企業における人事労務関連制度の実施状況
男性社員の育児休業取得促進は34.6%の企業が実施
仕事上での旧姓使用を認めているのは83.9%
民間調査機関の一般財団法人 労務行政研究所(理事長:猪股 宏)は、上場企業等における人事労務関連のさまざまな制度の実施状況を調査し、回答のあった292社の結果を集計しました。本調査では、企業で広く取り入れられている182の制度・施策について実施率を調べており、そのうち19の制度・施策を紹介いたします。
<本調査のポイント>
■採用・人事管理
オンライン面接の実施率は79.8%
テレワークの実施率は67.5%。2018年調査(11.8%)から大幅に上昇
■労働時間・休日
フレックスタイム制の実施率は40.1%
裁判員休暇は69.5%が実施
■非正規雇用
契約社員は81.8%、パートタイマー・アルバイトは72.6%が雇用
慶弔休暇は契約社員で79.1%、パートタイマー・アルバイトで65.1%が付与
■ハラスメント対策
相談窓口は89.0%が設置。2018年調査(79.1%)から9.9ポイント上昇
ハラスメント防止規程は82.5%が作成
■中高年・シニア関連
定年後の再雇用制度は90.8%が導入
61歳以上の定年制は16.8%が実施
70歳までの就業確保措置は26.4%が実施
■仕事と家庭の両立支援
男性の育児休業取得促進は34.6%が実施
不妊治療への支援は12.0%と低いながらも、2018年調査(4.5%)より実施率が上昇
■メンタルヘルス対策
メンタルヘルスに関する相談窓口は69.5%が設置
心の健康を目的とするカウンセリングは41.1%、私傷病休職からの復職支援プログラムは34.6%が実施
■その他
仕事上での旧姓使用を認めている企業は83.9%
副業・兼業は39.4%が容認
内部通報制度は84.9%が整備済み
<主な制度・施策の実施率>
本リリースで紹介する19の制度・施策について実施率の高い順に並べたところ、「定年後の再雇用制度」が90.8%、「ハラスメントに関する相談窓口の設置」が89.0%、「内部通報制度」が84.9%などとなっている。
また、コロナ禍で普及した「オンライン面接」(79.8%)は約8割、「テレワーク」(67.5%)は7割近くの企業が実施していることが分かる。一方、リモートワーク下で社員のメンタルヘルスが問題となるケースも増えており、「メンタルヘルスに関する相談窓口の設置」が69.5%、「心の健康を目的とするカウンセリング」が41.1%など、精神的な側面のサポートを実施する企業は多い。
[1]注目制度の実施率
○仕事上での旧姓使用
近年、結婚により姓を変更することで生じる仕事上の不利益の解消や個人のアイデンティティーへの配慮を目的に「仕事上での旧姓使用」を認める企業は増加しており、2022年調査では83.9%となった。2010年の52.9%以降、右肩上がりで上昇しており、2018年(67.5%)から16.4ポイントの伸びである。仕事以外でも、2019年には住民票やマイナンバーカード、運転免許証で、2021年にはパスポートでも旧姓の併記が認められるようになっており、今後も取り組みは進むとみられる。
○コロナ禍で導入進む―テレワークとオンライン面接
新型コロナウイルス感染拡大への対応として政府が出社率の低減を要請したことなどから、「テレワーク(在宅勤務)」の導入が急速に進み、2022年調査では67.5%と2018年(11.8%)から55.7ポイントもの大幅な上昇となっている。また、コミュニケーション手法が対面中心からオンライン中心へとシフトしたことに伴い、採用面接にも大きな影響が及んでいる。今回初めて調査した「オンライン面接」の実施率は79.8%であり、現在、多くの企業が実施しているものと考えられる。
○副業・兼業の容認
これまで副業・兼業に否定的な企業も多かったが、働き方の多様化が進む中、これを容認する動きも広がっている。厚生労働省が2020年9月に改定した「副業・兼業のガイドライン」では、懸念となっていた労働時間管理と健康管理のルールが明確に示された。こうした流れを受け、2018年は10.7%にとどまっていた「副業・兼業の容認(承認)」は、2022年に39.4%と上昇している。
[2]シニア雇用関連の実施率
○定年後の再雇用制度と61歳以上の定年制
「定年後の再雇用制度」の実施率は90.8%と9割超であるが、2010年以降では最も低い。一方で、「61歳以上の定年制」は16.8%と、2010年以降、右肩上がりに上昇している。
○70歳までの就業機会確保措置
2021年4月、高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保措置を講じることが努力義務化された。今回初めて調査したところ、「70歳までの就業機会確保措置」の実施率は26.4%となっており、今後、さらなる取り組みの拡大が予想される。
[3]仕事との両立支援関連の実施率
○男性社員の育児休業取得促進
育児・介護休業法の改正により、「産後パパ育休」が2022年10月から創設される。そこで、今回初めて「男性社員の育児休業取得促進」を調査したところ、34.6%の企業が取り組んでいることが分かった。今後、改正法が施行されれば、実施率はさらに上昇するものとみられる。
○不妊治療への支援
2022年4月から不妊治療が保険適用となったことを受け、仕事との両立支援をサポートする動きも見られる。2022年調査では、「不妊治療への支援」の実施率が12.0%と、2018年(4.5%)より7.5ポイント上昇している。これから不妊治療を開始する人も増えると予想されるため、さらなる企業の取り組みが期待される。
[4]契約社員、パートタイマー・アルバイトの処遇
○契約社員、パートタイマー・アルバイトの雇用
現在、非正規社員は多くの会社で雇用されており、今回調査では、契約社員は81.8%、パートタイマー・アルバイトは72.6%の企業が雇用している結果となった。
○各種制度等の実施・導入状況
「同一労働同一賃金」の観点から、各種制度等の実施・導入状況を見ると、「正社員登用制度」は契約社員で71.1%、パートタイマー・アルバイトで46.2%、「慶弔見舞金」は同69.5%、54.7%、「慶弔休暇」は同79.1%、65.1%などとなっており、総じて契約社員がパートタイマー・アルバイトを上回る傾向にある。
<調査・集計要領>
1.調査名
人事労務諸制度の実施状況調査
2.調査対象
全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3647社と、非上場企業1850社の合計5497社。ただ し、持ち株会社の場合は主要子会社を対象としたところもある。
3.調査期間
2022年2月28日~5月10日
4.集計対象
前記調査対象のうち、回答のあった292社
5.調査概要
1981年の第1回調査以来1997年までは隔年、それ以降は数年おきに行っており、今回は2018年以来4年ぶり、通算16回目の実施となる。
2022年調査では、企業で広く取り入れられている22分野・182の制度・施策について実施率を調べており、本リリースでは主要な19の制度・施策を紹介している。
<本プレスリリースに関する問い合わせ先>
一般財団法人 労務行政研究所 編集部(担当:金岡・芝田・上林)
TEL:03-3491-1242 Mail:r-survey@rosei.or.jp
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(一般財団法人 労務行政研究所/7月28日発表・同法人プレスリリースより転載)