国内生成AIの利用実態に関する法人アンケート調査を実施(2025年)
生成AIの企業導入が加速、2023年調査との比較では1年で15.9ポイント増の25.8%に
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内生成AIの利用実態に関する法人アンケート調査を実施し、今後の事業展開と展望について分析、考察した。ここでは現行の生成AI活用状況について取り上げる。
1.調査結果概要
2022年以降、相次いでリリースされた生成AIのサービスは日本国内でも注目され、昨今では企業でも導入される傾向にある。本調査では2024年6月~8月に国内民間企業(プロセス製造業、加工組立製造業、サービス業、流通業、金融業)453社を対象に生成AIの利用実態に関する法人アンケート調査を実施した。生成AIの活用状況について(回答した449社における単数回答)、「全社的に活用している」が4.0%、「一部の部署で活用している」が21.8%という結果であった。
2023年6月~8月に国内民間企業(同)538社を対象に実施した法人アンケートでは「全社的に活用している」が1.3%、「一部の部署で活用している」が8.6%であり、合計で9.9%の企業が生成AIを活用しているという結果であった。2024年の調査結果について、2023年調査と比較すると「全社的に活用している」が2.7ポイント増加、「一部の部署で活用している」が13.2ポイント増加している。僅か1年の間に合計で15.9ポイント増加し、2024年調査では25.8%もの企業(「全社的に活用している(4%)」と「一部の部署で活用している(21.8%)」合計)が利用を開始しているという結果であった。本調査から、生成AIは企業で浸透し始めている技術であることが窺える。
2.注目トピック
生成AI導入企業の半数超が効果を実感するも、多くが期待未満、活用拡大には専門性と効果測定の仕組みが課題
生成AIの利用実態について回答した449社のうち、生成AIを全社的に、あるいは一部部署で活用しているとする115社における生成AIの導入効果について(単数回答)、「期待を大きく超える効果があった」と回答したのはわずか0.9%であった。「おおむね想定通りの効果であった」は18.3%、「期待値に至っていないが一定の効果はあった」は35.7%となっており、効果を実感した企業は54.9%にのぼる。一方で、「期待した効果はまだ得られていない」「効果を測定していない」とする回答も多く、導入効果の実感にばらつきがあることが示された。
背景には、ChatGPTのような汎用型のサービスが主流となっている現状がある。これらのサービスは幅広い質問に対応できる一方で、企業固有の業務に関する対応が難しく、活用範囲が限定的になりやすい。専門的な活用を実現するには、自社データを用いた調整や、特定領域に特化した設計が必要だが、導入には技術的なノウハウや追加コストが伴う。
また、生成AIの導入効果に対する評価が主観に依存している点も課題である。業務効率化といった目的では成果を数値で示すのが難しい。企業が継続して生成AIへの投資を実施していくためには効果を十分に示せることが求められる。今後は定量的な指標に基づく効果検証の仕組みが、生成AIの本格的な定着と普及に向けた重要な要素となると考える。
調査要綱
1.調査期間: 2024年11月~2025年2月
2.調査対象: 生成AI関連事業者、民間企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail等によるヒアリング調査、法人アンケート調査、ならびに文献調査併用
<国内生成AIの利用実態に関する法人アンケート調査とは>
本調査では2024年6月~8月に国内民間企業(プロセス製造業、加工組立製造業、サービス業、流通業、金融業)453社を対象に法人アンケート調査を実施し、生成AIサービスの利用実態を踏まえ、今後の事業展開や展望について分析、考察した。ここでは現行の生成AI活用状況について取り上げる。
なお、本調査における生成AIとは、生成AIを学習したデータから様々なコンテンツを生成できるAIと定義する。生成AIには生成AIの開発や生成AIを活用したサービス、生成AIを組み込んだソリューションが含まれる。
<市場に含まれる商品・サービス>
生成AI導入に係るコンサルティングサービス、生成AIに関する教育サービス、生成AIの導入支援、基盤モデル/LLMの開発、生成AIの組込み、生成AIが組み込まれたソリューション、提供した生成AIのソリューションの運用保守 、生成AIを活用するための環境提供、生成AIプラットフォーム提供
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社矢野経済研究所/4月18日発表・同社プレスリリースより転載)