日本能率協会グループ、「人づくり実態調査2009」実施
日本能率協会グループ(経営会議議長:秋山守由)は、このたび日本企業の「人づくり(人事・教育)」の実態を体系的・具体的に把握する目的で、上場企業および未上場主要企業の人事教育責任者に調査を実施し、1,000社からの回答が得られた。
本調査の質問は200項目以上に及び、企業の人事体系を多面的に捉えるものであり、この結果は現在の日本企業の人づくりの実態をほぼ反映していると考える。今回は、その一部データを速報として紹介し、2010年1月末に最終報告をまとめる。さらに今後、継続的に実施し、人づくりの実態の推移を追っていく予定である。
1. 「日本的雇用慣行を重視」している人づくり価値観
人づくりにおける各企業が重視している価値観(方針)20項目を、相対的な価値観と対比して尋ねた。8割以上の企業が重視・強化している価値観は、「正社員雇用強化」「終身雇用重視」「新卒採用重視」であった。相対的な項目ごとにみると「正社員雇用強化86.5%」対「非正規社員雇用強化13.5%」、「終身雇用重視84.4%」対「人材流動性重視15.6%」、「新卒採用重視81.2%」対「中途採用重視18.8%」であった(5p、図表2)。
バブル崩壊後のガバナンス体制強化や成果主義人事制度改革などを経て、日本的雇用慣行の変化が予想されたが、今回の調査では重視すべき価値観として高い支持を得た。
※以下URL図表2をご覧ください。
http://www.jma.or.jp/news_cms/upload/release/release20091208_f00079.pdf
2. 3割弱の企業が 「人づくり施策が業績向上に貢献」
1,000社に対して人づくり施策と業績向上との関連性を自己評価してもらい、人づくり施策が業績貢献に「狙い通り」「まあ狙い通り」と回答した成功企業は27.5%あった。業績向上には貢献していないものの、業績向上につながるプロセス領域(CS向上、企業体質強化、企業理念浸透、ブランド向上、働く意欲向上)では狙い通りという途上企業は35.3%。人づくり施策が業績面でもプロセス領域でも狙い通りではない低迷企業は37.2%となった(6p、図表3)。
成功企業と何らかの形で成果を出している途上企業を加えた約6割強(62.8%)が、人づくり施策の重要性を認識し、業績向上にも寄与していると考えている。
※以下URL図表3をご覧ください。
http://www.jma.or.jp/news_cms/upload/release/release20091208_f00079.pdf
3.「評価・処遇」「人材教育」施策の成否が人づくりのカギ
人づくり総合成果(『成功』『途上』『低迷』の3区分)に何が影響しているか、人づくりの4コア機能「採用・アウトフロー」「異動・配置」「評価・処遇」「人材教育」の各施策の達成度との関係性を見たところ、図表4(6p)に示すとおり、特に結びつきが強いのは「評価・処遇」38%、「人材教育」37%であることが確認された。
評価・処遇、人材教育の施策が適切に導入され、かつ効果的に運用されれば、人づくり成果全体(企業体質強化やCS向上、従業員のやる気の向上を経て、業績向上に寄与)へと繋がっていくことが推量される。
※以下URL図表4をご覧ください。
http://www.jma.or.jp/news_cms/upload/release/release20091208_f00079.pdf
4. 成功企業と低迷企業に「人づくり価値観」に大きな違い
人づくり成功企業のうち50%以上が重視し、低迷企業と10ポイント以上の差(開き)があった価値観(方針)は図表5(7p)の通り。「信賞必罰:曖昧でなく明確」(成功企業57.9%>低迷企業32.8%、25.1ポイント差)、「教育予算:経営環境と関係なく一定予算確保」(成功62.8%>低迷47.5%、15.3ポイント差)、「教育スタンス:個よりチームを重視」(成功80.5%>低迷66.5%、14.0ポイント差)、「人事施策のオリジナリティ:社外動向より自社価値観を重視」(成功79.0%>低迷66.4%、12.6ポイント差)、「評価スタンス:減点主義より加点主義」(成功79.3%>低迷67.3%、12.0ポイント差)の5項目であった。
人づくり成功企業は自社流を大事にし、加点主義のもとで信賞必罰を明確にし、環境と関係なく教育に投資している。これらは「成果に応じた処遇としての成果主義」が、「成果(業績)を生み出せる人づくり」へと進化する上で必要な具体的指針を示していると見ることができよう。
※以下URL図表5をご覧ください。
http://www.jma.or.jp/news_cms/upload/release/release20091208_f00079.pdf
5. 人づくり施策の達成度は全体に低調
人づくり施策ごとの達成度を37項目について調査した。“狙い通り”と“まあ狙い通り”の合計が60%を超えたのは「新卒採用(計画通りの量や質)75.3%」のみであった。 逆に “あまり狙い通りでない”と“狙い通りでない”の合計が50%を超えたのは「従業員の年齢構成バランス」であった(8〜9p、図表6〜9)。
また、成功企業と低迷企業の間で「導入している施策」に顕著な差異は認められないが、「施策や仕組みの機能状況」には全体的に大きな差が見られ、前記3の人づくり成功に重要な「評価・処遇」「人材教育」でも同様の傾向を示している(10p、図表10、11)。
人づくりの成功には、施策や仕組みを導入することより、それら一つひとつをいかに機能させるか、が重要であることが読み取れる。また、少子高齢化、バブル期の採用、バブル崩壊後の採用抑制の影響による年齢構成バランスの悪さが改めて浮き彫りになった。
※以下URL図表6〜9、図表10、11をご覧ください。
http://www.jma.or.jp/news_cms/upload/release/release20091208_f00079.pdf
6. 人づくり指標の重要性は認識するも測定は不十分
人づくりに関する指標(KPI:Key Performance Indicators)を55項目(その他項目除く)取り上げ、使用の有無と重要性認識を尋ねた。1,000社の使用数は「平均で12指標」。使用率が50%を超えたのは「長時間残業該当者数68.0%」「必要採用人員確保率52.8%」「正社員平均年齢51.8%」であった(11p、図表12)。
測定が重要だと思う割には使用されていないKPI(重要割合と使用割合の差が20%以上)は、「ジョブマッチング率」(ポイント差:25.6% 重要と思う37.3%⇔使用11.7%)、「従業員“ワークライフバランス”満足度」(ポイント差:23.8% 重要と思う36.4%⇔使用12.6%)で、以下「従業員総合満足度(ポイント差18.6%)」「従業員人材育成満足度(ポイント差17.6%)」「能力発揮レベル(ポイント差16.8%)」と続く(図表12)。
“管理している指標はない”という回答は「配置・異動36.7%」、「人づくり全般27.0%」、「人材教育21.4%」が高い結果となった(図表12)。
人づくり指標は、データとして取りやすいものを使用している段階と言える。日本能率協会グループは、今後各社の協力を得て、指標ごとの水準データと活用状況の情報蓄積を進め、人づくりの推進・成功のために重要な指標と測定方法の研究を進めていきたいと考えている。
※以下URL図表12をご覧ください。
http://www.jma.or.jp/news_cms/upload/release/release20091208_f00079.pdf
【 調査概要 】
調査時期: 2009年9月〜11月
調査対象: 上場企業及び未上場主力企業の人事教育責任者
調査方法: 調査票による記名回答方式(※任意)で実施
【配布】 郵送配布および訪問配布の併用
【回収】 郵送回収
回答数: 回収数 1,000社/配布数 8,695社 (回収率 11.5%)
◆ 本リリースの詳細はこちらをご覧下さい。
社団法人日本能率協会 http://www.jma.or.jp/ /同社プレスリリースより抜粋・12月17日