「サービスの流通創造」という
斬新なビジネスモデルで起業
現在は「BPOのワンストップ・ソリューション」
にも挑む
株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長
白石徳生さん
人材ビジネスとBPOは間違いなく巨大市場になる
自ら新しいビジネスモデルを考案し、起業した会社を成長させてこられたわけですが、成功した理由をどのようにお考えですか。
アイデアについてはやはり、ビジネスの芽を日ごろから常に探していたことが大きいですね。私がよく若い社員に言うのは、まず「想像力」を鍛えなければならないこと。みんな「不便な現状」しか知らないから、自分たちが困っていることに気づかないんです。たとえば、いま携帯電話がないと大変困りますよね。でも、30年前の人に「携帯電話がなくて困るでしょう」と言っても、おそらくピンとこないはずです。これまでは「サービスの流通」というものがなかったから、比較・検討もできずに高いサービスを買っていても、誰も不便を感じなかった。しかし、いったん「サービスの流通」ができあがったら、「昔はよくあの値段でサービスを買っていたね」ということになります。
また、なるべく市場規模が大きくなりそうなビジネスをイメージするようにしていました。携帯電話はまさにそうで、私の学生時代にはなかった市場がテクノロジーの進歩もあって、現在はこんなに大きくなっている。ですから、私がいつも考えているのは「第二の携帯電話ビジネスを探せ」ということです。サービスもまた、すそ野がものすごく広い分野です。日本だけでなく、海外にも展開できる。「サービスの流通創造」に可能性を感じた理由は、そこにもあります。
企業経営という面では、「レベル感と方向性」を意識してきました。「レベル感」というのは目標をどこに置くかということ。個人でも会社でも、目標は100点だと言いながら、80点でいいだろうと思っていることが多いんです。そうではなくて、あくまでも100点をめざしてやる。この違いが重要ではないでしょうか。同じ業界であれば、ビジネスの仕組みはどの会社も似たようなものです。しかし、ソフトバンク、ユニクロ、ニトリといった企業は他社と何が違っていて、トップ企業になれたのか。「目標を突き詰めていく」という企業文化の違いだけだと思うんです。電話を1秒でとる会社と、0.1秒でとる会社。そういう小さな違いが、最終的には大きな違いになっていくのです。
私は「ダーウィンの進化論」からいろいろな経営のヒントを得ていますが、その一つが「生き残るのは強いものや大きいものではなく、環境変化に適応できるものである」という考え方です。企業も同じで、社会という環境に適応できなくなるとすぐに淘汰されます。「方向性」として社会が必要としている価値を提供できているかどうか、短期的な利益だけを追求して不正を見逃していないかどうか。こういったことを常に自己検証していける企業でなくてはならないという思いは、一貫して変わっていないですね。
最後にHR業界で働く若い読者の皆さんにメッセージをいただけますでしょうか。
日本では団塊の世代の方々が現役から退き、一転してあらゆる業種で人材が不足しています。全国の現場を自分の足で歩いてきた感触からすれば、賃金や待遇を改善していかないと、もう人材を確保できない時代に突入しているのは明らかです。つまり、採用支援をはじめとする人材ビジネス全般、さらにはBPO業界も、非常に工夫のしがいがある、やりがいのある時代が始まっている気がします。ここから日本では、眠っていたBPOの巨大市場が一気に顕在化していくのは間違いないでしょう。私たちも給与計算をはじめとして、BPOへの取り組みを一段と加速させているところです。
私は、日本全体がこれから変化の時代に入っていくと考えています。アベノミクスはどうなのか、デフレはこのまま続くのか、とかく悲観論が多いのですが、こうした状況はちょっとしたことで変わります。私は1980年代末にアメリカに滞在していましたが、その当時、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、勢いのあった日本に押されたアメリカの主要産業は、もうボロボロでした。経済も国民も疲弊しきっていました。しかし、それから約30年が経った今、アメリカは圧倒的な力で復活しています。ではアメリカは何をしたのかというと、インターネットの民間開放と金融自由化。これだけです。国の施策が大事だなと思うのは、あれだけ停滞していたアメリカがこれだけの規制緩和でよみがえったからです。今の日本は本当に規制が多いと感じています。思い切った規制改革、それが今後の日本躍動のカギになるのではないかと思います。
私は、日本にはすごい潜在力があると思っています。私の海外の知り合いでも、日本に行ってみたいという人が急速に増えています。2020年には東京でオリンピック、パラリンピックも開催されますし、今、日本人が考えている以上に日本は世界から注目されています。環境さえ整えば新しいビジネスがどんどん生まれて、世界に打って出ることも十分に可能です。「第二の携帯電話ビジネス」「第二のサービスの流通創造」は、意外と私たちのすぐ近くにあるのではないでしょうか。
社名 | 株式会社ベネフィット・ワン |
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本社所在地 | 新宿区西新宿 3-7-1 新宿パークタワー |
事業内容 | 福利厚生事業/インセンティブ事業/CRM(Customer Relationship Management)事業/パーソナル事業/BTM(Business Travel Management)事業/旅行事業/ヘルスケア事業/コストダウン事業 |
設立 | 1996年3月15日 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。