これからの人材育成業界に大切なのは
マーケティング的発想
リーダー自らも新たなサービス・商品を生み出す
「事業家」であるべき
株式会社ラーニングエージェンシー 代表取締役社長
眞﨑大輔さん
人材関連ビジネスには手つかずの領域、革新すべき点が無数にある
人材育成ビジネスの今、そして未来をどう捉えていらっしゃいますか。
日本の最大の資源は何といっても「人」です。その資源をどう有効活用していくのか、潜在的な力をどう引き出していくのか。わが国の未来を左右する非常に重要な課題ですが、それを解決する担い手こそ、まさに人材育成業界だと思っています。確かに右肩上がりの時代は終わったかもしれませんが、生産性を高めることで、まだまだ日本には大きなポテンシャルがあると思います。人材という資源を使って再び日本を活性化することができるかどうか、業界の真価が問われる時代といえるのではないでしょうか。
デジタル化やグローバル化と並ぶ現代の大きな課題の一つが、実は「ジェネレーションギャップ」です。育った時代も価値観も違う人たちが同じ職場で、しかも日々ビジネスモデルが変わっていく中で一緒に働かなくてはならない。そういう変化とギャップの時代に、人材育成業界が意識すべきなのは、「自分たちがこれまで教えてきたことと、今教えていることは、本当に正しいのか」という問いだと思います。かつては正しかったことが、ビジネス環境が変わる中で、ズレたものになってしまっているかもしれない。昔と同じ教育研修をやっていればいいというものではなく、常に新しい内容や価値を提供できているかを考えながら、サービスをつくっていく必要があります。顧客から「こういう研修が欲しい」と言われてその要望に応えることも必要ですが、そこから一歩踏み込んで「本当はこれではないですか」という提案が大事になってくるのです。
たとえば、当社で2013年から開発を始め、業界でパイオニアともいえるモバイルラーニングのサービスもその一例です。当時、ネット動画を使って、高水準の教育を無償で広く提供する「カーンアカデミー」が世界的に話題になっていました。こうした時代の変化からヒントを得て、ビジネス研修もスマホなどのモバイル環境を利用して提供できないかと考え開発したものです。それまでは、研修といえば会場に参加者を集めて行うのが常識でしたが、「スマホのアプリを使ってモバイルで研修ができます」と提案したら、すぐに多くの企業から「やはり、これからはスマホですね」という声を頂きました。このサービス「モバイルナレッジ」は、すでに多くの企業でご活用いただいています。
こうした新しいビジネスの開発には、やはりマーケティングの発想が重要だと思います。目の前の顧客の向こうに時代や市場の変化をかぎとっていくこと。自分の業界だけでなく、隣の業界では何が起こっているのかも見たほうがいいでしょうね。
御社の主力サービスである「Biz CAMPUS」もまさにそういう発想から生まれたビジネスモデルといえるわけですね。
その通りです。私自身、経営者であると同時に「事業家」であり続けたいと思っています。社長とはマネジメント(管理)するだけの存在ではなく、時代にふさわしい新しい価値、新しい商品を生み出す、つまりイノベーションを起こす存在であるべきです。この原点は忘れたくないですね。現在も人材育成にかかわる新規事業のアイデアを20近く温めています。
最後に読者へのメッセージをお願いいたします。
当社は人材育成の分野でイノベーションを起こし続けていきたいと考えていますが、この業界で働く若い方々にも、大いにイノベーションの担い手になっていただきたい。イノベーションを起こせるのは若い人、部外者、新参者です。その意味ではわれわれも業界では新参者でしたし、これから業界に入ってくる人はみんな健全な新参者でしょう。ぜひマーケットを意識した新しい発想で、新しい価値をどんどん生み出してほしいと思います。人材が活性化すれば、日本全体も活性化します。自分たちがその担い手であるというプライドを持って、一緒に人事・人材業界を盛り上げていきましょう。
社名 | 株式会社ラーニングエージェンシー |
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本社所在地 | 東京都千代田区有楽町1-7-1 有楽町電気ビル北館 18F |
事業内容 | 人材育成に関するサービス(公開型 定額制ビジネス研修/モバイルを活用した反転学習アプリ/ビジネス基礎力診断テスト/公開型 ITエンジニア育成研修/定額制 オンライン動画研修/企業内研修 など) |
設立 | 2006年2月 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。