I-deals(個別配慮)
I-deals(個別配慮)とは?
「I-deals(アイ・ディールズ)」とは、従業員それぞれの個別の労使交渉のことで、個々の事情に配慮しながら、労働者と組織の双方にメリットのある雇用契約を結んだり、個別対応をしたりすることをいいます。特異的という意味を持つ「idiosyncratic」と、理想的という意味の「ideal」を組み合わせた造語で、カーネギー・メロン大学のデニス・ルソー教授によって提唱されました。単に社員からの要望に応えるだけでなく、応えることで「帰属意識が高まり、成果につながる」など、組織にも良い影響があることが期待されます。
転職で条件交渉をしなかった割合は?
日本64.4%、米国30.6%、中国4.3%
「I-deals」と聞くと、一部の人が使用する特別なものというイメージを抱くかもしれませんが、入社時に行う条件交渉もI-dealsです。賃金、勤務時間、働く場所、役職やキャリアパスなど、働く側にはそれぞれの要望があり、できるだけ理想的な働き方を実現することを望んでいます。一方、組織側も、優秀な人材を確保できる、採用広報に役立つ、モチベーション高く働いてもらえるなどの良い影響につながるのであれば、従業員の要望に応えたいと考えています。Win-Winの関係を作れることがI-dealsのメリットです。
米国などの海外と比べると、日本のI-dealsの文化は少し遅れています。ダイバーシティ&インクルージョンの領域で注目されるような、障がい者や外国人といったマイノリティ属性への対応や、出産・育児・介護などのライフイベントに対する個別対応は徐々になされるようになってきました。しかし、多数派に属する人材にもそれぞれに理想の働き方があり、個別の事情があります。転職などで新たに雇用契約を結ぶ際、日本には要望を伝えすぎるのは良くないという暗黙の了解があり、入社後の条件の見直しもほとんどされていないのが現状です。
リクルートワークス研究所の5ヵ国リレーション調査(日本、米国、フランス、デンマーク、中国)によると、入社時に条件交渉をしなかった割合は日本が64.4%と最多で、米国は30.6%、中国に至っては4.3%となりました。また、入社後に賃上げを求めたことがない人の割合は、日本が71.3%、米国が28.7%、中国は5.2%という結果に。日本は働き方や賃金に不満があっても、企業と交渉して解決するのではなく、そのまま受け入れる傾向が強いといえます。
I-dealsにも、大きく分けて二つの対応があります。まずは、賃金や役職など、基準が制度によって決められている(=個別対応が難しい)もの。もう一つは勤務場所や仕事内容などに明確な基準がなく、リーダーやメンバーの判断や組織の文化・風土で調整できるものです。
一人ひとりの働き方を最適化するためには、制度面も文化面も柔軟に対応することが必要です。コロナ禍でリモートワークが増えたことで、柔軟な働き方を選択できる空気が醸成されました。リモートワークと出社を使い分けるハイブリッドワークも増えています。これをきっかけに、日本でもI-dealsを活性化できるのか、それぞれの組織の手腕が問われています。
用語の基本的な意味、具体的な業務に関する解説や事例などが豊富に掲載されています。掲載用語数は1,400以上、毎月新しい用語を掲載。基礎知識の習得に、課題解決のヒントに、すべてのビジネスパーソンをサポートする人事辞典です。