仕事への原動力は一貫して「好奇心」
今は日本の医療に人材という観点から向きあう
エムスリーキャリア株式会社 代表取締役
羽生 崇一郎さん
医療従事者の気持ちを汲んだサービスの大切さ
医療人材サービスを提供するうえで、経営者としてどんな点に配慮していらっしゃいますか。
日本の医療提供体制は大きな変化が必要とされています。一人ひとりの医療従事者が自分の働きやすい環境を選び、結果的に最適な人材配置になることが理想です。ですから、私たちはまず個々の医療従事者、医療機関のニーズに誠実に応えていくことが重要だと思います。
そのためには医療従事者や医療機関の考え方や方針を、十分理解したうえで対応することがとても大切だと考えています。たとえば、医療に関わる方々は、単純に給与などの条件だけで職場を選ぶのではありません。「患者さんのため」「地域のため」といったことを非常に重視します。
普段、患者さんと接するなかで何を大事にしているのか、医療従事者としてどうありたいと考えているのか。地域や目の前にいる患者さんの役に立ちたいという強い気持ちを汲み取ったうえで、私たちはサービスを提供しなければなりません。
医療は命に関わることであり、間違いがあれば大きな影響があります。日本全体の医療提供体制という大きなテーマも見据えながら、もう一方では医療従事者や医療機関の気持ちにも寄り添うのが医療人材サービスという仕事ではないでしょうか。
貴社が将来に向けて注力されている分野があればお聞かせください。
5年先、10年先に向けては経営計画のなかで重点3事業を定め、強化を進めています。第一の人材領域では、専門性や雇用形態、ビジネスモデルなどの多様な組み合わせでどんどん新しいサービスを生み出していきたいと考えています。
第二に、医療機関への経営支援を通して、いきいきと働ける環境づくりへの支援にも注力していきます。病院の収益性向上や院内組織の調整、マネジメントを担う事務部門の強化、さらには医師・医療従事者の働き方改革支援まで含めた、医療機関を良くするための実行支援コンサルティングです。
第三は中国事業。中国では医療従事者が圧倒的に不足し、健診や治療のために日本を訪れる人も多いです。そういったインバウンド、メディカルツーリズムの動きを円滑に進めるビジネスと、実際に現地で医療従事者を紹介する人材ビジネスの二つを軌道に乗せていきたい。すでに中国現地法人も立ち上げて、取り組みをスタートしています。
コンディションを整え、自分のやりたいことに素直に
最後に人材ビジネスを通じて、人と組織の可能性を切り開いていきたいと考えている皆さんにメッセージをいただけますでしょうか。
単純なことですが、私は食事・睡眠・運動に気を配ってコンディションを整えることを大切にしています。身体と精神の状態は互いに影響し合います。特にリーダーには、自分たちの組織と周囲の環境変化をあらゆるレイヤーで見通し、把握し、判断する力が求められます。しかし、体調や精神的な状態はどうしても浮き沈みが出てしまうもの。なるべくそれらを一定に保ち、動じないで進めることが重要です。もちろん高い志や大きなビジョンを持つ、勉強するといったことも大事ですが、その前にもっと大切なのが、生き物としての基礎である健康だと考えています。
私はトライアスロンが好きで、トレーニングを日常的に行っています。もともとは趣味として始めたのですが、結果的には仕事にもよい影響を与えてくれているように感じます。トレーニングに集中していると仕事の悩みも忘れ、完全にリフレッシュできます。逆にトレーニング中に、ふと仕事のヒントを思いつくこともあります。気持ちを切り替える手段を持っているという大きな安心感があります。
もう一つ付け加えるなら、自分の好きなことは何かをしっかり考えることでしょうか。私も他人の期待や同じ年代の人の活躍といったものに影響された時期もありました。しかし、30歳あたりから、そういった周囲との比較があまり気にならなくなりました。好奇心が満たされる仕事が好きで、他人と競ってキャリアアップを目指さなくてもいいと、自分の気持ちに素直になることで、とても生きやすくなり、仕事も楽しくなりました。
社名 | エムスリーキャリア株式会社 |
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本社所在地 | 東京都港区虎ノ門4-1-28 虎ノ門タワーズオフィス |
事業内容 | 医師・薬剤師向けの総合キャリアサービス |
設立 | 2009年12月 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。