コグニティブダイバーシティ
コグニティブダイバーシティとは?
「コグニティブダイバーシティ(認知多様性)」とは、人々のものの見方や考え方、問題解決のアプローチといった内面的な違いに着目した多様性のこと。従来は、性別、年齢、国籍といった属性を表す「デモグラフィックダイバーシティ(表層的ダイバーシティ)」が注目されていました。しかし、組織がイノベーションを起こしたり複雑な課題へ対応したりするために、コグニティブダイバーシティが重要視されるようになりました。コグニティブダイバーシティは、「深層的ダイバーシティ」「タスク型ダイバーシティ」とも呼ばれます。
性別、国籍、年齢の多様性だけでは
なぜ不十分なのか?
女性比率が高く、従業員の年齢層も幅広い企業は、一見すると「多様性のある組織」です。それなのに、組織の空気はなぜか画一的で、会議でも同じような意見ばかりが出る。皆さんの企業はそうではありませんか?
この現象は、デモグラフィックダイバーシティが担保されているものの、コグニティブダイバーシティが担保されていないことから生じます。つまり、性別や年齢の多様性はあっても、考え方の多様性がないということです。
そこで注目されるのが「コグニティブダイバーシティ」です。物事を論理的に捉える人、直感や感覚を優先する人、チームの調和を重視する人、状況を客観的に俯瞰(ふかん)する人など、多様な「タイプ」の人を集めるのがコグニティブダイバーシティの考え方。各自が得意とする思考プロセスを組み合わせることで、単一の視点では生まれなかったユニークなアイデアが誕生します。
たとえば、新規プロジェクトを立ち上げるシーン。論理的な思考が得意なメンバーが集まると、確率やコストに注目した“理論上は”うまくいくアイデアが完成します。しかし、そこに大胆な発想をする人材が加わると、メンバーやターゲットの感情に訴えかけるようなワクワクするアイデアが出てくることも。違うタイプの人が互いの強みを補い合うことで、質の高いアウトプットを生み出せるのです。
コグニティブダイバーシティが求められる背景には、社会や技術の変化が激しく、先行き不透明な時代だということがあります。同じような発想や知識をもったメンバーが集まると、その集団が持つ「盲点」が共通してしまいます。その結果、組織としての「穴」ができやすいのです。
コグニティブダイバーシティは、属性などのデモグラフィックダイバーシティと「組み合わせる」ことでより強い相乗効果を発揮します。コグニティブダイバーシティだけが担保されている状態――極端な例ですが、「考え方は違うが全員男性」では、見落とす視点があるということです。コグニティブダイバーシティも、デモグラフィックダイバーシティもあることが重要なのです。
人事担当者がダイバーシティ戦略を考える際には、「性別や年齢を均等にする」だけでなく、より深いレベルでの多様性――価値観の違いや認知スタイルを意識することが重要です。具体的には、経歴だけでなく適性検査でわかる思考特性に注目したり、異色のバックグラウンド・経歴を持つ人材を積極採用したりすることで、コグニティブダイバーシティを高められるのです。

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