原則)

人権デューデリジェンスの重要性が認知されるようになったのは、2011年に国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」が一つのきっかけとされています。指導原則では、国だけではなく全ての企業に責任があるとしています。企業が人への負の影響を回避して、適切に防いでいくためには、以下の三つを実行・運用しなければなりません。

(1)人権方針の策定
企業は、「人権を尊重する責任を果たす」というコミットメントを、企業方針として社内外に表明することが求められます。
例:人権方針の策定・公開、人権への取り組みの体制確立など

(2)人権デューデリジェンスの運用
企業は、すべての事業活動の過程における、人権への負の影響を特定し、予防・軽減し、対処方法への説明について、責任を持つことが求められています。
例:人権への負の影響の調査や特定・評価、人権研修の実施、人権報告書の作成・公開など

(3)救済メカニズム(苦情処理・問題解決制度)の構築・運用
人権への悪い影響を直接引き起こした場合、もしくは、助長を確認した場合、企業は正当な手続きを通じた救済を提供・協力することが求められています。
例:社内向けホットラインおよび、顧客や取引先、サプライヤーなどへの問い合わせ窓口の設置など

2.人権デューデリジェンスが広まった背景

人権デューデリジェンスは、企業のグローバル化やSDGs、サステナビリティの文脈において、注目が高まっています。1990年台後半以降、東南アジア諸国の工場での児童労働や劣悪な環境下での長時間労働などが問題視され、世界的な不買活動へと広がったことも注目されました。また日本においては、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催、コロナ禍によってサプライチェーンの全容把握および多重化が求められるようになったことも、人権リスクを身近なものとして考えるようになった背景だと言えるでしょう。

人権デューデリジェンスの歴史

世界的な経済発展に伴い、1980年代後半から国連にて「ビジネスと人権」について議論されるようになりました。2008年にラギーフレームワークと呼ばれる人権デューデリジェンスの考え方が誕生します。これは、国連事務総長特別代表であるジョン・ラギー氏によって提唱された「人権の保護、尊重、救済の枠組み」のことです。

これを踏まえて2011年、国連は「ビジネスと人権に関する指導原則」を全会一致で採択しました。本文書は「国家が人権を保護する義務」「企業は人権を尊重する責任」「人権侵害からの救済を受ける権利」の三つの柱で構成されています。その後、「ISO 26000(社会的責任に関する国際規格、日本ではJISZ 26000)」の中でも人権の項目が設定されるなど、人権デューデリジェンスの基本的な考え方が大きく影響を与えています。

日本は欧米諸国と比べ、人権デューデリジェンスへの取り組みに後れが生じています。日本政府は2020年10月に「「ビジネスと人権」に関する行動計画(NAP)」を策定しました。今後政府が取り組む施策や企業活動における人権デューデリジェンスの促進について明示されています。

2021年11月、経済産業省が「ビジネス・人権政策調整室」を設置。2022年8月5日には、企業がサプライチェーン全体で人権侵害を把握し、改善・運用に取り組む人権デューデリジェンスの指針案「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」をまとめました。以下のような点がポイントとなっています。

対象:中小企業を含む、日本で事業活動を行うすべての企業
範囲:直接的だけではなく、間接的な取引先の人権侵害も対象
基本的な考え方:経営陣が人権尊重を積極的・主体的に継続して取り組む必要性がある

また、人権侵害リスクが特定された場合、「経営陣の最終責任」で相手との関係性を維持しながら防止・軽減に取り組むこと、すべてのリスクに一斉に対処することは難しいとし、深刻度・優先度を踏まえて順次に対応することなど、対処法についても明示されています。「日本特有事項である外国人技能実習生への配慮」「海外取引先の人権リスクが発覚した場合の対処法(取引停止は雇用損失の観点から最終手段と位置付ける)」なども記載されており、国際競争力の強化につながることが期待されています。

さらに、2023年4月4日、経済産業省は人権デューデリジェンスのための手引書「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料」を正式に公表しました。2022年に策定した指針案に基づき、企業がまず行うこととなる「人権方針の策定」や人権デューデリジェンスの最初のステップである「人権への負の影響の特定・評価」について、検討すべきポイントや実施フローの例を示しています。

人権デューデリジェンスに関する世界各国の法制化の動き

欧州では、すでに人権デューデリジェンスに関する法規制整備が加速しています。取り組みに関して義務化し、違反した企業には罰則が定められています。一方、アジア諸国においてはまだその動きは鈍い状況です。

現代奴隷法(イギリス:2015年)
奴隷労働及び、人身取引に関する取り組み開示を義務化

企業注意義務法(フランス:2017年)
大企業において、人権・環境リスク回避のための「人権デューデ リジェンス」計画の作成、実施・開示を義務化

サプライチェーン・デューデリジェンス法(ドイツ:2023年1月施行予定)
大手企業を対象にリスク管理体制の確立といった人権・環境デューデリジェンスの対応を義務化

カルフォルニア州サプライチェーン透明化法(アメリカ:2012年)
サプライチェーンにおける奴隷労働・人身売買排除の取り組み、情報開示を規定

その他
児童労働デューデリジェンス法(オランダ:2019年制定※未施行)
ウイグル強制労働防止法(アメリカ:2021年)

3.人権デューデリジェンス取り組みのメリット

企業は人権デューデリジェンスに取り組むことによって、「人権を尊重する企業」だと認知され、社会的な信頼・価値を向上させることにつながります。具体的には以下のようなメリットが考えられます。

・社会的信頼やブランディング価値の向上
 社会に貢献して信頼を得ることで、企業価値が高まり、売上増や経営の安定が見込まれます。

・従業員モチベーションおよび、人材定着率の向上
 従業員の意欲が高まることで、生産性向上や優秀人材の獲得、離職低下につながります。

・法的・経済的・人的リスク回避による企業経営の維持
 事前に負の影響を特定し、対処できていれば、訴訟や株価暴落、ストライキなどを未然に防ぐことができ安定した経営につなげられます。また、管理体制が構築されることで、再発による影響も軽減できます。

・グローバルでの競争力強化
 世界における信頼度も高まり、新たな市場・取引先の獲得や新規事業創出、グローバル人材の確保などにつながります。

4.人権デューデリジェンスの進め方・ステップ

ジェトロ(日本貿易振興機構)が実施した2021年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、海外で人権尊重を踏まえたサプライチェーンを構築する際の課題は、「具体的な取り組み方法がわからない」が23.7%と、取り組み方がわからない企業が依然として多いことがわかりました。現在は関係省庁によって人権デューデリジェンスの進め方やガイドラインが発信されています。

企業が人権デューデリジェンスに取り組むステップは以下が参考になります。
(参照:外務省「「ビジネスと人権」に関する取組事例集」外務省「ビジネスと人権とは?」  国際経済連携推進センター「中小企業のための人権デュー・ディリジェンス・ガイドライン」より抜粋)

人権方針の策定・決定

人権デューデリジェンスを行う上での最初のステップは、人権方針(人権ポリシー)の策定です。自社が人権を尊重した企業活動を行うことを社内外に宣言しなければなりません。自社がどのように人権尊重を捉えており、国際的ルールを把握し、従業員や取引先、関係者にどのような行動を期待するかを明示します。指導原則において、人権方針を策定する際には五つの要件が必要だとされています。重要なのは、経営トップ自らが自社の考えや期待を示すことです。

●人権方針の策定に必要な五つの要件
  1. 企業の経営トップが承認していること
  2. 社の内外から専門的な助言を得ていること
  3. 従業員、取引先及び、製品やサービス等に直接関与する関係者に対する人権配慮への期待を明記すること
  4. 一般公開され、全ての従業員や、取引先、出資者、その他関係者に向けて周知されていること
  5. 企業全体の事業方針や手続に反映されていること
    (参照:外務省「ビジネスと人権とは?」より抜粋、指導原則16)

    人権リスクの範囲や重要度の分析・特定・評価

    次に、自社の事業活動によって起こりうる人権の負の影響を特定し、その重要度やインパクトを分析・評価(人権インパクト・アセスメント)していきます。

    ビジネス工程の可視化と、人権リスクの洗い出し

    自社ではどのような人権リスクが考えられるのか特定していきます。まずはサプライチェーンの工程・流れを把握します。一連のフローを細かく洗い出したら、各フェーズでどのような人権リスクが生じうるかを可視化していきます。その際は、社内外で発生するリスク、潜在的/顕在的リスクなど、考えられる悪影響をできる限り書き出すことが必要です。

    人権リスクの優先順位

    人権リスクを抽出したら、どのくらいのインパクトが生じるかを評価して優先順位をつけていきます。すべてのリスクにすぐに対応できるわけではありません。定量・定性の両面から、評価することが重要です。

    その際の判断軸になるのが、「深刻度」「リスク発生の可能性」です。深刻度およびリスク発生の可能性のどちらも高いものから、優先的に取り組む事項として扱っていきます。

    ●深刻度
    リスクが発生したときの深刻度は (1)影響を受ける人数・規模 (2)影響を取り除く難易度 から測ることが可能です。
    ●リスク発生の可能性
    問題が発生する可能性が高いか低いかは、過去の事例や法律、社会的慣行、救済措置の有無などから判定します。

    人権に関するリスクの特定・分析を深めるためには、従業員および関係者へのヒアリング・アンケート、現地調査などを、社内関係者や第三者の専門家も交えて客観的に行うことが大切になります。

    人権リスクに対する予防・軽減措置の実施

    指導原則によると、「人権への影響評価で得た調査結果を全社的に関連する職務部門および手続に組み込み、適切な措置をとるべき」とあります。特定した人権リスクを防ぐための対応策を考え、実行していきます。

    具体的には以下のような取り組みを行っていきます。

    • 教育や研修の実施(ハラスメントやダイバーシティなどに関する社内外研修、啓蒙活動の実施)
    • 社内環境や制度の整備(労働環境や労働時間など働き方、評価制度の見直し)
    • サプライチェーンの管理(行動規範やガイドラインの作成、浸透への取り組み)

    その際に大事なのは、負の影響結果について全社に共有し、横断的に取り組んでいくことです。担当部門や責任者を明確にし、予算や人的工数を確保して取り組む必要があります。

    しかし、自社内で完結できるものばかりではありません。取引先などが人権リスクにかかわっている場合は、人権尊重の働きかけ・要請を行ったうえで、足並みをそろえて取り組むことが必要です。取引先などが関わっている人権リスクの対応は、人権尊重の働きかけ・要請を行い一緒に検討していくなどの対応が求められます。

    モニタリング(追跡調査)

    人権デューデリジェンスに取り組むにあたって重要なのは、一時的な対応ではなく継続的に改善を行っていくことです。実施した施策についての定量・定性から有効性の分析を行い、改善策を練るなどPDCAを回していきます。

    • 評価基準になる具体的なKPIを設定(例:トラブル発生回数、顧客満足度、労働時間など数値的指標)
    • 従業員や取引先・関係者への定期的なアンケートの実施
    • 関係部署や利害関係者に対しての定期的なヒアリングや対話の実施
    • 社外の実施監査に関しては、第三者機関に委託・実施

    情報開示

    企業には、「どのような人権リスクを定め、どのように取り組んでいるのか」「どのような成果が表れているのか」など、すべてのステークホルダーに説明する責任があります。情報開示にはさまざまな方法がありますが、以下のポイントを押さえることが大切です。

    • 人権リスクの重要性に応じて適切な形式・頻度で情報開示を行う
      (自社Webサイトに関連ページを設ける、年次報告書や人権報告書、サステナビリティ・レポートを作成するなど)
    • すべてのステークホルダーが適切に閲覧できる状態にする
    • 公開による利害関係者や従業員のリスク、自社機密情報開示について十分に配慮する

    情報開示のためのレポートは、客観的な視点を設けるために外部機関に協力してもらうことも有効です。

    相談窓口・苦情受付の設置・整備

    指導原則では、人権侵害を受けた当事者からの通報・相談といった「救済措置の整備」を企業に求めています。従業員のホットラインだけではなく、消費者や取引先、サプライヤーからの受付窓口、外国語対応など考えられる範囲で設置していきます。苦情処理の手順を整備することは、リスクマネジメントの観点でもメリットが大きく、受け止めた内容を今後の被害防止のために活用できるようにデータベース化する、意見が言いやすい仕組みや環境づくりを行うことも大切です。

    5.人権デューデリジェンスの注意点

    人権デューデリジェンスの取り組みは、企業や関係者に与える影響が大きいため、慎重に行うことが重要です。

    ・企業リスク視点だけではなく、影響範囲や関係者への被害の視点で考える
    人権デューデリジェンスの国際ルールは存在するものの、各国・地域の状況や産業、事業フェーズなどによってケースごとに異なります。事務的な対応や数値分析も大事ですが、何よりも企業活動によってすべてのステークホルダーにどういう影響を及ぼすのかを考え、人間心理も踏まえながら人間的対応が求められることを忘れないようにしましょう。

    ・従業員に対し、社内全体で人権リスクに取り組む必要性を認知させる
    人権デューデリジェンスは企業のビジネスに大きく影響するため、関係部署も多く従業員の認知や協力が重要です。人権尊重方針だけではなく、該当リスクや取り組み内容などを丁寧に説明することで、従業員にも自分ごととして捉えてもらうことが可能になります。

    ・専門家や外部機関からの助言や、関係者へのヒアリングなどを定期的に実施する
    社内担当者だけでは、人権デューデリジェンスの関連ルールなどの把握が難しい場合があります。定期的に専門家や社内関係者(法務部)などと連携をとることで、知識や情報のアップデートを行うことが大切です。また、自社にとって有利な施策にならないよう、密に関係者との対話を実施することも大切です。

    ・人権方針で策定した内容を、事業戦略や計画に反映させる
    人権方針の内容や人権リスク防止への取り組み内容は、今後の戦略や事業計画に取り込むことで再発防止を行う必要があります。積極的に事業に反映させていくことで、人権尊重に取り組む企業として成長することが可能です。

    6.人権デューデリジェンスの企業事例

    最後に、日本において人権デューデリジェンスに取り組んでいる企業の事例を紹介します。

    株式会社ファーストリテイリング

    ファーストリテイリングでは、2018年7月より人権委員会を設置し、人権尊重の取り組みを実施しています。事業部門に対して、人権擁護に関わる教育啓発活動、および人権デューデリジェンスの実行への助言・提言を行っています。工場のモニタリングやステークホルダーとのエンゲージメントを通じ、新規取引や生産国などの新しい事業環境のリスク評価も実施。「グローバルに事業を展開していくうえで、国と地域で定められている労働環境や人権に関する法令を遵守し、すべての事業活動において誠実に行動していきます」と宣言しています。

    ANAホールディングス株式会社

    2016年ANAグループは、重要な人権テーマを、「日本における外国人労働者の労働環境の把握」「機内食等に係るサプライチェーンマネジメントの強化」「航空機を利用した人身取引の防止」「贈収賄の防止」の四つに定めました。以降は、四つのテーマについて、リスク発生の防止と対応に取り組んでいます。人権分野の専門家を世界から招き、人権デューデリジェンスに対するアドバイスをもらう会を実施。また、従業員向けにワークショップや対話を定期的に開催しており、その内容を対外的に発信しています。その他、ステークホルダーからの懸念や疑問に対して対応できるよう、指導原則に準拠した新たな苦情処理メカニズムの運用を開始するなど、幅広い意見を取り入れるための活動に積極的です。

    株式会社 東芝

    東芝グループの経営理念は「人間尊重」を基本としており、すべてのステークホルダーを大切にすることを宣言しています。そのため、継続的な人権啓発教育を行うために人権デューデリジェンスの達成すべき指標を設定して取り組んでいます。2021年度には、「人権の尊重」に関するeラーニング受講率は99%を達成。人権啓発研修(一般者・役職者研修や資格昇格者研修、採用面接官研修など)も国内だけで130回実施し、のべ12,000人が参加しました。また、毎年12月には「人権週間講演会」を開催し、有識者による講演も実施しています。

    三菱地所株式会社

    三菱地所グループでは、2018年4月に、「三菱地所グループ 人権方針」を策定・公開しました。この方針は、三菱地所株式会社の経営会議および取締役会を経て、執行役社長の署名のもとに策定されています。業界のリーディングカンパニーとして、建設・不動産業を行う8社を交え『人権デュー・デリジェンス勉強会』を立ち上げました。また、外国人技能実習生に労働状況についてのヒアリングを実施。労働時間や報酬などの人権リスクになりやすい項目を周知してもらうよう、発注先に指導し、申し入れるなど、自社だけにとどまらない活動に取り組んでいます。

    アサヒグループホールディングス株式会社

    「アサヒグループ人権方針」の中で、個人の人権と多様性の尊重、差別や個人の尊厳を損なう行為、強制労働や児童労働を行わないことを明示しています。同グループでは「サプライチェーン」「従業員」「人権侵害の被害者への救済の仕組みの構築・運用」の三つを優先度が高いとし、取り組みを進めています。例えば、「サプライヤーCSR質問表」を活用した実態調査、人権研修の実施、外国人技能実習生への実態調査と改善、サプライチェーン・従業員それぞれに向けたクリーン・ライン制度の設置など、注力しています。

    企画・編集:『日本の人事部』編集部

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