役員
役員とは?
役員とは、一般的には会社の経営方針を立案するなど、会社経営に責任を負う経営幹部を指します。会社法では「取締役」「会計参与」「監査役」の三役が役員として定められています(第三百二十九条)。
会社法における3種類の役員
取締役
取締役とは、会社の業務執行に関する意思決定を行い、経営方針の決定にも関与する権利を有した役職です。取締役が二人以上いる会社や、取締役会が設置されている会社では、定款に定めがある場合を除いて、取締役の過半数を持って意思決定を行います(会社法第369条1項)。なお、旧来の日本の株式会社では取締役会の設置が義務付けられていましたが、2006年(平成18年)に施行された新会社法により、取締役が一人でも株式会社を設立できるようになりました。
取締役は、株主総会で選任されます。任期は原則として2年ですが、非公開の株式会社の場合、定款もしくは株主総会の決議で最長10年まで任期を延長できます。
なお、取締役が複数人いる会社では、その中の一人を最高責任者として代表取締役に選出することが一般的です。
会計参与
会計参与とは、会計の専門家として取締役と共同で計算関係書類の作成を行う役員です。会計参与の仕事には会計の専門知識が必要になるため、税理士、公認会計士のみが就任できます。取締役と共同して計算関係書類を作成するほか、取締役会・株主総会に出席して意見を述べます。
監査役
監査役とは、取締役と会計参与が適正に業務を執行しているか監査する役員です。取締役と同様に、株主総会で選任されます。一般的に、監査役の業務は業務監査と会計監査の二つに分けられます。業務監査とは、取締役の職務執行を対象とした監査のことをいいます。会計監査とは、計算関係書類の監査のことです。資本金5億円以上の大会社や、公開会社では監査役の設置が法律で義務付けられています。
その他の役員
常勤・非常勤役員とは
会社によっては、役員に対して「常勤役員」「非常勤役員」といった呼称を設けているケースがありますが、常勤・非常勤役員という呼び方には、法律的な定義があるわけではありません。
一般的に、会社に来る日数や責任が明確になっている役員を常勤役員とよびます。対して、非常勤役員は必要に応じて出社するため、出勤日に定めがない場合が多く見られます。
執行役員とは
執行役員は、会社法で定めのある役員には含まれません。会社が任意で定める役職であり、執行役員がいるかどうかは会社によって異なります。
執行役員の一般的な役割は、事業方針に従って業務を遂行することです。執行役員を置くことで、取締役は事業の意思決定に専念し、執行役員が実行部分を担うといった分業体制が可能になります。
執行役員は通常、従業員に該当します。そのため、労働基準法の適用を受けるのが一般的です。ただし、取締役などと同様の委任契約か、一般従業員と同様の雇用契約によって、労務・税務上の扱いが異なります。執行役員は「重要な使用人」に該当するケースが多いため、その場合は取締役会決議によって選任されます。
会社法における役員の決め方と設置義務
役員の決め方
取締役・監査役・会計参与は、いずれも株主総会の決議によって決められます。役員が選任されたときは登記が必要です。
必要な役員
取締役、会計参与、監査役、それぞれの役員が必要となるのかどうか、何人必要となるのかについては、会社の形態によって異なります。
公開会社の場合
公開会社とは、株式を譲渡する際に会社の承認を必要としないことを定款によって定めている株式会社をいいます。公開会社の場合、取締役会の設置が義務付けられています。取締役会の設置には、最低3名の取締役が必要であり、原則として監査役を置かなければなりません。取締役会を設置している場合でも、会計参与を設置している場合は、原則監査役を設置する必要はありません。
株式譲渡制限会社の場合
株式譲渡制限会社とは、すべての株式に対して譲渡制限の規定を設けている株式会社のことをいいます。非公開株式会社ともいいます。株式譲渡制限会社は、1人以上の取締役で設立可能であり、取締役会を置く必要はありません。取締役会を置かない会社には、監査役を置く義務はありません。
役員の報酬はどうなっているか
役員報酬の基本的な決め方は以下の通りです。
- 株主総会や定款で役員報酬の総額を決定する
- 取締役会で役員別に報酬額を決定する
- 社会保険加入の書類を年金事務所に提出する
- 役員が住む市区町村へ住民税の届出を行う
役員報酬は、定款または株主総会の決議によって決められます。定款に定めがない場合には、株主総会によって決定します。役員報酬を会計に全額損金計上するためには、株主総会や取締役会での議事録を残しておく必要があります。
また、役員報酬を決める時期にも注意が必要です。起業1年目の場合、会社設立日から3ヵ月以内に決める必要があります。事業年度ごとに役員報酬は決定できますが、金額を変更できるのは事業年度が開始した3ヵ月以内のみです。
税法上の役員報酬
役員報酬が税法上、損金として認められるのは以下の種類に該当するものです。
定期同額給与
定期同額給与とは、1ヵ月以下の一定期間ごとに同額で支払われる報酬のことをいいます。毎月の給与のように支払われる役員報酬です。定期同額給与の金額を変更できるのは事業年度開始(期首)から3ヵ月以内の時期のみです。例外として、会社の業績が急激に悪化した場合など、減額することが可能です。
事前確定届出給与
事前確定届出給与とは、指定した日にまとめて支払われる役員報酬をいいます。事前に税務署に届出を行うことで、損金として計上できます。
業績連動給与
業績連動給与とは、会社の業績に応じて支払われる役員報酬です。業績連動給与を損金計上するには、「報酬の算定方法が所定の指標を基礎とした客観的なものである」「有価証券報告書に記載・開示している」などの条件を満たす必要があります。
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