人事部課長に聞いた 人事戦略の現状と課題
少子高齢化で国内市場が縮小する一方、世界経済を見てもEU・米国を中心に難しい局面にあり、恒常化する円高とともに、企業経営にとって先行きが極めて不透明な状況が続いています。こうした中、民間調査機関の労務行政研究所(理事長:矢田敏雄)では、各社が将来の人事戦略・人材マネジメントの方向性について、どのように考えているかを探るため、人事部門の管理職以上を対象にWEBアンケートを実施しました。本記事では、その中から「経営戦略上の重要テーマ」「『人材育成』に関する人事戦略」「人事戦略の策定・明文化」について、取り上げます。
※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
◎調査名:「企業の人事戦略に関するアンケート」
1. 調査対象:労政時報』定期購読者向けサイト「WEB労政時報」に登録いただいた民間企業から抽出した人事労務担当者3216人(役職は、課長クラス63.4%、部長クラス30.5%、経営幹部6.1%)
2. 調査期間:2011年10月13~21日
3. 調査方法:WEBによるアンケート
4. 集計対象:124人(1社1人)。
※なお、本調査では、「人事戦略」を「経営戦略を実現するための人事マネジメントの方向性、枠組み」と定義して、回答いただいた。
経営戦略上の重要テーマ
経営上の最重点課題
「新製品・新規事業の開発」が27%で最多
「数年(ここ3年程度) 以内に実現したい経営上の最重要テーマ(経営戦略上の最重要テーマ)」を、[図表1]の (1)~(15)の選択肢から単数回答で尋ねたところ、最も多いのは「(2)新製品・新規事業の開発」で27.4%と3割近くの企業が挙げました。以下 は、「(4)(経費削減を含む) 収益性向上(売り上げが停滞しても利益が上がる体質へ)」17.7%、「(1)既存事業の売り上げ拡大」14.5%、「(3)事業のグローバル化、海外進 出」13.7%、「(5)人材力強化(採用・人材育成・人が育つ仕組みづくりなど)」9.7%と続いています。
規模別に見ると、「(2)新製品・新規事業の開発」や「(4)収益性向上」は規模が小さい企業ほど多く、一方、1000人以上では「(1)既存事業の売り上げ拡大」が20.8%と他の規模より多くなっています。
経営上の重点課題(四つまで複数回答)
「人材力強化」が77%と8割近い
また、同じく「数年(ここ3年程度) 以内に実現したい経営上の重要テーマ(経営戦略上の重要テーマ)」について、四つまでの複数回答で尋ねたところ、「(5)人材力強化(採用・人材育成・人が育つ仕組みづくりなど)」が76.6%と8割近くに達してトップとなりました。
以下は、「(2)新製品・新規事業の開発」54.8%、「(4)(経費削減を含む) 収益性向上(売り上げが停滞しても利益が上がる体質へ)」51.6%、「(1)既存事業の売り上げ拡大」46.0%、「(3)事業のグローバル化、海外進 出」37.1%、「(12)企業風土、従業員意識の改革」30.6%などでした。
規模別に見ても、1000人以上と300~999人では「(5)人材力強化」がトップで、300人未満では1位こそ「(2)新製品・新規事業の開発」(67.9%)でしたが、2位は「(5)人材力強化」で64.3%と3分の2近い企業が挙げています。
これらから、少子高齢化などで国内市場が縮小する中、企業は「(2)新製品・新規事業の開発」や「(4)収益性向上」「(3)事業のグローバル化、海外進出」などに活路を求めており、それを支える「人材力強化」が多くの企業の課題となっていることが分かります。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。