【ヨミ】ロジカル シンキング ロジカル・シンキング
「ロジカル・シンキング」とは、論理的思考という意味。情報を決められた枠組みにしたがって整理・分析するさまざまなスキルの集まりを指し、これらを使うことによって、複雑なものごとの因果関係を明快に把握したり、問題に対する有効な解決策を導き出したりすることが可能になります。合理的な判断や論理的な説明の前提となる思考法で、意思決定や交渉、プレゼンテーションの際に活用できることから、人材育成の現場では必須のコンピテンシーとして定着しています。
(2011/2/28掲載)
ロジカル・シンキングのケーススタディ
ビジネスの国際化、複雑化を背景に
求められる「わかりやすさ」の技術
情緒や雰囲気を重視する日本人にとって「論理」というと少々とっつきにくいイメージがありますが、ロジカル・シンキングは決してものごとを難しく考えたり、表現したりするための方法論ではありません。むしろ逆です。「複雑で込み入った問題をシンプルに整理するための手法」であり、「自分の考えをどんな相手にも誤解なく伝えるためのコミュニケーションスキル」だといえるでしょう。つきつめれば、ロジカル・シンキングとは「わかりやすさ」を生み出す技術。マネジメント力があり、高い成果をあげている人材なら、日々の業務の中でごくあたりまえに使っている実践的なビジネススキルなのです。
ロジカル・シンキングの実践にはさまざまな手法やツールが用いられますが、代表的なツールの一つに「ロジックツリー」という考え方があります。これは、複数の要素が絡み合う問題の解決策を検討する際、目的や最終ゴールから枝葉を分ける形で数多くの要素を階層別に列挙し、整理する方法論です。ロジックツリーをつくることで、情報をもれなく重複なく整理できるため、要素同士の複雑な因果関係がわかりやすくなります。たとえば「店の売り上げを増やすにはどうすればいいか」という問題を解決する場合、方策はいろいろと考えられますが、とりとめもなく思いついた端から検討するのでは効率が悪いし、アイデアを提案するにも説得力に欠けるでしょう。問題解決の最終ゴールは「売り上げの増加」ですから、これを達成するには<(1)顧客の数を増やす>か<(2)顧客単価を増やす>しかありません。そして<(1)顧客の数を増やす>を達成するには<(1)-ⅰ新規顧客を開拓する>か<(1)-ⅱ顧客のリピート率を上げる>しかない。さらに<(1)-ⅰ新規顧客を開拓する>にはどうすればいいか――という具合に要素を一つずつ整理・分析していくことで、あらゆる可能性をもれなく把握でき、何が最も有効で、実現可能な解決策なのか導き出しやすくなるのです。
ロジカル・シンキングでは、この「ロジックツリー」以外にも<AはBである、BはCである、ゆえにAもまたCである>というふうに論理をつなげて推論する「演繹法」や、多くの事例から類似点を抽出して結論を導く「帰納法」、一覧表や分布図を使って要素の違いを明確にする「マトリックス」といった手法がよく使われます。
昨今、市場の動きや顧客のニーズは急速に複雑化・多様化し、各企業とも営業、製造などの単一部門では対応できない全社的な問題が増えています。また、文化も商習慣も異なる相手とわたり合うグローバル・ビジネスの現場では、「察する」「和を重視する」といった日本特有のコミュニケーションは通用しません。ビジネスの国際化と複雑化――ものごとをわかりやすく整理し、表現するロジカル・シンキングの技術が求められているゆえんです。