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樹木医

樹木の健康を守る“木のお医者さん”
環境問題への関心が高まる中、期待されるその“将来性”

今年は全国的に、桜の開花が早かった。さらに、この春から夏にかけて、さまざまな草花や木々が美しい花を咲かせ、緑の葉を茂らせることだろう。そんな植物たちを管理・治療し、健康を守っていく仕事がある。“木のお医者さん”ともいわれる、「樹木医」だ。このところの自然環境保護への関心の高まりや、観葉植物ブームなどの影響もあり、その将来性が大きな関心を集めている。

樹木のあらゆる課題に取り組む専門家

樹木医という名称は、財団法人日本緑化センターによって商標登録されており、同センターが実施する資格審査に合格した人だけが、正式に「樹木医」と名乗ることができる。ちなみに同センターのホームページによると、樹木医は「樹木の診断及び治療、後継樹の保護育成並びに樹木保護に関する知識の普及及び指導を行う専門家」とされている。

イメージ

日本の国花のひとつといわれる、“桜”。全国には、数多くの名木も存在する。なかには、樹齢1000年を超えるという桜もあるが、その健康を支えているのが「樹木医」だ。

都市化による大気汚染や、害虫による被害、気温や土壌などの環境問題…。さまざまな要因によって、樹木の健康状態は蝕まれていく。適切な保護や治療が必要だが、樹木の種類によって、また、気象や土壌などの状況によって、治療方法は違ってくる。ここで求められるのが、樹木医が持つ知識と技術だ。

樹木を診察し、処方箋をつくり、薬を投与する。その後も、経過を見ながら、新たな処置を講じる…まさに、“木のお医者さん”というべき存在だが、診察・治療を行うには、幅広い知識を習得していなければならない。樹木の種類によってその特性は大きく異なるほか、樹木そのものに関する知識だけではなく、気象や土壌など、自然環境に関する幅広い知識も必要になるからだ。

樹木医は、天然記念物に指定されるような名木をはじめ、寺院や公園などに植えられている樹木や街路樹、さらには庭木に至るまで、あらゆる樹木の管理・治療を行う。時には、樹齢数千年にも達する老木を治療することもある。また、治療だけではなく、宅地開発の際に大掛かりな造園計画に携わることもあれば、数百本に及ぶ樹木の大規模な移植計画の陣頭指揮を執ることもある。樹木に関して、あらゆることに対応できるプロフェッショナルなのだ。

今後注目される資格制度

樹木医が資格として認定されたのは、平成3年。受験するには、樹木の診断、治療などに関する7年以上の業務経験が必要だ。つまり、まずは造園会社や大学の研究所などに所属して、実務に携わる必要があるということ。

例年、5~6月に公募し、7月に筆記と業績審査による第1次審査を実施する。続いて、10月には2週間の宿泊研修を行う。履修科目ごとに筆記試験を受け、研修終了後には面接を実施。それに合格して初めて、樹木医の資格を得ることができる。毎年合格者数は、約120人。非常に高い倍率のため、根気よく挑戦していく姿勢が求められる。平成20年1月の時点で、1,608名の樹木医が認定されている。

最近は樹木医の認知度が徐々に高まってきたこともあり、造園業などの仕事に携わっていなかった人でも、その将来性に期待し、資格取得を目指すケースが増えているようだ。平成16年からは、認定した一部の大学で基礎的な知識や技術を学んでいれば、実務経験が1年でも受験は可能な「樹木医補」の資格制度がスタート。樹木医の資格取得の門戸を開いている。ここへきて、若年層でも資格取得を目指す人が増えてきているという。

将来的な認知度向上を期待

気になる収入は、個人によってさまざま。樹木医の大半は、造園会社や大学の研究所、園芸専門店などに勤務しているが、この場合の収入は、勤務先の規定によるため、一般的なサラリーマンと同等のレベル。

個人で開業している人や、樹木医を副業としている人の場合、その活動の状況や報酬体系によって、収入は大きく違ってくる。フリーランスなら、収入は自身の工夫次第。年収数十万円の人もいれば、年収700万~800万円という高収入の人もいるなど、実に幅広いようだ。ただし、現段階では、個人で開業している樹木医はあまり多くないのが実情だ。

しかし、最近は、さまざまなメディアで「木の専門家」として取り上げられるケースが増えている。樹木医の歴史はまだ浅く、資格を取得している人もそれほど多くない。今後、さらに認知度が高まることで、仕事の依頼が増え、収入の大幅増も期待できるのではないだろうか。

樹木と向き合う真摯な姿勢

樹木医は、樹木の治療や延命ばかりが仕事ではない。自然環境に配慮し、土壌や植樹などのバランスを保っていくためには、時には「伐採」などの処理を行うこともある。例えば、他の樹木に病気が伝染する可能性がある場合や、倒木の可能性がある場合など。その状況に応じて、最良の対処方法を決定し、実行していく。樹木の最期を看取ることも、樹木医にとっては大切な仕事のひとつといえる。

樹木は、自ら言葉を発することはできない。一体何が原因で、どこの具合が悪いのか…。樹木医は、幹や枝、葉など、樹木のさまざまな部分を見ていくことで、樹木が発している「声」を聞き出さなければならないのだ。

今後、地球温暖化対策や都市部の緑化活動などは、さらに活発化していくだろう。樹木医の存在が、ますます重要になってくることは間違いない。何よりも、花や緑は、人間の生活にとっては欠かせないもの。樹木が長い年月をかけて、太くたくましく育っていくのと同様、樹木医にも今後は大きな「成長」が期待される。

※数字や記録などは2009年3月現在のものです。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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