企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

【ヨミ】ロウドウシンパンセイド 労働審判制度

労働審判制度は、解雇や賃金不払いなど、会社と個々の労働者との間に生じた労働関係に関するトラブルを、そのトラブルの実情に即して迅速、適正かつ実効的に解決するための制度です。2006年4月の労働審判法施行に伴って導入されました。確定した労働審判には裁判上の「和解」と同等の法的拘束力があり、しかも訴訟に比べて時間・費用の負担や手続きの煩雑さが軽減されるため、利用件数が飛躍的に増大しています。
(2011/1/31掲載)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

労働審判制度のケーススタディ

迅速で柔軟な新しい紛争解決モデル
申立件数急増も、使用者側は消極的

 労働審判制度では、ストライキなどの集団的紛争は対象事案とならず、労働組合が関与することもありません。労働審判の手続きが適用されるのはいわゆる「個別労使紛争」。具体的には解雇、雇止め、配転、出向、賃金・退職金の請求権、懲戒処分、労働条件変更の拘束力などをめぐる個々の労働者(派遣社員やパート、アルバイトなどの非正規従業員を含む)と事業主との間の権利紛争が対象となります。残業代の請求については精査が必要なため、迅速な解決を目指す同制度にはなじまないといわれてきましたが、実際は一部でもタイムカードが存在すれば、それをもとに推定するなどして、調停・審判がなされているようです。

労働審判の手続きを行うのは、地方裁判所に置かれる「労働審判委員会」です。これは地方裁判所の裁判官から指定される「労働審判官」1名と労使がそれぞれ推薦する「労働審判員」各1名の計3名から成る合議体で、労働審判員には、企業の人事部門で長年労務管理に携わってきたような、労働関係に関する豊富な経験と専門知識が求められます。そうした現場を知る人材が審議・審判に参加することによって、トラブルの実態に即した、より妥当で納得性の高い解決案が得られます。

同制度では当事者から申し立てがあれば、相手方の意向にかかわらず手続きが進行し、原則3回以内の期日、3ヵ月程度の期間で審理を終結しなければなりません。労働審判委員会は、調停成立の見込みがあればこれを試みますが、話し合いによる解決に至らない場合には審判を下し、権利関係を確認したり、金銭の支払いなどを命じたりすることができます。当事者がこの審判を受諾すれば、紛争は解決。受諾せず、2週間以内に異議申し立てが行われれば、審判は失効し、民事訴訟へ移行するという流れです。最高裁判所によると、09年に申し立てられた労働審判のうち9割近くは訴訟に移行せずに解決。正式な裁判では1年以上かかるケースでも、平均74・4日で終結しています。

同制度は、年間1,500件程度の申し立てを想定して制度設計されたと言われていますが、申立件数は急増し、09年時点ですでに想定の倍以上の3,468件に達しています。ただし申し立ての大半は労働者側から。使用者側からのものは意外なほど少ないのです。09年度の東京地裁への申立件数1,140件のうち、使用者からの申し立てはわずか9件でした。使用者側の「労働紛争の解決を裁判や調停などの公的機関に委ねると不利になりやすい」という司法に対する懸念はわからなくもありませんが、先述したような手続きのスピードや手軽さ、労働関係に精通した審判員の参加による柔軟でより実効的な解決など、新しい紛争解決モデルとしてのメリットにももっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

あわせて読みたい

個別労働紛争解決制度
2001年10月施行の「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づいてスタートした制度。個々の労働者と事業者の間のトラブルを、裁判によらず、第三者を介在させて迅速に解決することを目的としています。
労働契約法
厚生労働省が制定を目指している新たな労働法制。労働条件を決める際の基本的なルールや手続きを明確にすることで、多発する労働契約や解雇をめぐる労使紛争を防止する狙いがあります。
ADR法
裁判外紛争解決手続きの利用に関する法律の略。2004年12月1日に公布され、準備期間を考慮して、2年6カ月を超えない範囲で施行されることになっています。

関連する記事

高谷知佐子さん 「解雇」をめぐる個別紛争をどう解決するか
合理的理由のない解雇は権利を濫用したものであり無効である――「解雇」のルールなどを明文化した改正労働基準法の施行から2年。でも労使のトラブルはなかなか減りません。とくに個別労働紛争が急増し、頭を悩ます人事労務担当者も急増中と言います。紛争の予防とその迅速な解決...
2005/10/17掲載キーパーソンが語る“人と組織”
勧告・指導、改善状況の実態は?労働基準監督署による企業監督事例(上)
労働基準監督署が実際に行った勧告や指導内容、改善状況を事例で紹介しています。
2007/01/05掲載人事・労務関連コラム
《論談時評》第6回 労働時間規制の見直しで残業代がなくなる?議論沸騰中の「労働法制改革」を読み解く
ここに来て、「労働法制改革」をめぐる議論が盛んになっています。2006年6月、厚生労働省は「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について」(案)を発表し、労働政策審議会労働条件分科会で検討作業に入りました。
2006/10/06掲載編集部注目レポート

関連するQ&A

36協定
36協定は、時間外労働と休日労働を分けて協定するようになっていますが、休日労働の時間数は、時間外労働の時間数に算入しなくて良いのでしょうか?
徹夜労働について
休前日から翌日(休日)にかけて徹夜労働をさせた場合の質問です。 ①例えば翌日の朝9:00まで労働させた場合、夜中0:00から朝9:00までの間は、前日の労働時間とみなされると思うのですが、その時間分の時間単価は、休日労働の135%になるのでしょうか?それとも前の日からの労働時間として125%でよい...
時間外・休日労働時間の算定
長時間労働者への医師による面接指導制度について、この場合の1ヶ月の時間外・休日労働時間数は、1ヵ月の総労働時間数(所定労働時間数+延長時間数+休日労働時間)―(1ヶ月の総暦日数/7)×40、ということですが、例えば1月の所定労働時間19日×8時間=152時間、1月の時間外勤務が68時間、休日労働時間...
新たに相談する
相談する(無料)

「人事のQ&A」で相談するには、『日本の人事部』会員への登録が必要です。

新規登録する(無料) 『日本の人事部』会員の方はこちら
業務に関するちょっとした疑問から重要な人事戦略まで、
お気軽にご相談ください。
各分野のプロフェッショナルが親切・丁寧にお答えします。

関連するキーワード

分類:[ 人事管理 ]
分類:[ 就業管理 ]
テレワーク特集

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

タレントパレット ジョブ・カード制度 総合サイト

50音・英数字で用語を探す

新着用語 一覧

注目コンテンツ


テレワーク特集

「テレワーク」のメリット・デメリットを整理するとともに、導入プロセスや環境整備に必要となるシステム・ツール、ソリューションをご紹介します。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


会社の新しい挑戦を支えるために<br />
人事戦略のよりどころとなる総合的な人材データベースを構築

会社の新しい挑戦を支えるために
人事戦略のよりどころとなる総合的な人材データベースを構築

第一三共株式会社は2025年ビジョン「がんに強みを持つ先進的グルーバル...


「見える化」による効果検証で テレワーク導入をスムーズに実現<br />
西部ガスが取り組む“業務・ワークスタイル改革”とは

「見える化」による効果検証で テレワーク導入をスムーズに実現
西部ガスが取り組む“業務・ワークスタイル改革”とは

福岡市に本社を構える西部ガス株式会社は、「働き方改革」の一環としてテレ...