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「女性」と「ネットワーク」をキーワードに、
日本初のサービスを次々と生み出す
「アイデア」と「行動」の起業家

株式会社イー・ウーマン

佐々木かをりさん

ネットワーク化の要諦は「ネット」を「ワーク」させること

佐々木社長の活動を語るキーワードの一つに、「ネットワーク」がありますね。

87年に通訳者・翻訳者をネットワーク化してユニカルを起業したのが最初です。当時はまだネットワークの概念も一般的ではなく、人からよく「ネットワークって何?」と聞かれたのを覚えています。なぜネットワークだったのかというと、それしか知らなかったから。最初にお話ししたとおり、企業に所属したことがなく、学生時代のアルバイトからそのまま通訳の道へ進んだので、組織ピラミッドでの働き方を知らなかったんです。たとえばフリーで仕事をしていて、得意先に「誰か佐々木さんみたいな人を紹介して」と頼まれると、探してきて現場へ連れていく。そういうやり方が身についていましたから、その延長で登録制の会社をつくったんですね。

成功の要因は、どこにあったとお考えですか。

株式会社イー・ウーマン代表取締役社長 佐々木かをりさん インタビュー photo

私たちはユニカルを、通訳者や翻訳者の派遣業ではなく、請負業、コンサルティング業として立ち上げました。登録している通訳者・翻訳者の語学力だけでなく、人柄や専門性まで網羅したデータベースを構築し、お客様のニーズに応じた最高のスタッフを、最高のタイミングで構成してサービスを提供する。「適材適所」を上回る、いわば「適時適材適所」を心がけたんです。それが新しかったんでしょうね。私はこの頃から、ネットワークという概念を「ネット」と「ワーク」に分けて考えていました。優秀なスタッフを百人、千人抱えているというのは「ネット」、つまり“網”の大きさや立派さのことですよね。それだけではダメなんです。ネットをいかに「ワーク」させるか。どのようにして人と人を結び付け、お互いを機能させるか。ネットワークによる活動やサービスにおいて、一番大切なのはそこなんです。

同じ「ネットワーク化によるビジネスモデル」でも、専門職の人たちをつないだユニカルと、働く女性たちのコミュニティーをめざしたイー・ウーマンとでは、創業時の不安や勝算もかなり違ったのではありませんか。

全然違いましたね。ユニカルだけをやっていく分には確信もありましたし、おそらく何の問題もなく、自分の出来る範囲で成長できたと思うんです。だけどイー・ウーマンは、自分の手に余るというか、想像以上にビジネスの規模が広がり、注目も集まったので、逆に不安定でしたね。

だけど、当時の女性をめぐる状況は、今よりもっと遅れていました。高い志をもち、長くいい仕事をしていきたいと考えている女性は、各職場で十人に一人いるかどうか。そんな彼女たちでさえ「ガラスの天井」にぶつかり、3年、4年とくすぶっているうちに活躍をあきらめ、結婚退職していくケースが多かった。そんな10分の1の女性に向けて、「集まれ!」と旗を立てたのがイー・ウーマンなんです。ただウェブ上で集まるだけではなく、お互いに学び合い刺激しあう、つまり「ネット」を「ワーク」させることで、彼女たちは職場でも高い志を失わず、いい仕事を続けられるのではないか――そんな思いで、何とか続けてきました。

「女性」と「ネットワーク」をキーワードに、日本初のサービスを次々と生み出してこられた佐々木社長のご活躍は、まさにイノベーターの名にふさわしいものです。自らのイノベーターとしての資質は、どのあたりにあると感じていらっしゃいますか。

イノベーティブなことを成し遂げる人には、大きく二つのタイプがあると思うんです。一つは、勉強に勉強を重ね、いろいろなことを比較し調べあげた上で、今世の中にはこれがないから、新しく生み出そうと考えるタイプ。もう一つは、とりあえず身の回りにはなくて、自分が欲しいから、つくってみようかと考えて、どんどん実行に移すタイプですね。私は断然、後者なんです。自分の知っている範囲にはなかったので、つくってみたら、世の中にもまだなかった――そういうケースが結構あったんですよ。どちらのタイプであれ、最後はやり遂げようとする志とか、情熱、強い思い、英語ではインテンション(intention)なんて表現を使いますが、そこに尽きるんでしょうね。

身の回りにないものに気づくひらめきや、ビジネスにつながるアイデアなどは、どういうときに思いつかれることが多いですか。

しょっちゅうです。今書きだしていいと言われたら、ずっとノンストップで書いていられるくらいアイデアがあります。確かに、思いついたのにやらずに置いていたら、結局別の人がそれを思いついて成功した、なんていうこともあります。でも大切なことは、誰もが人とは違う視点を持つ、ユニークな存在であるということであり、自分で気づき、自分の視点で所属する組織にプラスの成果を生み出すのが、ダイバーシティの本質だと、私は思うのです。全員が男性だった組織に女性を三人加えたとしても、彼女たちがみんな、「私は赤」「私も赤」「私も赤」と意見が変わらないのなら、一人でいいよってことになってしまうでしょう。逆に十人全員が同じ年代の男性でも、常に10通りの意見が出てくるのなら、それは多様性にすぐれた組織といっていい。多様なメンバーで組織を構成すること以上に、どうやってメンバー本来の視点を引き出し、多様性を育てるかが大切なんです。

私は18年前から、年一度の「国際女性ビジネス会議」を開催してきました。毎回1000人近くが参加し、女性のビジネス会議では国内最大規模。参加者からも満足度99.5%という、きわめて高い評価を毎年いただいています。それはやはり志の高い仲間が一堂に会し、お互いに刺激しあうことで、それぞれの中にいい意味での“化学反応”が起こるからではないでしょうか。誰もが自分と違う視点でものを考えていることを改めて認識し、互いの多様性を学び合えば、自分の考えにも誇りが持てるようになる。ウェブであれ、イベントであれ、そうした機会を一人でも多くの人に提供することが組織のダイバーシティ推進につながると、私は確信しています。

どうもありがとうございました。最後に佐々木社長から、本サイトの読者である人事向けサービスを中心とした企業向けサービスを展開する企業の経営者や若手社員に向けて、メッセージをお願いいたします。

アドバイスになるかどうかわかりませんが、最近、経営トップの方とお話すると、「佐々木さん、ここだけの話だけどね」と、それこそ声を潜めておっしゃることがあるんです。「経営改革を大胆にやりたいんだけど、人事部がね……」と。つまり人事部自身が、自分たちが守ってきた人事に関する制度やルール、過去の前例に縛られて変わってくれない、改革の抵抗勢力になっていると嘆いていらっしゃるんですね。もちろん人事は人事で、さまざまな提案をされ、対応をされています。同時に、会社によっては目の前にさまざまな難問が山積し、とても女性活用どころではないという向きもあるでしょう。社員の年齢構成にも大きなゆがみが見られますし、日本の人事制度はある種の限界を迎えつつあるという気がしてなりません。それをどう解決すればいいのか、答えは一つではありません。私は、研修・講演をさせていただいたり、コンサルでお伺いしたりする際、古い人事制度を壊すためなら、その大義名分として「女性活用」を利用したっていいと思うとご提案することも多いです。女性社外役員のあっせん、女性エグゼクティブサーチをさせていたいているのも、そのためです。こういうご時世だし、現政権も熱心だから、とにかく管理職の何%かは女性にしてみようと。半ば強引にでもダイバーシティを導入することが、古い組織体質に風穴があける可能性は決して少なくありません。

株式会社イー・ウーマン代表取締役社長 佐々木かをりさん インタビュー photo

(2013年9月4日 東京・港区・イー・ウーマン本社にて)

社名株式会社 イー・ウーマン
本社所在地東京都港区南青山5-1-2-4F
事業内容市場創造型マーケティング&コンサルティング会社として、イー・ウーマンに集まる賢い消費者(スマートコンシューマ)の意見を拾い上げ商品開発、IR/CRコミュニケーション、各種調査、人材研修、ダイバーシティコンサルティングなどを展開。サイト「イー・ウーマン」は、バナー広告を掲載しないユニークなサイト展開を通じて、良質な参加者を集め、意識・志を高めあうための情報提供、空間作りをしている。サイトに参加するリーダーズによる開発で誕生した抗酸化サプリメント「メロンリペア」は、21万箱を突破するヒット商品に。また、佐々木オリジナルの「アクションプランナー」手帳は、手帳ブームをつくり出す。佐々木かをりが教える時間管理講座も全国の企業などで人気。生産性向上、残業削減などの成果をあげている。
設立2000年3月27日

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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この記事ジャンル 女性活躍推進

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