34年間、HR業界で事業を成長させ続けることができた理由とは?
~「世のため、人のため」の人材ビジネスのあり方~
株式会社クイック
和納勉さん
世のため、人のための経営を実践する企業が、最後は生き残る
1990年代以降、規制緩和の流れを受けて人材サービスが発展していきましたが、これから人材サービスはどのような方向に進んでいくとお考えですか。
もっと多様なサービスが出てくると思います。キーワードの一つは「インターネット」です。企業が直接求人情報を発信することが可能となっています。広告代理店を使わずに、自社の採用ホームページへと多くの企業がシフトしはじめています。人材を登録するためのサイトを立ち上げたり、コミュニティーをつくったりして、人材を確保・採用することを行っています。従来型の求人情報誌や求人サイトがなくなることはないと思いますが、それよりもこれからはクライアントのニーズに合った成功報酬型モデル、例えば人材紹介のようなサービスがもっと伸びるのではないでしょうか。クライアントにとってリスクが少なく、効率を追求できる、そういうことのできる商材がこれからは伸びてくることでしょう。ITがどんどん進化・発展していきますから、もっといろいろなサービスが出てくるはずです。
そこで問題となるのが、規制緩和です。せっかく新しいサービスができても、違法認定されては仕方がありません。今は当たり前のように利用されている人材派遣も、法律ができて事業として認可され、初めて花開くことができたのです。少子高齢化に拍車がかかっていて、労働力人口は減っていく一方です。人材に対するニーズがなくなることはありません。特にサービス分野での求人競争は激化するでしょうし、優秀な人材、希少価値のある人材は採り合いになります。規制緩和が進めばクライアント(求人企業、求職者)に対してより密着したサービスがもっと出てくるのではないでしょうか。
最後に、人材ビジネス業界や求人サービスに携わる皆さまや、これから起業しようとしている若い方々、後に続く方々にメッセージをお願いします。
我々は実に素晴らしい業界に属していると思います。仕事としてやりがいがあり、これからますます必要とされる業界です。そのためにも、特に若い人にはいろいろなサービスを展開していってほしいと期待しています。ただし、今は求人バブルの只中にあることを忘れてはいけません。バブルはいつか終わります。その時に耐えられるようにしなくてはなりません。
私は、2~3年後に求人バブルは終わると見ています。その時に、本当の自分を持っていないと淘汰されます。私自身の経験から言っても、最高の時というのは実は怖いものです。いつ落ちていくのかと常に不安で落ち着きません。逆に落ちた後、苦労はしますが気持ちとしては楽です。打つべき手を打てば必ず上がりますから。今は景気が良く、業界も注目されて、絶好調かもしれませんが、悪くなる時は必ず来ます。その時のことを考えて、身の丈に合った経営をしなければなりません。
そういう意味で、経営というのは利他心と利己心のバランスを取ることが大事だと考えます。利己心がないと成長はしません。経営者に欲がなければ、その会社は伸びません。しかし、世の中を良くしていこうという利他心がなければ、世の中に受け入れられません。利己心ばかりを追求している経営者では、従業員は付いてきません。だから従業員や取引先のことはもちろん、ステークホルダーとなるさまざまな立場の人のことを考えることです。この両者のバランスが大事だということを、若い人たちには特に言いたいですね。
私は経営理念の下、「世のため、人のため」の会社をつくることを目指してきました。だから、これからも価値ある企業として、「世のため、人のため」の企業づくりをしていきます。しかし若い時は、そうしたことがよく分かりません。「世に出たい」「ビジネスモデルを世に問いたい」「メジャーになりたい」「お金もうけをしたい」など、いろいろな想いや欲望があります。それはそれでいいのです。しかし、成功して、多くの人を雇用し、世の中に多少なりとも影響力を行使するようになってくると、今度は世のため、人のためでないと、企業として続きません。自分のことだけを考えている企業は、衰退し、滅びていきます。私はそうしたケースをたくさん見てきました。結局、世のため、人のためということを意識して経営している企業が、最後は生き残ると思います。
和納さんご自身の経験から裏打ちされた言葉に、とても感銘を受けました。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
社名 | 株式会社 クイック(東証一部上場:証券コード4318) |
---|---|
本社所在地 | 大阪市北区小松原町2-4 大阪富国生命ビル16F |
事業内容 | リクルーティング事業、人材紹介・人材派遣をはじめとする人材サービス事業、情報出版事業、インターネット事業 |
設立 | 1980年 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。