2018年卒採用、2017年採用より「苦戦+やや苦戦」が51.9%と前年度以上の採用難~企業・大学アンケート結果に見る『2018年卒採用の状況・2019年卒採用の展望』:学情
2017年8~9月に東京・名古屋・大阪・福岡の4都市で開催された株式会社学情主催「就職講演会・名刺交換会」には、多くの企業採用担当者ならびに大学就職指導担当者が来場した。各地区の来場者を対象に、採用活動状況や就職指導状況に関するアンケートを実施。その調査結果をもとに、2018年卒採用の現状や2019年卒採用の展望等についてレポートする。
1.企業アンケート結果
■2018年卒採用の状況について
採用広報解禁日が卒業前年度の12月1日から3月1日へと3ヵ月後ろ倒しになり3年目の2018年卒採用。採用広報解禁までに生じた空白期間を埋めるために注目、活用されたものがインターンシップだ。インターンシップ実施企業は年々増加し、今回のアンケートでは実施企業が52.5%と半数を超える結果となった。インターンシップはプレ期の活動として切っても切れないものになったと言えよう。そこで以降についてはインターンシップ実施企業と未実施企業でアンケート結果を比較。インターンシップ実施が採用活動にどのような影響を及ぼしたのかを見てみる。
まず採用予定数に占める「内々定を出した人数」の割合であるが、採用予定数に対して「101%以上」の内々定を出し得た企業は、インターンシップ実施企業は50.9%と過半数に達しているのに対し、インターンシップ未実施企業は25.7%に留まる。一方、採用予定数に占める内々定出し数が「80%以下」である企業は、インターンシップ実施企業が28.7%であるのに対し、インターンシップ未実施企業は過半数の54.6%に達している。採用予定数に占める「内々定承諾者数」の割合についても概ね同様の傾向が見られる。インターンシップ参加者をその後の選考で優遇した企業もあれば、インターンシップ参加が自社の理解度や志望度向上に繋がり、結果的に採用に結び付いたというケースもあるだろう。状況は企業ごとに違いはあるが、インターンシップ実施がその後の内々定出しや承諾に貢献したことが見て取れる。
6月の選考解禁から3ヵ月ほど経った時点での今回の調査では、各社の活動状況は、「既に終了」は3割弱の29.7%に留まり、63.8%が「継続中」である。インターンシップの実施別で見ると、「既に終了」はインターンシップ実施企業が36.6%と、未実施企業(20.2%)を16.4ポイント上回っている。インターンシップ実施には必要以上のマンパワーを求められるが、それでも実施に踏み出すことで売り手市場の新卒市況にあっても労が報われる状況にあると言えそうだ。
2017年卒採用と比較した活動の進捗については、「苦戦+やや苦戦」(51.9%)が「順調+やや順調」(24.8%)を27.1ポイント上回っており、前年度以上に苦戦を強いられる企業が多い。インターンシップ実施別で見ると、「順調+やや順調」はインターンシップ実施企業(27.6%)が未実施企業(21.0%)を6.6ポイント上回り、「苦戦+やや苦戦」は未実施企業(56.2%)が実施企業(48.3%)を7.9ポイント上回っている。インターンシップ実施の有無によらず順調よりも苦戦と回答した企業が多いものの、インターンシップ実施がその後の採用活動を後押ししていることが見て取れる。順調に進められた理由としては、「インターンシップで自社をうまくアピールできた」「インターンシップ参加者のうち、採用に至った学生が増加した」など、インターンシップ実施が功を奏したという声が複数寄せられた。一方で苦戦した理由は「母集団形成がうまくいかなかった」という声が多かった。3月の採用広報解禁とともに、学生はエントリーシート作成・提出を強いられることとなった。3月中にじっくり企業選びをする時間が取れない状況において、企業の母集団形成は難航、インターンシップで早期にアピールできた企業ほど優位に活動を進められた。これが2018年卒採用の特徴と言えるだろう。
2018年卒採用において重要な役割を果たしたインターンシップだが、実施にはどのような課題があるだろうか。インターンシップ実施の有無に関わらず1位に挙げられたのが「マンパワー不足」だ。ただしインターンシップ実施の有無で大きく差が生じ、実施企業は41.9%、未実施企業はそれを23.7ポイント上回る65.6%に達している。未実施企業は「社員の協力が得づらい」(36.3%)、「コンテンツ策定に手間が掛かる」(29.8%)がそれに次ぎ、実施する前段階の準備や社内調整を課題に感じる傾向がある。一方でインターンシップ実施企業については実施してみての実感値が反映され、「学生が集まらない」(35.8%)、「採用に繋がらない」(33.5%)がそれに次ぐ。もっとも、そうした点を課題に挙げる企業が3社に1社に留まることを踏まえると、学生募集や採用との連携がうまくいったと感じている企業も多いようだ。
■2019年卒採用の展望について
少子高齢化等に伴い、新卒採用難は待ったなしで進行している。大卒の求人倍率は2016年卒=1.73倍、2017年卒=1.74倍、2018年卒=1.78倍(出所:リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査」)とここ3年、1.7倍台の高水準で推移しているが、2019年卒採用ではさらに採用意欲が高まりそうだ。
採用予定数の見通し(前年度比)については、「並」が65.7%と過半数を占めるものの、「増やす」(19.0%)が「減らす」(3.3%)を15.7ポイント上回り、増加基調にある。採用予算(前年度比)についても、「増やす(「101~119%」「120%以上」の合計)」(27.2%)が「減らす(「80~99%」「51~79%」「50%以下」の合計)」(8.2%)を19.0ポイント上回った。採用予定数、採用予算の両側面から次年度の新卒採用に向けた各社の積極的な姿勢がうかがえる。
インターンシップの実施意欲も旺盛だ。2019年卒学生を主対象とするインターンシップの実施(予定)の有無について、「実施している・実施予定あり」が67.5%と、3社中2社に達している。前述の2018年卒学生を主対象とするインターンシップ実施企業=52.5%を15.0ポイント上回り、インターンシップを初めて実施する企業も増加しそうだ。実施(予定)時期については「2017年12月~2018年1月」(57.2%)と「2018年2月」(50.8%)が「2017年7~9月」(48.5%)を上回った。夏期よりも冬期実施企業が多いのは前年度の同調査でも見られた傾向だ。2018年卒採用が長引き夏期開催に注力しづらい、2019年卒の採用広報スタートにより近い時期での実施により学生への印象付けを強化したいなど、理由が多岐に渡るだろうが、夏期よりも冬期実施が主流になってきている。
2. 大学アンケート結果
■2018年卒および2019年卒学生の状況について
各社の採用意欲が高まりにより、2018年卒学生の就職活動環境は売り手市場にいっそうの拍車が掛かった。各大学へ調査した内々定状況(前年度比)は「非常に良い~少し良い」が71.8%と、「悪い~少し悪い」(0.3%)を大幅に上回った。今年度は例年にも増して内々定を獲得しやすい環境であったと言える。一方で、就職相談件数についても「非常に増えた~少し増えた」(36.9%)が「減った~少し減った」(11.0%)を大きく上回っている。エントリーシートの添削依頼なども多く寄せられたが、「内々定辞退の仕方」「複数の内々定先の絞り込み方」など、今年特に目立ったのが内々定獲得後の相談であった。企業理解が不十分なまま内々定獲得に至ったことで、多くの学生が内々定獲得後に頭を抱えるという状況が生まれることとなった。
2019年卒学生については、インターンシップ全盛とも言える状況になり、インターンシップへの参加意欲が例年にも増して高まっている。各大学で前期に実施されたインターンシップに関する就職ガイダンスの参加学生数(前年度比)は、「増えた~少し増えた」が59.8%。半数以上の大学で参加者が増加している。インターンシップ以外の就職ガイダンスについては、「増えた~少し増えた」が39.2%と、こちらも増加傾向にあるものの、インターンシップ関連のガイダンスと比べると差が開いている。前年同時期と比較し就職活動準備に熱心な学生が増えた印象だが、就職指導担当者からは「アクティブな学生と何もしない学生の二極化が進行している」という話もよく聞く。就職ガイダンスの参加状況に満足せず、動きの鈍い学生にどうアプローチするかを後期以降の課題とする大学が多い。
<調査概要>
●調査対象:全国の企業採用担当者、
大学就職支援担当者
●有効回答数:企業担当者1,453件
大学担当者329件
●調査方法:「就職講演会・名刺交換会」来場者
へのアンケート配布・回収
●調査期間:東京/2017年 8月25日~8月30日
名古屋/2017年 8月30日~9月 2日
大阪/2017年 9月 4日~9月 7日
福岡/2017年 9月 6日~9月 8日
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社学情 http://company.gakujo.ne.jp/ /11月10日発表・同社プレスリリースより転載)