「サービスの流通創造」という
斬新なビジネスモデルで起業
現在は「BPOのワンストップ・ソリューション」
にも挑む
株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長
白石徳生さん
従業員一人ひとりに有効な「情報サービス」を目指す
黒字化された後は順調に発展・成長し、2004年には株式上場も果たされます。
1990年代後半は減損会計が導入され、企業が保養所などを廃止していく流れが加速していましたが、営業面では大きな追い風になりました。今でもよく覚えているのは、銀行への提案です。当時、金融危機で大手銀行の多くに公的資金が導入され、銀行は国との約束で保養所は売却することになったんです。そのタイミングで、「保養所の代わりとなる宿泊施設を全国各地で提供できる」ことがメガバンクを中心に刺さり、弊社のサービスの導入が加速度的に進みました。
上場後は、新規事業にも積極的に取り組まれていますね。
当初は「福利厚生」からスタートしましたが、現在はそれに「インセンティブ」「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」「パーソナル」「BTM(ビジネス・トラベル・マネジメント)」「旅行」「ヘルスケア」「コストダウン」を加え、8分野で展開しています。ただ、まったく新しいビジネスに参入するといった多角化は行っていません。基本的には持っているリソースを活用し、売り方や売り先を変えるといったやり方で事業を展開しています。あくまでもベースとなっているのは、「サービスマッチングを提供し、会費によって収益をあげる」という購買代行のビジネスモデルです。
ただ、外部からベネフィット・ワンを見た時、「福利厚生」と「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の会社に見えるのも、また事実だと思います。パソナグループの一員なので、その方がわかりやすいのも確かです。私たちもあえてそこは否定せずに、2015年にはパソナグループと共同で給与計算のアウトソーシング会社「ベネフィットワン・ペイロール」を立ち上げるなど、「人事・総務関連BPOのワンストップ・ソリューション」の実現に向けて事業を推進しています。「サービスの流通」とともに、今後のベネフィット・ワンの事業の二本柱にしていきたいと考えています。
今後は、どのような展開をお考えですか。
現在ベネフィット・ワンでは、企業が人材を採用した後に行わなければならないことを幅広く代行する体制が整いつつあります。給与計算、小口管理、出張精算から企業年金基金にまでつながっていく「お金」の面と、企業の義務化が進んでいる従業員の「ヘルスケア」の面。これらをすべてお任せいただくと、人事業務が効率化するだけでなく、従業員一人ひとりにとって大変便利な環境が整います。たとえば自分のパソコンで個人の資産管理もできるし、健康管理もできます。ビッグデータを使って、その人にあった保険商品・金融サービスの福利厚生サービスのメニューを案内したり、その人の健康状況に合わせた健診予約や病院を紹介したりすることが可能になるわけです。
福利厚生やアウトソーシングといった「管理」でいただいた人事データをもとに従業員一人ひとりに有益な「情報サービス」に変換させていく。そのような一段高いレベルでの福利厚生をご提供できるようになると思います。
また「サービスの流通」の面では、比較・検討の参考になる「サービスの格付け」を行うことができるようになるのが今後の目標です。一つは利用者の口コミによるサービスの偏差値化、もう一つはプロの目利きによる正確な評価です。後者はミシュランのレストランガイドのようなイメージですね。サービスのサプライヤーからお金をもらうのではなく、あくまでもユーザーの立場からの評価、格付けをめざしています。ただ、そこに到達する過程として、現在のベネフィット・ワンはまだ「三合目」といったところです。当面は、現在734万人の会員を3000万人にすることが目標です。日本人の四人に一人が私たちのサービスを利用する段階になると、もう「サービスの流通」がなかった時代には戻れなくなるのではないでしょうか。
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。