証券取引等監視委員会(SESC)
証券取引等監視委員会(SESC)とは?
証券取引及び金融先物取引の公正を図るために設けられているのが、証券取引等監視委員会(SESC)です。アメリカの証券取引委員会(SEC)がモデルとされ、「市場の番人」として期待されています。
1991年の証券不祥事をきっかけに発足
実効性の高い投資家保護対策が求められている
証券取引等監視委員会(以下、監視委員会)が発足したのは、1991年の証券不祥事(損失補填問題)がきっかけでした。米SECは証券市場を監視する独立の行政機関ですが、日本の監視委員会は当時の大蔵省証券局からその監視機能が分離して発足した経緯から同省の付属機関となり、現在は金融庁に置かれています。
監視委員会は、証券会社等の検査、日々の市場動向の監視、インサイダー取引など課徴金事件の検査、粉飾決算など有価証券報告書等の虚偽記載の検査、各種の勧告・建議及び犯則事件の調査を行うことになっています。
米SECは審判・審決という司法に準じた機能を備え、民事制裁金や排除措置命令という処分権限を行使することができますが、日本では監視委員会の独立性が保たれていないうえに、司法に準じた権限を持たず、法律違反に対しては検察庁に刑事告発するか、金融庁に行政処分を勧告するかしか手がありません。
このため、ライブドアがニッポン放送株を大量取得する際に、東証の時間外取引を使うなど制度のすき間を利用したことに対して、何ら有効な手立てを取れませんでした。
米SECは準司法機能を備えているだけでなく、市場の健全性を損なう事件に際して自浄能力を機能させるための改善努力も怠りません。たとえば、巨大エネルギー企業・エンロンの粉飾決算が発覚した2001年は、米SECの信頼性も大きく揺るぎましたが、わずか8カ月間でサーベンス・オクスリー法案を成立させ、(1)上場会社会計監査審議会の設置(2)監査以外のコンサルティング業務の兼業禁止(3)監査証拠等書類の5年間保管義務(4)担当パートナー(会計監査法人)の5年ごとのローテーション(5)罰則規定を禁固5年から最長20年への強化(6)海外の会計事務所への適用…などを矢継ぎ早に決定しました。
エンロンの粉飾決算事件では、会計監査を担当したアーサー・アンダーセンも崩壊に追い込まれました。ところが、日本では2003年に一部改正された公認会計士法でも、監査証明業務とコンサルティング業務の同時提供の禁止が追加された程度で、会計監査法人のローテーションは盛り込まれませんでした(政令による)。そうしている間にも、西武鉄道の名義株をめぐる虚偽記載や、会計監査法人を巻き込んだカネボウの粉飾決算といった不祥事が相次ぎました。
ネットによる株取引が普及した今こそ、より実効性の高い投資家保護対策が求められるところです。
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