【弁理士】
被害者にも加害者にもならないために
知的財産のプロフェッショナル
弁護士、税理士、行政書士など、世の中には“士業”と呼ばれるさまざまな職業があるが、「弁理士」もその一つ。技術やアイデアを発明・考案した個人・企業の権利を守るために存在する「知的財産」に関する専門家だ。知的財産を保障する知的財産基本法は、2002年に日本で制定された。知的財産とは一体何なのだろうか。弁理士は何を守っているのだろうか。
知的財産権は「何を保護するか」で種類が変わる
知的財産権には、特許権や著作権、意匠権、商標権などのようにいくつかの種類がある。保護の対象になるもののほか、存続期間、登録必要性の有無、登録までの期間や費用などがそれぞれで異なる。知的財産権には、大きく分けて「産業財産権」と「著作権」とがある。著作権は登録が不要で、著作物が完成した時点で自動的に権利が発生するのが特長だ。
産業財産権は、「知財四権」と呼ばれる「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」に分けられる。「特許権」は、発明した技術を保護する権利だ。出願から20年間は権利が存続し、登録にかかる費用は合計70万円以上と、最も高額な費用がかかるカテゴリーだ。
「実用新案権」は、物品の形状、構造または組み合わせに係る考案を保護するための権利。簡単に言うと、特許とまではいかない身近な発明のことだ。例えば「立つおたま」や「ペットボトルのキャップ」など、生活用品が対象になることが多い。
「意匠権」は、製品や商品の特長的なデザインについて独占権を認める権利だ。かつて、本田技研工業は「スーパーカブ」というオートバイのデザインについて意匠権を取得し、模倣製品を製造・販売した企業を相手取った意匠権侵害の訴訟で勝訴している。
最後の「商標権」は、ネーミングを保護するもの。例えば、腕時計「G-SHOCK」を有するカシオ計算機は、類似の商品が生まれることを避けるため、「A-SHOCK」から「Z-SHOCK」まで、全てを商標登録しているのは有名な話だ。
このように知的財産権には種類があり、ルールもそれぞれ違うため、知らぬ間に被害者になることもあれば、加害者になることもある。知的財産権は「まねされたくないもの」を登録するのが一般的だが、誰かが自分より先に登録していれば、以降は自由に使えなくなる可能性がある。仮に特許権を侵害した場合には、10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金に処される恐れがある。弁理士はクライアントの知的財産を守るため、そして知らぬ間に権利を侵害するリスクを防ぐための心強い味方なのだ。
あまり実情が知られていない仕事をピックアップし、やりがいや収入、その仕事に就く方法などを、エピソードとともに紹介します。