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人事マネジメント「解体新書」 第22回
戦略人事に求められる「CHO」とは?~その役割と育成

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)

リーマンショック以降、景気の後退がはっきりしてきた中、企業には明確な経営の舵取りが求められている。そして、厳しい経営環境を乗り切って事業戦略の実効性を高めていくために、人材活用における戦略の必要性が一段と高まってきた。しかし、実際にはそうした「戦略人事」に向けてのストーリーと対策が描けている企業はあまり多くない。また、仮に対策を講じていたとしても多分に抽象的であり、実現性には疑問符が付く。理由としては、戦略人事をプロデュースかつ演出できる「CHO」の不在が大きいからのように思う。戦略人事の時代にあって、果たしてCHOとはどういう存在なのか?今回は、その果たすべき役割と育成方法について考えてみたい。

「戦略人事」の時代

■「企業は人なり」~経営と人事が切り離されていた?

企業を取り巻く環境変化が激しい時代となってきた。経営にはよりいっそうのスピード対応、そしてグローバル対応が求められてきている。そのため、経営戦略に沿った人事戦略が不可欠となってきた。いわゆる「戦略人事」である。人材マネジメントと経営戦略をリンクし、経営戦略の達成や企業の競争力を確保する、ということだ。

しかし、これは口で言うほど簡単に実行できることではない。それは、私たちが長い間、人材マネジメントが経営の一部であることを少なからず忘れてきたからに他ならない。何よりも「企業は人なり」といった美辞麗句を盾として、人材マネジメントを特別視し、あたかも経営と切り離して対処しなければならない独自の活動のように錯覚していたのではないだろうか(もちろん、そうではない企業も存在することは言うまでもない)。

その結果、人材マネジメントの中心に、経営戦略を達成するために人材という資源を供給する機能が存在することを忘れてしまった。本来、人材とは戦略達成のための資源であり、それを供給するのが人材マネジメントの機能なのにもかかわらず。

その意味において、人材機能は財務機能と同じである。いやむしろ、経営戦略の達成のためには、財務資源より人的資源のほうが重要であることが多い。だからこそ「企業は人なり」であり、学者からは「人本主義経営」の必要性が言われ続けてきたのである。そして1990年代以降においては、リストラと成果主義の進展の下、新たな方向へと舵取りを切っていったのは周知の通り。ところがここにきて環境が大きく変化、多くの企業ではさらなる戦略の転換を図ることにより、生き残りを模索しようとしている。

そもそも企業が将来行くべき方向を決定し、それを実現するための資源を投入するのが戦略である。繰り返しになるが、人材マネジメントにおいても、その戦略に合わせて、考え方を大きく転換しなければならない。戦略人事というのは、まさにそういうことだ。

■なぜ、CHOなのか?

冒頭、戦略人事の必要性が迫られているのに、少なからぬ人事責任者が戦略の「設計図」「グランドデザイン」を描けていないと言った。一部では、描く能力を持ち合わせていないのではないか?と思われる人も見受けられる。信じられないと思う読者がいるかもしれないが、ではなぜ、そのようなことが起きているのだろうか。

一つには、昨今の変化があまりにも激しく、それにスピーディーに対応する策を自前ではなかなか創出できないため、外部のコンサルタントに任せきりというケースがある。提供されたお仕着せのシステムやツールを使うばかりで、何か問題が生じると責任をアウトソーサーへと転嫁している。ここには、自ら責任を取ろうとする態度が皆無である。

こうした事態が生じているのも、ローテーションの弊害かもしれない。組織都合の人事異動の結果、人事部門の責任者といっても、それにふさわしい経験や知識を持ち合わせている人が担当しているとは限らない。確かに現場でのリアルな経験は大事だが、それをスタッフ長として昇華していかなくては意味がない。

むしろ私としては、人事部門の責任者として、なぜこうなったのかというこれまでの「歴史」を正しく理解していない人の多いことが気になる。また、これから先の変化の方向を的確に示せず、とりあえず前任者と同じことをなぞるか、あるいは単に違うことをやればいいと考えているかのどちらかで、自分なりのビジョンや方向性を持っている人は非常に少ない。

さらに言えば、説明責任が欠如している。経営の一翼を担う人事部門の責任者としての言葉と自覚が足りないように感じる。先が見通しにくい時代だからこそ、戦略人事を謳い、実践していける能力・術を持っている人がまさにいま、求められているのに、である。

このような状況を打破していくには、経営の最高責任者であるCEOと連動した、人材の経営者としての「CHO」が求められてくる。

CHOとは何か?

■人材の経営者として、経営と社員をサポートする

CHOは「最高人事責任者」とされ、“Chief Human Resource Officer”あるいは、“Chief Humancapital Officer”“ Chief Human Officer”など、いくつかの解釈がされているが、これらに大差はない。

要は目指すところは同じ。これまでのような制度を粛々と守る番人のような人事部長や人事担当役員から脱却し、経営戦略と一体となった人事戦略の推進者である最高人事責任者、まさに人材の経営者として、経営と社員をサポートする存在へと変わってきている。

ちなみに、CHOとよく似た名称で知られているものにCEOやCFO、CIOなどがある。CEOはまさに、最高経営責任者(Chief Executive Officer:チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)であり、CFOは最高経理責任者(Chief Financial Officer:チーフ・フィナンシャル・オフィサー)、CIOは最高情報責任者(Chief Information Officer:チーフ・インフォメーション・オフィサー)を指し、経営におけるさまざまな分野や機能の責任者を言う。

なお、日本CHO協会では、CHOについて下記のように定義している。

組織・システムなどの経営と、従業員などの人的資源と、企業ビジョンや理念との関係性の維持改善を通して、企業価値の増大に寄与する役割

■経営幹部層の不足ポジションとして、4社に1社近くがCHOを挙げている

ところで、2008年9月にリクルートエグゼクティブエージェントが発表した「エグゼクティブ人材の採用実態調査」によると、「経営人材が充足している」と回答した企業は約3割にすぎない。「今後不足する可能性がある」「不足している」を含めると、約7割は経営幹部層の確保に悩んでいる現状が浮き彫りになっている。

前述したように、従来にもまして企業経営にスピード対応が求められている。そして、コーポレートガバナンスの強化で、経営の透明性も高まった。その結果、経営幹部層のマネジメント能力が改めて問われるようになったからである。

そして、不足しているポジションを聞いてみると、「CMO(営業・マーケティング)」50.0%と「CFO(経理・財務・経営企画)」44.0%が半数近くを占めて多く、次いで、「事業部門」26.2%、そして「CHO(人事・総務)」23.8%と続いている。経営幹部層の不足ポジションとして、4社に1社近くがCHOを挙げているのだ。直接的な利益を生まないスタッフ部門として考えると、これは少なくない割合と言えるだろう。

図表1:不足しているポジション(担当役員・執行役員)(%)
営業・マーケティング(CMO) 50.0
経理・財務・経営企画(CFO) 44.4
事業部門 26.2
人事・総務(CHO) 23.8
情報システム(CIO) 22.0
新規事業 21.5
生産・技術・研究開発 20.6
経営全般(社長、副社長、CEO) 19.6
最高執行責任者(COO) 10.3

出所:リクルートエグゼクティブエージェント「企業における経営人材ニーズ調査2008」

CHOの「条件」

■人事部長・人事担当役員とCHOとの違い

CHOは単なる人事のプロや人事部門の頂点ではなく、経営と人事、組織と個人の論理をつなぐ新しいパラダイムを持った存在でなくてはならない。

注意したいのは、人事部長や人事担当役員とCHOとの違いである。そもそも、人事部長と人事担当役員には明確な違いがある。役員は「経営陣の一角」で、部長は「実行の長」である。これはどの企業でも同じ。では、人事担当役員とCHOはどう違うのか。これはなかなか難しい。正直、あまり違わないのではとも思う。

ただ、CHOはCEOの分身であるが、執行部分と取締役会を分けている部分で人事担当役員と比べると、その立場上の違いは明確にある。実際、取締役として求められている機能はCHOにはない。あくまで、執行における人事機能の責任者なのである。とはいえ、人事担当役員に求められているものと基本的には変わらないと思う。両者とも経営のために、人事の視点から何をやっていくべきかというミッションがあるわけだから。

改めて言うまでもなく、CHOをはじめとする「チーフ・オフィサー」と呼ばれる人たちはCEOの分身である。CEOは経営のすべてに責任をもつが、いくら何でも一人では見切れない。機能に応じて、その責任をチーフ・オフィサーが分担しているのだ。その意味ではチーフ・オフィサーは組織長ではなく、機能や役割の責任者として、組織図上では社長の下に位置付けたほうがいい。

■CHOに求められる条件とは?

周知のように、経営戦略の下にあって「人事部門」というのは、人の採用から始まって、育成、処遇、福利厚生、コミュニケーション、労使関係、退職など、およそ人に関するすべての段階の仕事を担当する部門であり、CHOはその最高責任者なのである。そして、CHOは経営戦略の目的と組織目的を理解し、企業全体との整合性をもった人事部門としての戦略を的確に策定できる能力が必要とされてくる。

だからまず、CHOに求められる条件として思い浮かぶのは、社長の立場からビジネス全体を語り、戦略を語り、それに合致した組織作り、人作りができることである。確かに、CHOは会社で「人」という一番大切な資産を管理しながら、見かけ上の「P/L(損益計算書)」はもっていないかもしれない。それでも、コストセンターという認識をもって企業に貢献し、コストに見合った貢献をしていると社内で認められる必要があると考える。

と同時に、サービス部門であることから、いきおい「言われたことをやる」機能になり下がってしまう場合が出てくる。そうならないためにも、プロフェッショナルであることが重要である。CHOは人事のプロとしての確固たる意識を、人事部門の人間がもてるよう育成する必要があるだろう。

このように考えていくと、CHOは人事業務バリューチェーンである採用から配置、育成、退職、そして再雇用に至るまで、組織全体に横串を通し貢献していくべき重要な役割を担っていると言える。そのためにも全体の絵が描けてその実現に向けてのプランを立案し、さらにそれを頭に入れて社長の代弁ができるような人こそが、CHOに相応しい。

■「必要条件」としての「人事部長」的要素

では、もう少し具体的にCHOの条件を見ていくとしよう。話を分かりやすくするために、人に求められる能力をテクニカルスキル・ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキルの3つに分類する「カッツ理論」から考えてみると、CHOにはまずテクニカルスキルとヒューマンスキルが「必要条件」として求められてくる。

これらの多くは「人事部長」に求められる要件とイコールだと思うが、まずテクニカルスキルとしては、図表2に記したような人事業務のフレームワークと、その実務に対する理解と指導・管理ができることになってくる。もちろん、これらすべてに秀でることは難しいかもしれないが、そうした場合には社内に実務の詳しい「右腕」となるサポート役を用意しておくことで、対応していく。

人事戦略・政策 人事長期計画策定
人事年度計画策定
人事組織年度計画
役員会・経営会議報告
事業部長会議報告
雇用・配置 要員計画策定
雇用年間計画策定
新卒採用業務・受け入れ業務
中途採用業務・受け入れ業務
アルバイト・パート業務・受け入れ業務
派遣スタッフ業務
定期異動
昇進・昇格
服務 規則・規定・協定、法定届け出業務
労働時間・休日
人事評価・査定
目標管理
表彰
人事情報システム、データ更新
教育訓練・能力開発 新入社員教育
新入社員教育
階層別教育訓練
職種別教育訓練
課題別教育訓練
OJT
自己啓発
CDP、キャリア開発
賃金 人件費総額管理
基本給、諸手当
賞与、一時金
賃金体系
業績給、インセンティブ
退職金、年金
昇給
福利厚生 住宅関連
生活関連
保健衛生関連
文化・体育関連
保険・共済・金融関連
社会保険関連
コミュニケーション
労使関係 他
社内外行事
モラールサーベイ
社内広報・イントラネット
提案制度、自己申告制度、カウンセリング
各種交渉、協議会
労働協定改定、各種協定改定
部内報告、定例会議
関係官庁との連絡、法定対応
調査研究、人事労務統計 など

そして、ヒューマンスキルについては、何よりも「戦略性」に秀でていることが重要である。日頃から経営環境の変化にはどのようなものがあるのか、それにはどのように対応すべきか、そしてそのための組織戦略は何かをトップの立場で予見し、人事部門としての人事戦略・施策が迅速に立てられるようにしたい。また、人事という仕事の性質上、組織におけるバランス感覚も必要だ。例えば、限られた人的資源の人事戦略への活用、投入についても、各部門の長とトップの方針とのバランスを考えて対応しなければならないだろう。

ただし、ヒューマンスキルについては会社独自の風土や業種・業態で求められる人材要件が違ってくる。図表3に代表的なものを整理しておいたので、参考にしてほしい。

図表3:CHOに求められる主な人材要件
戦略性 常に先見性をもって経営環境の変化を洞察し、それに基づいて適切な人事戦略を決断し、トップに提言する
革新性 経営目的に向けて、常に新しい発想で現状打破を考え、実行する
国際性 常にグローバル、ボーダレスに物事を考え、行動する
精神性 タフな精神力をもち、常に平常心を失うことなく、物事に当たる
思いやり 人こそは事業の原点であり、社員すべてを会社の貴重な資産として、何よりも人間として尊敬している
公平性 すべての社員の処遇を公平に扱う
バランス感覚 あらゆる選択肢と可能性を否定せず、バランス感覚をもって行動する
問題解決力 いなかる困難な状況でも、常に問題解決をモットーとし、システム思考により意思決定する
情報力 社内外を問わず、常に広く情報を収集し、知識の蓄積に時間とエネルギーをかけることを惜しまない
ネットワーク 社内と社外に幅広い人脈をもつことに努めている

■「十分条件」としての「変革」していく力

他方、コンセプチュアルスキルを「十分条件」として考えた場合、それは何になるのか?いろいろと見方はあるだろうが、私はこう考える。CEOの下にあって、自社のこの先の経営戦略のあり方、人事戦略のグランドデザインを描き、その実現に向けてストーリーを描き切る能力が不可欠だと言った。そしてこれは、先に述べた「戦略性」とは違った、より高次元である経営者的な資質としての「リーダーシップ」と「戦略構築力の高さ」と規定することができる。要は、組織を「変革」していく力だ。

ただしこれは、「机上」や「日常」では育まれない類のものであることを心してほしい。まれに、変革することに対する天性の才能をもった人もいるが、それは例外だ。多くは幾度かの「修羅場体験」を通じて育まれるものである。だから、純粋培養的なエリートを育成するような人事部長へのキャリアパスでは、なかなか育つものではない。正直、現在の人事部長などは「キャリアゴール」というよりも、一丁上がりとなっているケースが少なくないのではないか。

この点は、他のチーフオフィサーやCEOの育成についても同様である。現実的に、内部にはなかなか適任者がいないという状況がある。だから、内部ではなく外部から登用していこうとする企業も多く、事実、先のリクルートエグゼクティブエージェントの調査でも、経営人材を外部から迎え入れることについて「特に抵抗はない」とする企業が41.5%と4割を超えている。一方で、「抵抗がある」は13.6%と半分以下の割合にすぎない。

とはいえ、「抵抗はないが、できれば内部の人材の登用を優先したい」とする企業が多いのも事実である。ということで、次に内部の人材をいかにCHOへと育成していくかについて考えてみたい。

CHOの「育成」

■「修羅場経験」を積ませることの意味

私見だが、CHOのような経営者的な人材の資質を考えた場合、人間力的には35歳以上は大きく成長しないとしたほうがいいと思っている。というのも、ある年齢以上になると「幼児化現象」を起こすからである。いろいろなケースを見てきたが、よほどの類まれな好奇心をもって努力している人でないと、伸び続けていくのは難しい。

つまり、人生は「長さ」ではなく「中身」が肝心なのだということ。たとえ60歳まで会社人生を送ったとしても、大企業ではいわゆる「修羅場」を直接経験したような人は少ない(もちろん例外はあるだろうが)。その一方で、中小企業では30歳でも修羅場をくぐった人が数多くいる。CEOやCHOとして考えた場合、明らかに後者のほうに適性はある。

そう考えると、CHOに相応しい人材を意図的に社内で育てていくには、「素質」は別に置くとして、そうした「環境」を用意することが必要不可欠である。素質があっても、環境がなければ人は育たない。素質がある人を、素質が磨ける修羅場の環境に置けるかどうかが、CHOの育成においては大きなポイントとなる。

結局、多方面からの利害対立や切羽詰まった状況に置かれ、寝る間もないほど頭脳を使って苦悶するような極限状況に陥らないと、人間はとことん頭や心、体を使い切ることはない。また、ここからの「学び」がない人には、CHOとして疑問符が付く。そのような点からも、「修羅場経験」を踏んで、初めてマネジメントの何たるかを知ることができるのである。

■やりたい人間にやらせてみよう

だから、マネジメントの素質のある人を見いだすためには、まずはやりたい人間にやらせればいい。はっきり言って、その人に経営者の素質があるかどうか、誰も分からないのではないか。修羅場に置くことで、初めてその萌芽を見ることができるわけだが、それが現実的に難しい以上、やりたい人にやらせるのが一番だと考える。

仮に、経営者予備軍なる人たちがいるような場合には、あえてそうした人たちを潰れそうな子会社や支社、工場などへ送り込んでみる。そこでの再建ぶりを見て、経営者としての適性があるかどうかを判断していけばいい。そこで、初めて本質的な経営感覚というものが育まれるからだ。

「こんなところで、何をどうすればいいのか?」と誰もが嘆くような修羅場状況へ落とし込むことが、まずは大切なのである。正直、それだと若い人が結果を出すことは難しいかもしれないが、でもまだ彼らはトレーニング期間中の身。マネジメントとしての本当の勝負は40歳からだろう。20代、30代のころの経験は、ビジネススクールに行ったものと同じである。むしろ、いろいろな経験をさせてみることだ。何よりも、そこでの苦労が大切なのであって、結果の良し悪しはあまり関係ないと考えたほうがいい。

また、制度として考えたいのなら、スキルと修羅場経験を同時に学ぶための「ジュニアボード制」や、社内ベンチャー制度や提案制度などを利用した関連会社や子会社などに「長」として経営責任を学ぶ機会を積極的に設けていきたい。とにかく経営の疑似体験を積むことが経営能力を高めるからであって、それがなくてはリーダーシップや戦略構築力は大きく育っていかない。

■「トラブル」を経験して、初めて分かることがある

結局、経営というものは理論を学ぶ以上に、トラブルを経験しないと分からない類のものである。もちろん会社運営として考えた際、事故がないに越したことはない。むしろ人事部的には、あってはならないことであろう。それでも、敢えて言いたいのは、こういうトラブルを経験するということは、とてもいいことだと。

予防注射ではないが、ある程度の修羅場を経験していないと、本当に大きなトラブルに遭遇したときに、どう立ち振る舞ったらいいのか分からなくなるからだ。そして、このような経験をした人は共通した「何か」を持つようになる。彼らは、「このプロジェクトは一見うまくいっているけれど、どうも職場の雰囲気がおかしいぞ」といった類のことが察知できるようになるのだ。それが、トラブルや事故を経験していないと、何か大きなことが起こったときに、自分の中に判断の拠り所となるものがないために、冷静に対応できなくなってしまう。ゆえに、CHO候補者には、こうした修羅場経験をどんどん積ませたい。

■「疑似体験」として修羅場も有効

また、修羅場というものは、仮に「疑似体験」であってもそれなりに有効である。完全に日常と隔離された場所で、ある種の極限的な状況に置かれた中で研修を行えば、覚醒水準が研ぎ澄まされ、その中でリーダーになるためには何が必要なのかという「気づき」が、自然と芽生えてくることが期待できるからだ。一方、いくら対処療法的なスキルを磨いても、意識の変化がなければ行動の変革は起こらない。こうした体験型の研修は、各人の意識を刺激し、主体的な行動を促していくことも知ってほしい。

また、これからの企業経営を考えた場合、人事部にも「異文化理解」や「グローバル対応」は企業規模に関係なく、外せないキーワードだ。生き残りをかけた企業再編の動きは活発化し、外部からの人材の登用が増えてくる。そうした国際間での企業経営を行っていくには、異質な人材を使いこなし、さらには異なるカルチャーを持ったリーダーがチームを組み、多様性あふれる中でマネジメントを行っていかなければならない。そこでは、異質性を使いこなすマネジメント、そしてチームビルディングが不可欠となってくる。CHOとなる人材は、異なる国籍や価値観を持ったリーダーのコラボレーションをもって、企業のパフォーマンスを上げていかなければならない。そうしたことを疑似体験できる研修などもどんどん活用していきたい。

■CEOにモノ申す勇気と説明責任を持てるか

やや饒舌になってしまったが、最後に一言。自ら現場に降りて行き、現場とのコミュニケーションを図ることにより、正しく問題点・課題を認識することができる。そして、それを戦略・施策へと落としこむには、修羅場体験が不可欠であると。ここまでは理解していただけたと思う。で、その次がとても難しい。

CHOたる者がそこで決めたことを、CEOへちゃんとモノ申すことができるかどうか。これが組織の大小を問わず、けっこう大変なことである。その勇気と説明能力がないと、CHOの存在価値はないし、人事部のメンバーからの信頼を得ることは難しい。ここが人事部長との大きな違いであり、何よりモノ申すことができなければ、真のCHOは育たないと思うのだが、どうだろうか。


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