2019年の新入社員は知識やスキルへの関心が強く、個性が尊重される職場を求める傾向が年々強まっている~『2019年新入社員意識調査』:リクルートマネジメントソリューションズ
企業の人材育成を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都品川区 代表取締役社長:藤島 敬太郎 以下、当社)は、「2019年新入社員意識調査」を実施し、「社会人として働く上で大切にしたいこと」「職場や上司に期待すること」「身に付けたい力」などについて公表しました。
1.調査背景と結果のポイント
当社では「新入社員は何を大切にして働きたいと思い、どのような期待と不安を持っているのか」ということについて、2010年から定点意識調査を行っております。新入社員に対し、期待や不安などに関する5つの質問を行い、結果を経年比較することで、その年に入社した新入社員の傾向の変化を把握し、企業や上司世代がどのように育成することが望ましいのかを分析しています。
■調査結果より一部抜粋
今年の新入社員は、知識やスキルへの関心が強く、また、個性が尊重される職場を求める傾向が年々強まっていることが分かりました。そのような新入社員に対し、上司や先輩は、傾聴・丁寧な指導など“高感度センサー”を持って関わることがポイントとなりそうです。
- 「働いていく上で大切にしたいこと」の調査では、昨年まで不動の1位だった「社会人としてのルール・マナーを身につけること」に代わり、「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が首位に。
仕事の成果に直接つながるものを身につけることをより強く志向するようになっている。 - 「仕事についていくこと」や「やりたい仕事ができるか」への関心は高く、「やりたい仕事ができるか」については調査開始以来じわじわと上昇し続け、過去最高値を記録。一方で、仕事を通じた成長欲求は下がってきている。
- 職場には、「鍛えあう」ことよりも、「個性を尊重しながらの助けあい」をより強く求めるようになっている。
- 上司には、メンバー一人ひとりの声や、良い点をしっかりキャッチし個別指導できる“高感度センサー”を期待している。
2.研究員が解説 「新入社員の特徴を踏まえた、育成のポイント」
■1つ1つの業務の“意味”をきちんと伝え、なぜそうすると効率が良いのかを理解してもらう
今年の「働いていく上で大切にしたいこと」の調査では、昨年まで不動の1位であった「社会人としてのルール・マナーを身につけること」に代わり、「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が1位となりました。今年の新入社員は、仕事をすぐにあきらめずに失敗や挑戦を繰り返しながら粘り強く進めることよりも、目の前の仕事に必要なスキル・知識をインプットしながら着実に進めて成果を出すことに関心がありそうです。これには、学生時代からスマートフォンを持つ等、欲しい情報をすぐに入手できる環境で育ってきているため、いかに最短距離でゴールに到達できるかを考えて行動する傾向や、「時短」「働き方改革」などの言葉に代表されるように、ここ数年の働き方の変容と連動して、効率的に成果を出すことを重視する傾向が表れているのかもしれません。
⇒受け入れ側の育成ポイント
2位であった「社会人としてのルール・マナーを身につけること」についても、新入社員に伝えられると良いでしょう。たとえば、「さまざまなステークホルダーと仕事を進める上でマナーが必要である」「マナーあっての関係性構築であり、それが後々のチャンスにつながることもあるため、結果的に生産性の高い仕事につながりやすい」等、「なぜそれを行う必要があるのか」という意味を説明することで、新入社員も納得して取り組むことができます。
■目標やルールを伝える際には、トップダウンではなく個々の意見も取り入れる
「働きたい職場」に関しての調査結果1位は「お互いに助けあう」ことでした。その助けあうイメージとしては、調査結果を分析すると1つの目標や決め事のもとで鍛えあいながら一丸となって進んでいく“集団的な助けあい”ではなく、互いの個性や特徴を認め、それを生かし合いながらあたたかい雰囲気のなかで仕事を進めていく“個性尊重型の助けあい”をイメージしているようです。
⇒受け入れ側の育成ポイント
目標やルールを伝える際、トップダウンで一律に“集団”に対して伝えるのではなく、一人ひとりの意見を聞きながら共に目指すべきものを見出す姿勢を示したり、上位目的の手段として提示したりするなど、それぞれ”個人“が大事にしていることにつなげて訴えかける工夫が求められます。
■“高感度センサー”を持ち、一人ひとりの声や行動を承認する
「上司に期待すること」についての調査からは、仕事に情熱を持つ上司を理想とするものの、その“情熱”が意味するところは、「仕事がバリバリでき」たり、「周囲を引っ張るリーダーシップを発揮」したり、「厳しく指導する」姿ではないことが明らかになりました。
⇒受け入れ側の育成ポイント
今年の新入社員にとっての理想の上司は、一人ひとりの声をキャッチして個別最適な指導を行い、良い点に目を向けてメンバーの行動やアウトプットを承認する、そんな高い感度、つまり“高感度センサー”を持った人といえそうです。
■「マナー」「交渉力」についても、意味を説明しながら実践機会を
「身につけたい力」についての調査結果からは、リーダーや上位者として影響力を与えることよりも、必要な専門知識やスキルを身につけて活用することに意識が向いていることが窺えます。
⇒受け入れ側の育成ポイント
研修や職場では、人前で円滑にスピーチを行うなど、プレゼンテーション力の高い若手の姿に驚く声が聞かれます。受け入れ側としては、新入社員の強みを生かせる仕事を任せることと並行して、関心が低くなりつつある「マナー」「交渉力」などのスキルについても意味づけて実践機会を与えることができると、ビジネスパーソンに求められる能力をバランスよく開発していけるでしょう。
■やりたい仕事がすぐにできなくても、中長期キャリアデザインに役立つことを伝える
「仕事・職場における不安」に関する調査からは、仕事についていくことや、やりたい仕事ができるかに対する関心が高いことがわかりました。終身雇用という概念が薄くなっていることはもちろん、リーマンショック後に採用を控えていた時期と比較すると、現在は「第2新卒」「パラレルキャリア」という言葉が定着しているように、同じ会社で成長し続けることを想定していない世代といえます。
⇒受け入れ側の育成ポイント
例えば新入社員が希望する仕事をすぐにできない場合でも、目の前の仕事とやりたい仕事のつながりを伝えるなど、仕事や経験を中長期的にデザインする必要があります。また、目の前の仕事の積み重ねが能力を高めることにつながり、長いキャリア人生のさまざまなステージでそれらを発揮できることにも触れると、新入社員は意味を感じて行動を起こせるかもしれません。
【まとめ】
今年の新入社員は、マナーよりも仕事に必要な知識・スキルへの関心が強く、トップダウンではなく個人にフォーカスする職場や上司を求め、仕事を通じた成長欲求が薄くなりつつあることが分かりました。
背景に、労働時間の削減、働き方の多様化、個人に最適化された情報サービスの一般化、終身雇用概念の崩壊など、2010年代の変化のうねりが今年の新入社員の育ってきた環境と重ねて見えてきます。
受け入れ側の働きかけとしては、ビジネスにおいて地味だけれども必須である基礎的なことも、新入社員“個人”のやりたいことやキャリアに照らして意味づけをし、本人を動機づけていくことが必要です。またそれは同時に、新入社員自身が自分の成長サイクルを回す上でも効果的であるといえるでしょう。
受け入れ側、受け入れられる側、それぞれが異なる経験を重ね、違う価値観を持っていることを理解し合い、互いの個を生かし合える組織が多く生まれることを期待します。
<研究員>
リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 研究員 小松苑子
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ https://www.recruit-ms.co.jp/ /6月11日発表・同社プレスリリースより転載)