仕事だけが「働く」じゃない
――社会起業家が提唱する「働き方革命」で
企業を変える
認定NPO法人フローレンス 代表理事
駒崎 弘樹さん
「働き方革命」で日本人にしかできないイノベーションを実現
駒崎さん自身、子育て真っ最中の“イクメン”ですが、最近は職場でイクメンを支援する“イクボス”を育てようという議論も盛んです。どうご覧になっていますか。
男性が子育てに参加するために定時に帰ったり、育休をとったりするのは当たり前だし、周囲がそれを受け入れるのも当たり前。それなのに、そんな当たり前のことにまでわざわざインセンティブをつけなきゃいけないというのは、正直なところ、ちょっと情けない気もしますね。でも実際、ある調査によると、同僚が育休をとると腹が立つという人が2割もいるんです。育休をとろうが、早く帰ろうが、その人がいなくても回る仕組みをつくっておけばいいだけの話なのに、「じゃ、お先に」なんて言おうものなら、まるで裏切り者を見るような目で見られてしまう。
日本の企業に、仕事の価値を時間の長さで測る長時間労働の文化が、それだけ深く根付いてしまっているということなんです。確かに安いものを大量につくればつくるほど売れた時代なら、長時間労働にもそれなりの合理性はあったでしょう。当時の成功体験の記憶が、日本の職場には今も文化として染みついている。しかしもはやスケールメリットをねらう大量生産は、中国や新興国にお株を奪われてしまいました。日本は質の高い付加価値やイノベーションで生き残るしかないわけですが、長く働くことと知的生産性との間に相関関係はありません。
むしろ皮肉なことに、“負の相関関係”が見てとれますね。
だから働き方革命なんですよ。付加価値の高い仕事をしてもらおうと思ったら、社員を1日十何時間も会社に縛り付けておいちゃあダメでしょう。リラックスできる時間もなければ、新しい知識を学ぶ余裕もなく、さまざまな分野の人と交流する機会もない、イノベーションから最も遠い働き手になってしまうわけですから。
では最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
知的生産性を高める働き方革命は、いわばトヨタの“カイゼン”のホワイトカラー版です。それは単なる福利厚生ではなく、企業活動にさまざまなメリット、得をもたらします。社員一人ひとりの働き方が変われば、会社が変わる。会社が変われば、企業社会が変わり、日本という国だって変えられる。僕はそう信じています。人事部の方々にも、日本の未来は自分たちの仕事にかかっているんだというふうに捉えてほしいですね。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。