インターンシップ実施企業は、経年で増加し、質問を開始した2003年以来、最高の84.5%。7割の企業が新卒一括採用に対して課題を感じている~『企業の採用と教育に関するアンケート調査』:経済同友会
公益社団法人経済同友会は、「企業の採用と教育に関するアンケート調査」を12月21日に発表しました。
経済同友会では、「企業がどのような人材を求め、どのような基準で採用を行っているか」、また、「企業が学校教育にどのような協力・貢献を行っているか」等について実態を把握する定点調査の一環として、「企業の採用と教育に関するアンケート調査」を 1997年より、これまで8回にわたり実施してきた(1997年、1999年、2003年、2006年、2008年、2010年、2012年、2014年)。
今回、実施する 2016年調査(第9回)では、引き続き「直近1年間の新卒採用活動状況」や「学校への期待」、「インターンシップ」等の定点観測を行う一方、最近の教育改革委員会の活動成果である提言、報告*を踏まえ、新卒採用で「求める資質・能力」や「大学・大学院在学中や卒業後の学び」、「採用方法」、「経済同友会で実践するインターンシップ」等について掘り下げて調査を行うこととした。
<*直近に公表した教育改革委員会提言、報告>
・「これからの企業・社会が求める人材像と大学への期待~個人の資質能力を高め、組織を活かした競争力の向上~」2015年4月
・「『新卒・既卒ワンプール/通年採用』の定着に向けて」2016年3月
・「2014年度提言の実践活動による『望ましい枠組み』のインターンシップ実現に向けた活動報告」2016年3月
【調査結果ハイライト】
直近1年間の正社員採用実績
●直近1年間の新卒採用状況は、大学学部卒業者(95.9%)、大学院修士課程修了者(81.0%)を「採用した」企業が多い。
●大学院博士課程修了者については、「採用した」企業(27.0%)よりも、「採用活動は行ったが、採用には至っていない」企業(51.0%)が多く、平均採用数も3.3人と少ない。大学院修士課程修了者では「採用した」企業は81.0%、平均採用数は29.6人となった。
●平均採用数については、一部の企業において、2014年調査と比べ大量採用があったため、大学学部卒業者(62.2人→95.2人)、高校卒業者(36.6人→65.8人)が大幅に増えている。
問1. 新卒者採用(既卒者含む):求める人材
●大学生、大学院生、既卒者のいずれでも、大半の企業は新卒者採用を行った人材には求める資質・能力が「ある程度は備わっている」と捉えているが、「十分備わっている」と考える企業は半数に満たない。
●経済同友会が企業が求める資質・能力として提示した四つの資質・能力のうち、「コミュニケーション能力」は40%強の企業がどの人材にも「十分備わっている」と認識している。「課題設定力・解決力」については、特に大学院生(42.5%)で「十分備わっている」と捉える企業が多い。一方、「耐力・胆力」、「異文化適応力」については、「十分備わっている」と捉えている企業はどの人材でも25~30%程度にとどまる。
●新卒者の採用選考において、大学生、大学院生、既卒者のいずれでも、在学中や卒業後の学びは重視されており、とりわけ大学院生で重視されている。ただし、成績表を「選考の際に大いに考慮」する企業は20%前後にとどまる。
●新卒者採用で重視する経験は、「サークルや体育会等の活動」が圧倒的に1位(大学生75.0%((上位三つ合計))で、2位「海外経験」(49.5%)、3位「アルバイト経験」(48.4%)と続くが、2014年調査と比較して「企業等でのインターンシップ経験」を1位に挙げる企業が明らかに増えている(大学生文系3.6%、理系4.7%(2014年調査グラフ非掲載)→大学生11.2%(2016年調査))。
問2. インターンシップ
●インターンシップ実施企業は、経年で増加し、質問を開始した2003年以来、最高(84.5%)となった。
●実施対象は、2014年調査と同様、大学3年生と大学院修士1年生が圧倒的に多いが、大学1年生を対象とする企業が2014年調査と比較して明らかに増えている(大学生文系35.9%→46.5%、大学生理系33.1%→50.0%)。
●受入れ人数にはバラつきがあるが、2014年調査と比較して「200人以上」の大規模な受入れが明らかに増えている(10.8%→21.1%)。
●実施期間は、「(4日)~1週間以内」が多い(文系51.5%、理系39.9%)が、2014年調査と比較して、短期間、特に1日のインターンシップが明らかに増えている(文系大学生11.7%→文系(大学生・大学院生)22.1%、理系大学生9.5%→理系(大学生・大学院生)18.3%)。
●インターンシップを実施するうえでの課題(複数回答の合計)は、2014年調査と同様、1位「社内の受け入れ体制の整備」、2位「プログラムの企画・立案」、3位「参加者の募集・選考」である。ただし、2016年調査では「プログラムの企画・立案」を1位に挙げる企業が2014年調査と比べて大幅に増えている(21.3%→35.4%)。
●インターンシップと採用・就職活動との関連については、切り離さず、何らかの形で関連づけていくべきという考え方が8割以上を占める。
●経済同友会で2016年度から実践する、「望ましい枠組み」のインターンシップ(経済同友会版インターンシップ)について、ほとんどの企業(95.8%)が趣旨に賛同しているが、「実施は困難」と考える企業が74.3%を占める。
●実施が困難な理由としては、現場の受入れ体制の不足(コスト、長期の受入れ)、学生の職業観の醸成不足、単位化に見合うインターンシッププログラムの企画・運営が困難であること、受入れ現場での機密情報の取り扱い等が挙げられた
問3. 既卒者採用(学部卒業後、5年程度(職務経験問わず))
●直近1年間に学部卒業後5年程度の既卒者(以下、「既卒者」という)を採用対象とした企業は76.0%を占めるが、このうち、「新卒採用、中途/経験者採用の併用」(27.1%)が最多だが、これに「中途/経験者とみなして採用する」(26.0%)、「新卒とみなして採用する」(22.9%)が続く。
●直近1年間に57.9%の企業が既卒者を採用しているが、その理由の圧倒的1位は「採用対象を広げることで、優秀な人材を採用できる確率が高まるため」、2位「一定程度の社会人スキルが備わっているため」、3位「即戦力として専門性を期待しているため」である。2位、3位の理由からは、既卒者に対して新人としてのポテンシャルというよりもある程度、社会人としてのスキルや専門性を期待している企業が多いことが伺える。
●採用した既卒者に対してほとんどの企業が満足している(十分満足+概ね満足で95.7%)。満足している理由としては、社会人経験があることにより、専門能力、知識レベルが新卒学生よりも高く、基本的なビジネスマナー、スキルが備わっていること、卒業後に留学等多様な経験を経て、優秀であること、バイタリティやリベンジ精神、チャレンジ精神が備わっていること等が挙げられた。
問4. 採用方法
●「翌年卒業見込みの学生を対象にした新卒一括採用のみを行っている」企業は6割を占める一方で、7割の企業が新卒一括採用に対して課題を感じている。
●指摘された課題としては、スケジュールに関するものが多く、採用・就職活動の早期化・長期化により学業や学生生活が阻害されること、一方で短期集中での採用・就職活動による企業・学生の相互理解不足、企業の採用活動の足並みの乱れ等が指摘された。他の課題としては、留学生等の多様な学生のニーズへの対応が難しいこと、学生の職業観の醸成不足、大手企業へのエントリーが集中すること等による雇用のミスマッチ、採用数が景気動向に左右されること、新卒で就職できなかった既卒者が採用で不利になる、といった点が指摘された。
●経済同友会で提唱する「新卒・既卒ワンプール/通年採用」を約4割(42.8%)が「導入済み」。まだ「導入していないが、実施を検討している/したい」企業(導入に前向き)(28.4%)と合わせると、約7割(71.2%)を占める。
●「新卒・既卒ワンプール/通年採用」に対する意見を求めたところ、留学生を中心に多様な人材を採用しやすくなるため、賛同する意見が多かった。一方で、卒業後5年程度の既卒者に対する採用では、卒業後の過ごし方、経験、目的意識等について、新卒者よりも厳しく判断するとの意見もあった。
●「新卒・既卒ワンプール/通年採用」を実際に導入している企業からは、大学や多くの企業の採用スケジュールが新卒一括採用を前提して動いているため、事実上は新卒一括採用が主となっているという声もあった。
●また、現行の一括採用に既卒者も対象として組み込む「新卒・既卒ワンプール」の仕組みは、既存の人事・教育制度の延長上で導入しやすいのに対して、卒業後の採用を前提とする「通年採用」は、企業内の人事・教育制度を刷新する必要があり、また変更に伴う人的、金銭的負担が大きいことから、移行が困難との見方が多かった。関連して、新卒一括採用のメリットとして、人員計画を立てやすい、特定期間に集中して採用・就職活動できるため、効率的で企業にも学生にも負担が少ない点等を指摘する企業も複数あった。
問5. 学校への期待と企業の教育への協力
●企業が人格面で学校に期待することは、(上位三つ合計で)1位「対人コミュニケーション能力の養成」、2位「ストレス耐性」、4位「自立心の養成」と中学校・高校と大学・大学院で共通している。一方、中学校・高校で3位は「基本的生活習慣や社会人としてのマナーの教育」、大学・大学院で「ストレス耐性」と「職業教育・職業観の養成」が同率2位となっている点で違いがある。2014年調査と比較して、大学・大学院での「職業教育・職業観の養成」(47.2%→60.1%)、「ストレス耐性」(51.4%→60.1%)への期待が特に高まっている。
●期待する教育は、中学校・高校、大学・大学院で大きな違いがあり、中学校・高校で、(上位三つ合計での)圧倒的1位は「基礎学力の養成」で、2位「一般教養教育」、3位「論理的思考能力等の養成」と続く。一方、大学・大学院では1位「論理的思考能力等の養成」、2位「専門的な学問教育」、3位「ディベートやプレゼンテーション能力の訓練」である。2014年調査と比較して、大学・大学院での「専門的な学問教育」への期待が高まっている(59.7%→72.2%)。
●期待する経験の上位三つは、「クラブ活動、サークル活動等の課外活動」、「ボランティア等の社会活動」、「海外留学など国際交流活動」で中学校・高校、大学・大学院で共通しているが、順位がやや異なる。
●2014年調査と比較して、大学・大学院において「インターンシップ等の就業経験」への期待が高まっている(39.4%→47.9%)。
●その他、学校教育に対して期待することとして、「自ら考え、創造性を育む教育の必要性」、「ストレス耐性の強化」、大学・大学院では「学外体験やキャリア教育の拡充」、「プログラミング教育の強化」等が指摘された。l職場体験や会社見学は、提供する企業が経年で増え、小・中・高校生いずれにおいても今や過半数の企業が提供するまでになっている。
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◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(公益社団法人 経済同友会 http://www.doyukai.or.jp/ / 12月21日発表・同会プレスリリースより転載)