イノベーションと人材紹介
簡単ではない「イノベーション人材」の紹介
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「イノベーションを起こせる人材」とは
「私は、日ごろからさまざまな情報にアンテナを張って、どうすれば新しいアイデアを生めるかを考えています。仕事としては未経験ですが、任せてもらえればきっと成果を出すことができるはずです。その熱意を、採用担当の方に伝えていただけませんか」
未経験から企画やマーケティングなどの職種への転職が難しいことはわかっていても、「何とかしてチャンスをつかみたい」と、わらにもすがる思いでやってくる人もいる。不動産会社の営業をしながら、メーカー企業の企画職への転職を夢見るYさんも、そんな一人だった。
確かに、Yさんは業務時間外に積極的に勉強会に参加するなど、意欲の高さがうかがえた。正直、難しいだろうと思いながらも、新規事業企画の経験者を募集していたA社へYさんを推薦したのは、そんな本人の強い熱意があったからだ。しかし、返ってきたのはやはり厳しい反応だった。
「人材紹介会社には、これまでのキャリアから、しっかりこの仕事ができそうな人材を見極めて紹介していただきたいんです。いくら熱意があっても、うちでは経験がない人は採用できません」
A社の採用担当者は、その理由をこう続けた。
「イノベーションを起こせる人材が欲しいとは言っていますが、正直いってどんな人がイノベーションを起こせるのか、見極めるのは困難です。こればっかりは、熱意だけで成果が出せるものではありませんからね。今後、AIなどが高度に発展してきたら見抜けるようになるのかもしれませんが、現時点では未経験者を採用するのは、リスクが大きすぎるんです」
たしかに、その意味では新規事業、経営企画、マーケティングといった人気ポジションの中途採用が、ほぼ経験者採用だけなのもうなずける。もしかすると、それによってダイヤの原石を逃してしまっているのかもしれないが、企業としてはリスクを冒してまで採用に踏み切るのは難しいのだろう。
こうした理由とともにA社の選考結果を伝えると、Yさんはやはりがっかりしているようだった。
「今の会社で企画の仕事ができれば、転職にも有利になるんでしょうが、それも難しいですし……。諦めるしかないんでしょうか」
そんなYさんに、私はこう切り出した。
「まずは、自分が仕事をしてみたい『業種』に転職されてはどうでしょう。違う職種にキャリアチェンジするのはハードルが高いですが、異業種に移るというのも決して簡単ではないんです。まずは、業種の壁をなくすことを目指されてみてはいかがですか」
転職先で必ず希望職種に異動できるとは限らないが、社内で仕事ぶりや意欲を示せば、チャンスが生まれることもある。どのような人が「イノベーションを起こせる人材」なのかはわからないが、コンサルタントとしてはやはり、そうした人材が転職によって夢をつかむチャンスを得られたらいいな、と思うのだった。
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