65歳以降の就業率は、64歳以下での転職経験のある人のほうが高い。転職理由、女性は「家庭の事情」(介護など)が32.7%と、男性より3倍以上高い~JILPT『中高年齢者の転職・再就職調査』
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は、「中高年齢者の転職・再就職調査」を行いました。
<調査結果のポイント>
●中高年齢者において転職経験者は約6割
調査対象である45歳以上の回答者5,357名全体で、転職経験者は約6割であった。転職理由について、女性は「家庭の事情」の選択率が32.7%と、男性(9.3%)より3倍以上高かった。
●転職の希望がありながら実際には転職しなかった人は、「新しい環境に不安」が4割
転職を希望しながら実際には転職しなかった人に理由を複数回答で尋ねたところ、男女ともに「新しい環境に不安だったから」が約4割の選択率を示し最も多かった。
●65歳以降の就業率は、64歳以下での転職経験がある人の方が高い
64歳以下での転職経験のある65歳以上の回答者の就業率は男性40.5%、女性31.5%であり、64歳以下での転職経験がない同年代の就業率(男性26.5%、女性19.2%)よりも高かった。
●男性の50代後半以降での転職は非正規化に伴う労働条件の変化が大きい
中高年齢で転職を経験した人に転職前後の状況を尋ねたところ、男性については若年層での転職と比較して雇用形態の非正規化、および勤務日数・労働時間・賃金・労働単価の低下が大きかった。女性については男性同様に勤務日数・賃金の低下が見られたものの、雇用形態・労働時間・労働単価の変化は比較的小さかった。
●中高年齢者で正社員・フルタイムでの転職志向が強かったのは60歳未満の男性のみ
45~59歳の男性は約6割が今後転職するとしたら「正社員」への転職を希望していた。一方、60歳以上の男性では希望が多様化し、最も多いのは「パート・アルバイト」の約3~4割だった。女性については調査対象である45歳以上の全ての年齢層で「パート・アルバイト」の希望者が約6割を占めていた。
●60歳以上での転職では自分の興味等に合った仕事を選ぶことが満足度を高める
全体では過半数の人が転職結果に「とても満足している」または「多少は満足している」と回答しており、「多少は不満がある」「とても不満がある」人は2割程度に留まった。満足度の規定要因としては、60歳未満では転職に伴う賃金の低下が主要な満足度を低下させる要因であった。一方、60歳以上での転職結果への満足度については賃金の低下による影響が見られず、「自分の興味、能力、個性、資格等に合った仕事を選ぶ」ことが満足度を高める要因であった。
<調査の概要>
●本調査の趣旨・目的
急速な高齢化の中で、働く意欲と能力のある高年齢者がその能力を発揮して、希望すればいくつになっても働くことができるような環境整備が課題となっている。このような中、平成25年4月より65歳までの継続雇用が義務化されたところであるが、離転職を行う中高年齢者の実態を把握することも重要である。
このため、本調査では、45~74歳の中高年齢者を対象に、転職・再就職に関する実態、意識などについて調査機関のモニターを活用して郵送調査を実施した。
●調査名
「中高年齢者の転職・再就職調査」
●実施方法
(1)調査方法:郵送調査
(2)調査機関:株式会社インテージリサーチ
(3)調査実施期間:2015年1月22日から2月23日
(4)調査対象:
調査機関の郵送調査協力モニター(母数約20万人)から、45歳~74歳までを男女別、年齢5歳区切り(45~49歳、50~54歳、55~59歳、60~64歳、65~69歳、70~74歳)で各500人、計6000人を選定した。
具体的な選定方法としては、平成24年就業構造基本調査の性別・年齢階層別の雇用形態、業種の分布に合わせて、無職の人を含みサンプリングする方法を採った。
●回収状況等
発送/回収数:発送数は6000人
回収数は5548票(回収率92.5%)
有効回収数は無効票を除く5357人(有効回収率:89.3%)
なお、性別、年齢階層別の有効回答は、どの年齢階層においても9割前後で偏りは見られなかった。
◆ 本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/ /4月8日発表・同機構プレスリリースより転載)