長期休暇をはさむ転職
年内に決着しておけばよかったのか 正月の間に考えが変わった人材
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自分で辞退を伝えたくない気持ち
「さて、困ったことになったな」
このような場合、電話だけで説得するのはかなり難しい。直接Kさんに会い、時間をかけて話し合うのがセオリーである。しかし、Kさんの都合のいい日というのが、F社の最終面接日までないことがわかった。万事休すである。とりあえずF社に事情を説明して、少なくとも面接を延期してもらう必要がある。急いで連絡したところ、F社の人事も一瞬言葉を失った。
「どういうことですか? 正月早々に困りましたね。もう役員の予定を押さえてしまっているので、なんとかしてKさんに来てもらうことはできませんか。直接私たちが説得するということでもかまいません」
このように「自分たちで説得させてほしい」という企業はけっこう多い。しかし、そう簡単ではないのだ。まず、「入社意思がないのに面接に行っても時間をとらせるだけだから」と求職者から拒否されることが多い。また、「そもそも自分で辞退の連絡を企業にしなくていい気楽さから人材紹介を利用しているのであって、辞退を伝えるのはそちらの仕事でしょう」と断られることもよくある。たしかに、辞退の連絡をするのは気まずいもの。就職活動の時に、嫌な思いをしたという人も多い。だからこそ紹介会社を経由しているのだと言われれば、それはそのとおりなのである。
さらに、強気な企業の場合、「自分たちで説得して翻意させたのだから紹介料を値引きしてもらえないか」と言ってくることもある。もちろん、そのまま辞退されてしまえば、成功報酬制の紹介料はゼロなのだから、人材紹介会社側も立場が弱い。いろいろとやっかいな問題が発生する可能性のあるシチュエーションなのである。
結局、Kさんの最終面接はいったん見送りとなり、紹介会社が直接会って詳細を聴いた上で、粘り強く説得していくことになった。
正月休みになる前に、家族への根回しは済んでいるのかを確認するなど、もっと細かくサポートしておけばよかったのかもしれない。Kさんにも、年末年始は紹介会社が休みなので、タイミングよくアドバイスを求めることができなかった、という事情もあったのだろう。
「年内に入社が決まっていたら、結果は違っていたかもしれないな」
長期休暇は候補者、企業のいずれとも連絡が取れなくなる一種のブラックボックスのような期間だ。この期間はできるだけまたがないようにした方がいい。新年早々のドタバタ劇に、改めてそんな思いを強くしていた。
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