認知的不協和
認知的不協和とは?
「認知的不協和」とは、自分の中に矛盾する二つの認知を抱えたときに生じる、居心地の悪さや不快感を表す心理用語です。アメリカの心理学者である、レオン・フェスティンガー氏によって提唱されました。認知的不協和から起こる不快感によって、人は自らの態度や行動を変容させていると考えられています。また、人は不協和を軽減させたいがために、過去の認知または新しい認知のいずれかを否定する傾向にあります。
痩せたいけど、食べたい
成果を上げたいけど、努力は面倒
人は、合理的な判断ができるときばかりではありません。矛盾した二つの認知を抱えて生きていることは珍しいことではなく、日常のさまざまな場面に認知的不協和は存在しています。例えば、ダイエットのために「食事制限をしよう」と心に決めているのに、お腹が空くとスイーツに手が伸びてしまう。友人からの食事の誘いを断ることも難しい。それでも、好ましくないことをしているという自覚があるため、相反する二つの認知にストレスを感じてしまうのです。
認知が矛盾している居心地の悪さから解放されるため、人は古い認知または新しい認知を否定し、行動か認知かのいずれかを変更していきます。タバコを例にすると「健康に悪い」という認知と、「吸う」という行動から、認知的不協和が生まれます。この矛盾から逃れるために、「タバコをやめる」という行動変更や「祖父はタバコを吸っていたが100歳まで生きた。喫煙と健康に因果関係はない」などと認知を上書きしたりするのです。
仕事でも認知的不協和が生じる場合があります。例えば、成果を思うように上げていないことに対して、上司から「今のままのやり方で本当に問題ないか」と質問されたとします。言われた本人には、同じように「成果を上げていない」という認知と、「やり方を変えるのは面倒だ」という認知があります。その矛盾からくる不快感を解消するために「同期のAはこの方法でうまくいっているから、このまま踏ん張れば何とかなる」と、上司のアドバイスを無効化してしまいます。
認知的不協和は、人々がストレスを避けるために無意識的に行っていることです。ストレスや不快感をため込まないために、認知的不協和を軽減のする行動や認知の変容は必ずしも悪いこととは言えません。しかし仕事となると、自己正当や合理化が好ましくない場合もあるでしょう。認知的不協和が起きたとき、事実をねじ曲げて都合よく解釈しないためにも、認知的不協和という理論や概念を知っておくこと、そして自身の認知の癖を自覚しておくことが大切です。
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