【ヨミ】ワークフェア ワークフェア

「ワークフェア」(workfare)とは、work(労働)とwelfare(福祉)を組み合わせた造語で、「福祉の目的を就労の拡大におき、同時に福祉の受給条件として勤労を求める」考え方、および制度を言います。公的扶助に関する改革理念として提唱された経緯があり、ワークフェアを導入した労働・福祉政策においては、生活保護や医療費保護などからなる福祉の受給者に対して一定の勤労を義務づけ、給付を労働の対価とすることにより精神的自立を促すとともに、勤労を通じて将来の経済的自立の基盤となる技術・技能を身につけさせようとする制度が用いられます。
(2016/8/30掲載)

ワークフェアのケーススタディ

「働かざるもの食うべからず」で福祉を再構築
勤労を公的扶助の条件として個人の自立を促す

「ワークフェア」という言葉は、もともと1970年代のアメリカにおいて、リチャード・ニクソン大統領が福祉改革の理念として提唱したものです。当時、一人親家庭への扶助が福祉依存層を拡大させているとの認識から、こうした世帯に何らかのかたちで就労を義務づけることを目指して、同大統領のスピーチライターが作った造語だと言われています。

1994年に選出されたニューヨーク市のルドルフ・ジュリアーニ市長も、勤労を通じて生活を向上させるワークフェアを、市の福祉改革のコアを成すコンセプトに据えました。生活保護の受給者が市の指定する公共事業で働きながら就職先を探す勤労体験プログラム(WEP)など、同市のやり方は、経済的扶助の条件として一定の勤労を義務づけるシステムの先駆けとして全米に注目され、多くの州で同様のプログラムが導入されました。

また、同国のクリントン政権やイギリスのブレア政権が、若年層の雇用対策として活用した勤労税額控除も、ワークフェア思想にもとづく制度です。勤労税額控除は、勤労して所得を稼ぐと、所得に応じて一定割合の税額が控除され、納税額がゼロあるいは少なくて税額控除できない低所得者には現金が給付される仕組み。働かなくても一定の給付が受けられる生活保護などのモラルハザード(倫理の欠如)を防ぐとともに、貧困・ワーキングプア対策にも成果を上げてきました。英米以外にも、スウェーデンやカナダ、オランダ、カナダなど多くの欧米主要国が導入しています。

福祉給付受給者やその予備軍の就労インセンティブを高め、できる限り多くの人々に勤労を促すべきとするワークフェアの理念には、大きく二つの狙いがあります。一つは、社会保障制度の既得権益化や高齢社会の進展を背景とする“福祉国家の財政的危機”への対応として、福祉給付受給者の勤労を促すことで、受給者を負担者へと転換し、社会保障制度の財政基盤を強化しようというもの。もう一つは、長期にわたる福祉給付への依存が結果的に受給者自身の社会的な排除や疎外を招いているという問題への対応として、就労を通じて社会的包摂を進めようという狙いです。

「ワークフェア」は、“社会的弱者への給付”を基本とする伝統的な社会福祉の価値観を転換し、勤労を支援することによって、あらゆる人々が一人の個人として自立・自律することを促そうとする考え方だといえるでしょう。とはいえ、一方には「福祉の切り下げ、切り捨て」との批判もあり、実際、ワークフェアによって勤労を義務付けられた労働者が不当に低い賃金や不利な労働条件を強いられ、貧困から抜け出せないなど、制度としての問題も少なくありません。「働かざるもの食うべからず」の倫理観は前提としてもっともですが、真の意味での「ワークフェア社会」を実現するためには、そのワークの中身がフェア(公正)であることが求められます。

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