JILPT、『改正労働契約法とその特例への対応状況 及び 多様な正社員の活用状況に関する調査』結果 ~改正労契法への対応でフルタイム有期雇用企業の2/3が「無期契約にしていく」と回答~
調査結果のポイント
Ⅰ 改正労働契約法とその特例(有期雇用特別措置法)への対応状況について
<何らかの形で無期契約にしていく企業が、フルタイム・パートタイムとも6割超>
フルタイムあるいはパートタイムの有期契約労働者を雇用している企業を対象に、改正労働契約法・第18条の無期転換ルールにどのような対応を検討しているか尋ねると いずれも「通算5年を超える有期契約労働者から、申込みがなされた段階で無期契約に切り換えていく」がもっとも多く(フルタイム契約労働者で45.4%、パートタイム契約労働者で50.8%)、これに「対応方針は未定・分からない」(同順に23.9%、26.9%)、「有期契約労働者の適性を見ながら、5年を超える前に無期契約にしていく」(19.6%、11.1%)、「有期契約が更新を含めて通算5年を超えないように運用していく」(6.0%、5.8%)などが続いた。前回調査(2013年実施)に比べ、「対応方針は未定・分からない」等が減少する一方、何らかの形で無期契約にしていく企業が、フルタイム契約労働者で計66.1%、パートタイム契約労働者で計63.1%と大幅に増大している。
<有期雇用特別措置法における再雇用有期の特例を活用予定の企業は1/3社超>
2015年4月に施行された有期雇用特別措置法では、定年後、継続して雇用される高齢の有期契約労働者について、雇用管理計画を作成し認定を受ければ、改正労働契約法に伴う無期転換申込権が引き続き雇用される期間、発生しないこととする特例等が規定された。これに伴い現在、定年再雇用者を雇用している企業(81.9%)を対象に、特例の活用意向を尋ねると、「活用予定はない」が60.6%にのぼる一方、「既に計画を申請した」が1.9%、「今後、活用予定・検討余地がある」が33.4%などとなった。また、「活用予定はない」とした企業に、定年再雇用者の無期転換権にどう対応するか尋ねると、「特段、何もしない(希望者は恐らくいない)」が45.9%でもっとも多く、これに「通算5年を超えないよう契約管理する」(37.2%)、「就業規則や労働契約書で第二定年を規定する」(11.1%)などが続いた。
Ⅱ 多様な正社員の活用状況と今後のニーズ、雇用管理上の課題について
<2割の企業が「多様な正社員」区分を今後、導入(増員)する予定と回答>
「多様な正社員」区分を今後、新たに導入(既にある場合は増員)する予定があるか尋ねると、73.9%が「導入(増員)の予定はない」とする一方、「導入(増員)する予定がある」とする企業が2割程度(20.4%)みられた。導入(増員)予定がある企業は大規模になるほど多く、1,000人以上では37.2%となっている。多様な正社員区分を導入(増員)する理由としては(複数回答)、「景気回復や少子高齢化等に伴い、必要な労働力の確保に対する危機感が高まっているから」(52.8%)がもっとも多く、次いで「非正社員からの転換を促し、優秀な人材を確保(囲込み)したいから」(36.6%)、「もっと女性や若者を採用・活用したいから」(31.8%)、「正社員の働き方を見直すため(長時間労働やメンタルヘルスの改善等)」(28.7%)、「正社員の区分をもっと細分化する必要性を感じているから(労働者の価値観の多様化、仕事と生活の両立支援等)」(22.6%)などとなった。
○ 調査の概要
1.調査の趣旨・目的
2013年4月より改正労働契約法が全面施行され、有期契約労働者が安心して働き続けられるよう、「雇止め法理」が法定化される(第19条)とともに、新たに反復更新で通算5年を超えた場合の無期契約への転換(第18条)や、有期・無期契約労働者の間における、期間の定めのあることによる不合理な労働条件の相違の禁止(第20条)等が規定された。
こうしたなか、高度な専門的知識等を持つ有期契約労働者や、定年後、継続して雇用される有期契約の高齢者については、その特性に応じた適切な雇用管理がなされる場合、無期契約への転換の申込権を一定期間、発生しないこととする特例が設けられ(有期雇用特別措置法)、2015年4月より施行された。
本調査は、そうした労働法制の見直しに対する企業の対応状況を明らかにするため、厚生労働省労働基準局の研究要請に基づき実施したものである。
また今後、通算5年を超えた有期契約労働者が無期契約へ転換すること等を通じ、職務や勤務地、労働時間等を限定した無期契約労働者も増加し、結果として正規-非正規の二極化の緩和や優秀な人材の定着、ワーク・ライフ・バランスの確保等に資することが期待されていることから、併せて「多様な正社員」の活用状況や今後のニーズ、雇用管理上の課題等についても把握した。
2. 調査対象(標本の抽出):
常用労働者50人以上を雇用している全国の民間企業20,000社(農林漁業、鉱業、公務を除く)※民間信用調査機関が保有する企業データベースを母集団として、産業・規模別に層化無作為抽出した。
3.調査期間:平成27年7月27日~9月11日
※原則として7月1日現在の状況を記入してもらった。
4. 調査方法:郵送による調査票の配布・回収
5. 有効回収数:4,854社(有効回収率24.3%)
◆ 本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/ /12月18日発表・同機構プレスリリースより転載)