若手社員の育成(OJT)に関する実態を調査
【人事部の意識調査(OJT編)】人事が感じるOJTの課題 第1位「OJT担当者のやり方にバラツキ」
累計13,000社420万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社(所在地:東京都千代田区 代表取締役社長:眞﨑大輔)および「人と組織の未来創り🄬」に関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所🄬は、2024年10月~2025年2月の期間で、企業の人事の責任者・担当者302人を対象に意識調査を行いました。本リリースでは、若手社員の育成(OJT)に関する実態を調査・分析した結果を公表いたします。
〈背景〉
新入社員の早期離職が話題となっており、実際に厚生労働省の調査*1によると、高卒・大学卒ともに3割以上の新規学卒就職者が、3年以内に離職をしています。人手不足が加速する中、時間と労力をかけて大切に育てた人材が辞めてしまうのは、企業にとっては損失です。当社の調査結果*2では、離職意向が高い若手社員は、入社前後のギャップや仕事の難しさ(=仕事の壁)を実感していることがわかりました。この壁を適切に乗り越えさせ、組織への定着と本人の成長につなげるには、本人の「乗り越える力」を養うだけでなく、組織が若手社員を「育てる力」も欠かせません。そこで、今回は若手社員の育成に重要な手法の1つ、「OJT」に焦点を当て、調査を実施しました。
*1 厚生労働省「学歴別就職後3年以内離職率の推移」
*2 ラーニングエージェンシー(現 ALL DIFFERENT)若手社員の意識調査(社会人1年目の入社前後のギャップ(離職意向別)編
調査結果の概要
● 人事が感じる新入社員・若手社員の最大の課題「主体性・積極性」
● OJTの課題トップは「OJT担当者によってOJTのやり方や精度にバラつきがある」
● OJTの課題改善策、3割以上が「具体的な内容を検討していない」と回答
1~100人企業は「目標を明確にする」、101人以上は「OJT担当者のトレーニング」
1001人以上は「OJT担当者の心構えの醸成」と回答
〈考察〉「主体性・積極性」を発揮できる若手社員を育成するOJT
調査結果の詳細
1. 新入社員や若手社員(社会人2~3年目)への最大の課題「主体性・積極性」
初めに、新入社員と社会人2~3年目の若手社員のそれぞれについて、知識・スキルや業務への姿勢で課題に感じることがあるか質問しました。
結果、どちらも「主体性・積極性」という回答の割合が最も高くなりました。
2位以降の結果は、新入社員では「メンタルタフネス」(26.2%)、「報連相」(20.9%)が続きました。
社会人2~3年目の若手社員では「成長意欲」(30.8%)「目的・目標の理解」(25.8%)が続きました。
2. OJTの課題トップは「OJT担当者によってOJTのやり方や精度にバラつきがある」
次に、新入社員や若手社員の育成に重要な手法の1つであるOJTに対する人事の考えを調査しました。
OJTを実施しているか、実施している場合の課題は何かを質問した結果、「OJTは実施していない」と回答した割合が1割以下となり、9割以上の企業がOJTを実施していることがわかりました。
さらに下記のように従業員規模別に集計したところ、従業員規模によって回答に違いが現れました。1~100人の企業(以下、『100人以下企業』と記載)、101~300人企業(以下、『101~300人企業』と記載)、301~1000人企業(以下、『301~1000人企業』と記載)、1001以上の企業(以下、『1001人以上企業』と記載)に分けて分析した結果を紹介します。
OJTを実施している企業では、従業員規模問わず「OJT担当者によってOJTのやり方や精度にバラつきがある」が最大の課題であることが明らかとなりました。次に「OJTの全体像やゴール、育成計画がなく、場当たり的になっている」が続き、その割合は従業員規模が小さい企業ほど課題を感じる傾向にあることがわかりました。
3位以降の結果は従業員規模別に違いが現れました。100人以下企業は「適切に指導できるOJT担当者が足りない」(35.3%)、101~300人企業は「人事はOJTに関与しておらず、課題がわからない」(36.7%)、301~1000人企業は「OJT担当者任せになっており、各部署内でのフォローやサポートがない」(34.8%)、1001人以上企業は「人事はOJTに関与しておらず、課題がわからない」(28.9%)と回答する結果となりました。
3. OJTの改善策、3割以上が「具体的な内容を検討していない」と回答
最後に、OJTの課題に対してどのような改善策を検討しているか質問しました。結果、企業の従業員規模問わず、3割以上の人事部が「具体的な内容はまだ検討していない」と回答する結果になりました。
改善策を検討している企業の結果を見ると、100人以下企業は「育成対象者の目標を明確にする」と34.3%が回答し、その割合は従業員規模が大きい企業ほど低い割合となりました。101~300人企業、301~1000人企業、1001人以上企業では、「OJT担当者のトレーニングを行う」や「人事とOJT担当者との連携を密に行う」の回答割合が高くなりました。また、1001人以上企業は「OJT担当者の心構えを醸成する」が最大の結果となり、他の群に比べても突出した結果となりました。
まとめ
本調査より、新入社員や社会人2~3年目の若手社員に対し、人事担当者が抱く最大の課題は、「主体性・積極性」であることが明らかとなりました。当社で実施した新入社員意識調査*3によると、2024年入社の新入社員は、8割超がやる気が高い結果がでていることから、活力に満ちあふれた状態で入社したものの、会社や人事が期待するような「主体性・積極性」は、現場業務において発揮できていない実態が推察できるでしょう。
また、本調査では若手社員の育成で重要な手法の1つであるOJTの取り組みの実態が明らかになりました。調査の結果、9割以上の企業がOJTを実施しているものの、多くの企業がOJTに課題を感じていることがわかりました。中でも、「OJT担当者によってOJTのやり方や精度にバラつきがある」は企業規模を問わず課題に感じている企業の割合が高いことが明らかになりました。また、従業員規模が小さい企業ほど、「育成計画がない」「場当たり的」「適切に指導できるOJT担当者不足」という課題が上位にあがりました。
このようなOJTの課題に対し、3割の企業が「具体的な内容はまだ検討していない」という結果も明らかとなりました。その背景には、他業務と比べて優先順位が低くなっていることやOJTに関するPDCAが回っていない、OJTを現場任せにしており実態が把握できていないなどの要因が考えられるでしょう。
一方で、OJTに対する改善策を検討している企業の傾向として、100人以下企業では「育成対象者の目標を明確にする」、301~1000人企業では「OJT担当者のトレーニングの実施」、1001人以上企業では「OJT担当者の心構えの情勢」の割合が高い結果となりました。
*3 新入社員意識調査(速報値版)
〈考察〉「主体性・積極性」を発揮できる若手社員を育成するOJT
本調査結果より、新入社員や社会人2~3年目の若手社員に対して人事担当者が感じている最大の課題は「主体性・積極性」であることが明らかになりました。若手社員に対して「指示されなくても動いてほしい」「自分の意見をもっと言えるようになってほしい」「一歩引いている姿勢が見受けられる」といったお悩みを聞くことも多くあります。
「主体性」とは、自分の意志や判断に基づいて責任を持って行動すること、「積極性」とは、自分から進んで物事に関与し、意欲的に取り組むことを意味します。しかし、若手社員にとってはこれらの概念が抽象的で、具体的な行動がイメージしづらい可能性があります。人事担当者としては、これらの要素を求める人材像(人材要件)に設定したうえで、具体的な行動や発揮されている状態がイメージできるように伝えると良いでしょう。
日常の行動を変えていくためには様々な取り組みができますが、その1つの方法として多くの企業ではOJT(On-the-Job Training)が実施されています。OJTは意図的・計画的・継続的に取り組むことが成功の鍵です。主体性・積極性の発揮を高めたい場合は以下の点も参考にしてください。
<「主体性・積極性」を発揮するためのOJTのポイント>
① 意図的
OJTの目的・目標を設定する際に「指示された業務を1人で遂行できるようになること」といった業務遂行に関するものだけでなく、「改善点について自ら意見を出すことができる」「自分の考えや判断に基づいて行動する」など、主体性・積極性の発揮まで視野に入れた目的・目標を提示してください。
② 計画的
主体性・積極性の発揮を最初から求めることは、若手社員にとって難しく感じるかもしれません。まずは業務に慣れてもらい、次のステップで積極性の発揮、その後に主体性の発揮など、段階的に計画を立てて進めると良いでしょう。
③ 継続的
主体性・積極性を自然に発揮できるようになるまでには、OJT担当者の継続的な伴走が欠かせません。OJT担当者が若手社員の行動を把握し、こまめに声かけやフィードバックをすると、自身の行動を客観視できるようになります。その際、できていないときに指摘やアドバイスをすることも重要ですが、できているときや行動を変えようとしているときに、認めたり励ましたりするポジティブな声かけやフィードバックを意識的に多く実施すると良いでしょう。これにより、若手社員はモチベーションが上がり、自信をつけ、自然と主体性・積極性を発揮できるようになります。
調査概要
調査対象者 当社サービスを活用している企業の人事責任者・人事担当者
調査時期 2024年10月~2025年2月
調査方法 Webでのアンケート調査
サンプル数 302人
属性
(1) 業種
(1) 業種
鉱業,採石業,砂利採取業 1人(0.3%)
建設業 6人(2.0%)
製造業 66人(21.9%)
電気・ガス・熱供給・水道業 3人(1.0%)
情報通信業 79人(26.2%)
運輸業,郵便業 10人(3.3%)
卸売業,小売業 42人(13.9%)
金融業,保険業 8人(2.6%)
不動産業,物品賃貸業 5人(1.7%)
学術研究,専門・技術サービス業 14人(4.6%)
生活関連サービス業,娯楽業 1人(0.3%)
教育,学習支援業 6人(2.0%)
医療,福祉 2人(0.7%)
複合サービス事業 2人(0.7%)
サービス業(他に分類されないもの) 40人(13.2%)
その他 17人(5.6%)
(2) 企業規模
100人以下企業 102人(33.7%)
101~300人企業 109人(36.1%)
301~1000人企業 46人(15.2%)
この記事ジャンル
OJT