ポータブルスキル
ポータブルスキルとは?
「ポータブルスキル」とは、直訳すると「持ち運び可能なスキル」という意味で、業種・職種の垣根を越えて、どんな仕事や職場でも活用できる汎用性の高いスキルのことです。ポータブルスキルは2種類に分かれ、ひとつは英語や簿記技術のように専門的知識を求められ、その知識レベルが資格制度などによって客観的に証明されるスキル、もうひとつは洞察力や判断力、リーダーシップなど測定困難で視覚化できないスキルを指します。
エンプロイアビリティーを高める汎用的なスキル
資格より視覚化できない技能が市場価値を生む
かつて終身雇用制が健在だった頃、大半のビジネスパーソンにとっては、自分が一人の人材として労働市場全般でどう評価されるかよりも、自社の組織内でどう評価されるかが関心の中心でした。たとえ自社以外ではまったく役に立たないような独特の技能や知識でも、それが社内での業務遂行に求められる限り、評価が高ければ昇進や報酬アップにつながるのが普通でした。
特定の組織に固有のスキルをファーム・スペシフィック・スキル(firm specific skill)と呼びますが、いいかえればこうした要素を尊重する風土があったからこそ、日本企業は長く人事施策としての年功序列制度や終身雇用制度を維持し続けることができたとも考えられます。つまり社員が自社ならではのスキルを磨き、属する組織とのコミットメントを深めることで、高い定着率を支えてきたのです。
しかし、昨今は経営環境の激変を受けて雇用の流動化が進展、また、年金受給開始年齢も引き上げられ、将来的には70~80代まで働くのが当たり前になる可能性も十分にあります。こうした状況に対応しようと、「ポータブルスキル」(portable skill)に関心を寄せるビジネスパーソンが増えているのも不思議ではありません。業種・職種を問わないエンプロイアビリティーに通じる汎用的なスキルを備えることは、その人材の“市場価値”の優位性を意味するからです。社内での異動に頼ったキャリアアップだけでなく、転職など社外の労働市場への参入によるキャリアチェンジの可能性も見据え、進路選択の幅を広げることにつながるのです。
ポータブルスキルには上述のとおり、専門的な知識を要し、その知識レベルを証明する資格制度が整備されているスキルと、レベルの測定が困難で視覚化できないスキルがあります。一般的な傾向として、テクニカルスキルとも呼ばれる前者は、必ずしも市場価値が高くないのが現状です。資格保有者であれば最低限の知識レベルは保証されるので、代替人材が比較的確保しやすい上、実務に必要なテクニカルスキルは後からでも教育で身につけることができるからです。ビジネスパーソンとしての価値をより高めるのは、後者のポータブルスキルだといえるでしょう。環境変化をいちはやく見抜く洞察力や、迅速かつ的確に意思決定を下す判断力、目標の達成に向けて部下や同僚を巻き込んで鼓舞するリーダーシップなどが、どんな仕事や職場でも通用する普遍的なスキルとして重要視される傾向にあります。
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