転職市場予測2022上半期
パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」(編集長:喜多 恭子)は、「転職市場予測2022上半期」を公開しました。
■「転職市場予測2022上半期」解説(doda編集長 喜多 恭子)
・2022年上半期、転職には“追い風”が吹いてチャンスが広がる
2022年上半期の転職市場には、転職のチャンスを広げる“追い風”が吹いていると言えるでしょう。直近2年間、新型コロナウイルス感染症によってもたらされてきた社会の変化が2022年上半期の求人ニーズの背景にあります。
IT化・DXに取り組む企業が増え、事業領域の変化、ビジネスの非対面化、ワークスタイルの変化がますます進んだことに加えて、すべての業界で、2020年から2021年にコロナ禍で新卒採用、中途採用を控えていた企業が採用活動を再開し始めたため求人増加が予想されます。
とりわけIT業界やWeb業界を中心に、事業活動が活発な企業は、ITエンジニアやクリエイティブ職だけでなく、事業拡大に必要な新規開拓を行う営業職や管理体制の強化に欠かせない人事・経理職でも、求人数の増加が期待できるでしょう。
IoT・自動化を進める上で必要不可欠な半導体・電子部品の業界は、業績が好調な状態が続いています。そのため生産や事業拡大を見越して、専門的なスキルや知見を持つ電気・機械のエンジニア、化学エンジニアの採用を活発化させると考えられます。
また、コロナの流行を機に、ビジネス環境は大きく変化しました。この変化に対応するために、企業は新規事業の立ち上げや、新サービス開発などに取り組んでいます。そのため、業界を問わず、戦略立案を行う「企画・マーケティング」、法務観点でのリスク精査を行う「法務」などのスペシャリスト系の求人増が見込まれます。
・1月~3月は1年の中で最も採用が活発になる時期
例年、1月~3月は1年の中で採用が最も活発になります。企業の多くは3月・4月が年度の変わり目となるため、組織変更・人事異動に合わせて4月入社が多くなることや、3月までに採用予算を使い切りたいという企業の思惑があるためです。こうした時期要因があることに加えて、2020年~2021年にかけてはコロナの影響で採用活動を抑制した反動もあり、2022年1月~3月も転職活動のチャンスが広がるでしょう。
・国が掲げた「CO2排出量削減」を踏まえ、「SDGs」や「脱炭素」をキーワードにした採用が活発化
近年「SDGs」に取り組む企業が増加していますが、2022年はこの動きがさらに加速すると考えられます。それに伴い、採用ニーズにも変化が生まれるでしょう。例えば、自動車メーカーでは、「脱炭素社会」を目指し、自動車のEV化への対応強化を図るため、電池関連の設計職や開発エンジニア、電池を構成する材料開発の研究職などのニーズが今まで以上に高まると見込まれます。同様に化学・素材メーカーでは「カーボンニュートラル」を見据え、CO2の回収やバイオマス材料の研究・開発職の採用が活発化すると予想されます。
■14の分野の詳細な予測
【01】IT・通信(ITエンジニア)
ITエンジニアの求人数はアプリ、インフラともに増える見込み
・コロナの影響で一時的に採用が止まっていた企業に採用再開の動きが見られ、ITエンジニアの採用が活発化。事業会社ではハイレベルの即戦力採用が主流である一方で、事業会社の委託先である元請け企業や、元請け企業に人材を送り込むアウトソーシング会社やセカンダリーを主とするSIerなどでは、未経験者の採用枠も増加傾向
・2018年に経済産業省からDX化への取り組みの重要性を訴えて提言された「2025年の崖」を見据えたDX推進が求人増の背景の一つにある
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー/ITパスポート 遠藤 勇太(えんどう ゆうた)、工藤 拓(くどう たく)
【02】電気・機械(製造エンジニア)
経験10年前後のミドル層を中心に電気・機械エンジニアの採用市場は活発化
・コロナ禍でも投資が必要な技術領域であるIoT・自動化に関わる半導体、電子部品、自動車、装置といった業界のニーズが大きい
・自動車業界は「100年に一度の変革期」を迎えており、自動運転化・電動化・コネクテッド化した自動車を生産することが急務とされているほか、半導体や電子部品もDXに伴い需要が高い状態が続いている。そのため経験10年前後のミドル層を中心に採用市場は活発化
・エンジニア未経験者の求人は、コロナの拡大以降しばらく縮小傾向だったが、特に自動車の生産台数増と連動するような形で、サプライヤーやアウトソーシング業界の採用ニーズが回復。同業界を中心に未経験者の採用も2022年上半期には増加が期待される
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー 水牧 恵理(みずまき えり)
【03】建築・土木
1人当たりの残業時間削減など、働き方改革を背景に、建設業界の求人数は増える見込み
・働き方改革関連法による残業時間の規制は、建設・土木事業、物流業、医師等を対象に猶予されていたが、2024年にはその「猶予期間」が終了。これをうけた人員確保の動きがみられている。特に進行管理を行う「施工管理」は有資格者が現場に必ず1人以上は必要なため、採用ニーズが高い状況
・施工現場では、カーボンニュートラルなどグリーン社会の実現に向けて動きや、大地震に備えた防災関連の公共工事が増加している
・中小企業の割合が多い建築・土木業では、今後の経営継続のため、企業は後継者不足の解消に力を入れており、資格を持たない未経験者でも採用のチャンスが広がっている
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー 有泉 玲児(ありいずみ れいじ)
【04】金融
特に金融系専門職、ネット金融、カード決済などで採用ニーズが高まる
・国内市場の縮小を受け、SDGsやESGなどのインパクト投資が活発な海外案件に参入する日系企業が増加。関係者が多く、融資スキームなどが異なる海外案件でも即戦力となれるような、より複雑なプロジェクトファイナンスやストラクチャードファイナンス、不動産ファイナンスといった専門分野の人材が求められている
・国内では、コロナ禍で住宅購入ニーズが高まっていることや、住宅ローン減税が延長されることから、金利が比較的低いネット銀行で、個人ローンを中心に業績が伸長。住宅ローンや個人ローンの営業経験者の採用ニーズが見込まれる
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー 大島 慶彦(おおしま よしひこ)
【05】メディカル
コロナ禍で採用活動を抑えていた企業が、採用を再開。経験者・未経験者ともに採用が活発化
・コロナ禍で止まっていた訪問営業が再開したことで、昨年ストップしていた採用も再開。それによる増員で医療機器メーカーではセールス職において他業種からの営業経験者の採用が増加
・ノンセールス職(専門職)も治療の再開が進んでいることを背景に、製薬会社やCRO(医薬品開発業務受託機関)を中心にCRA(臨床開発)や研究、品質管理などの求人が増加傾向
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー/国家資格キャリアコンサルタント 小西 彩(こにし あや)
【06】営業
“巣ごもり消費”に関連したサービスや商品の営業が引き続き活発
・巣ごもり需要の高まりを受け、ネットビジネスへ参入する企業が増加。ECやゲーム業界、フードデリバリー業界、コンサル業界の採用ニーズが堅調
・コンサル業界では、特にIT系で非対面営業を行うSaaS系企業の成長、対面から非対面営業に切り替える企業の増加を背景に、インサイドセールスやフィールドセールスに加えカスタマーサクセスの採用が活発化。これからも採用ニーズは伸長の見込み
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー/国家資格キャリアコンサルタント 石橋 寿子(いしばし ひさこ)
【07】人事
採用、労務、人事制度など幅広い採用ニーズが期待できる
・コロナの影響を受け、限られた予算内で採用戦略を立てて採用活動を行う必要性がより高まった。それに伴い、「採用」担当者の採用ニーズは、昨年は未経験者採用よりも経験者採用の優先度が高い状況にあったが、徐々に未経験者採用の求人も感染拡大前の水準に回復、ベテランから若手のポテンシャル採用まで上昇傾向
・コロナの拡大を機に、働き方の見直し・多様化が進み、在宅勤務や、在宅勤務とオフィス勤務を組み合わせるハイブリッドワークの導入、2022年以降に施行される「育児・介護休業法改正」「中小企業のパワハラ防止法」などの影響で、「労務・人事制度」担当者の採用ニーズは上昇傾向
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー 内山 菜見子(うちやま なみこ)
【08】経理
IT・Webサービス、医療などを中心に経理の採用ニーズ増
・企業は3月に決算時期を迎えることが多く、4月以降の繁忙期に備えるため、例年同様1月~2月は採用が活発化する見込み
・業界によって多少の差はあるものの、全体的に採用ニーズは増加が見込まれる。特にIT・Webサービス・システム開発・医療など、今後も成長が見込まれる業界は、管理部門の体制強化のための募集が増加すると考えられる
・経理職は、経験年数に応じたスキルや経験が求められることが多いため、20代の若手は日次経理業務や月次決算の経験がある人材、30代半ば以上でマネジャークラスの人は、業務改善や会計システムの導入など「経理プラスアルファ」の経験がある人材のニーズが高まる見込み
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー 新谷 大輔(にいや だいすけ)
【09】法務
法務の経験者は志望者有利の売り手市場、未経験者にも転職のチャンスあり
・サービスの非対面化、キャッシュレス化、働く環境のリモート化がさらに加速し、法務観点のリスク精査が必須になることから、採用ニーズは上昇
・コロナの拡大を背景にしたリモートワーク導入や事業方針転換により、新規事業を立ち上げる企業が増加。こうしたフェーズではビジネスを管掌する法整備にも課題が多く、「事業を推進する(攻め)」と「リスクを管理する(守り)」の両面から法務観点の意見が不可欠であるため、求人増の見込み
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー 鈴木 あやの(すずき あやの)
【10】企画・マーケティング
企画・マーケティング職は採用活発化へ
・企画、マーケティング、商品開発など、今後の戦略立案で重要な役割を担う人材の採用が急がれる
・非接触な世の中に移行していくなかで、EC担当者、オンラインイベントの企画運営担当などの求人増の見込み
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー/国家資格キャリアアドバイザー/特定非営利法人日本キャリア開発協会認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー) 鶴田 理沙(つるた りさ)
【11】販売・サービス
コロナが落ち着き景気回復するかが販売・サービス業界の増員採用のカギ
・客足の回復に伴い、人員削減や採用抑制を行っていた企業が人員補充に動くため採用ニーズは上昇傾向。さらに景気回復が見込まれた場合、新規出店を行う企業が増え、幅広い職種で間口の広い採用が行われると予想
・2020年から引き続き「中食・デリバリー」や「EC」の採用は活発。その中でも、配送スタッフや拠点マネジメント、EC管理やSNS担当の求人が見込まれる
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー/国家資格キャリアコンサルタント/米国CCE,Inc.認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー 柏木 あずさ(かしわぎ あずさ)
【12】事務・アシスタント
事務・アシスタントの求人は、2022年1月~3月に活発化する見込み
・基本的に採用枠が少ない職種だが、例年1月~3月は年度内に人材を確保したい企業側の意向が強まるため、事務・アシスタント職も転職市場が活発化する見込み
・DX推進により業績を維持・向上できているIT・Web業界では、2022年も欠員補充を中心に募集が行われると予測
・リモート環境で能動的に業務を進めた経験もプラスに評価される可能性あり
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー 浅田 菜美(あさだ なみ)
【13】クリエイティブ(Web系)
Webディレクター、Webデザイナー、動画に関する採用ニーズが高まる
・引き続き企業のDX推進などを背景に、Web業界を中心に経験者に対する採用ニーズが強まる見込み。また、ライブ配信事業や動画マーケティング手法活用などの増加を受け、動画関連の採用ニーズも強まることが予測される
・例年、転職市場が活発になる1月~2月は、企業が年度内での採用を目指して選考スピードが加速するため、早期に募集終了となる求人の増加が予測される
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー 寺尾 怜(てらお りょう)
【14】化学・素材
製品やサービスを通じた、環境問題やSDGsへの取り組みが注目。業界全体が積極採用傾向に
・SDGs達成に向け、「カーボンニュートラル」を見据えたCO2の回収や利活用、植物由来で再利用可能なバイオプラスチックを筆頭とする「バイオマス材料」の研究・開発ポジションで求人の増加が見込まれる
・課題とされているデジタル化の遅れに対し、取り組みを強化する企業が増加見込み。それに伴い、「DX推進」「生産性向上」に向けた求人も活発化すると予想
<記事監修>
dodaキャリアアドバイザー/国家資格キャリアコンサルタント 三橋 祐輝(みつはし ゆうき)
■解説者プロフィール doda編集長 喜多 恭子(きだ きょうこ)
1999年、株式会社インテリジェンス(現社名:パーソルキャリア株式会社)入社。派遣・アウトソーシング事業で法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティング等を経験した後、人材紹介事業へ。法人営業・キャリアアドバイザーのマネジャーとして組織を牽引。
その後、派遣事業の事業部長として、機械電子系の派遣サービス立ち上げやフリーランス雇用のマッチング事業立ち上げなどを行う。中途採用領域、派遣領域、アルバイト・パート領域の全事業に携わり、アルバイト求人情報サービス「an」の事業部長を経て、2019年10月、執行役員・転職メディア事業部事業部長に就任。2020年6月、doda編集長就任。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(パーソルキャリア株式会社/1月14日発表・同社プレスリリースより転載)