【中堅社員の意識調査(勤続・離職意向別編)】成長実感の経験が多い人ほど「この会社で働き続けたい」
累計13,000社420万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社(所在地:東京都千代田区 代表取締役社長:眞﨑大輔)および「人と組織の未来創り🄬」に関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所🄬は、2024年12月に社会人5年目以上の役職がついていない中堅社員* 800人に対し意識調査を行いました。本リリースでは、中堅社員の「勤続・離職意向」に関する調査・分析した結果を公表いたします。
* 本リリースでは社会人5年目以降35歳未満の役職がついていない社員を指し、「ミドルキャリア」とも記載
〈背景〉
近年「びっくり退職」という言葉を聞くようになりました。従業員が予告や明確な兆候なしに突然退職をすることを指し、特に結婚・出産等によりキャリアを見直す機会の多い30代前後の中堅社員に多く見られるといわれています。企業にとっては業務の引継ぎや残されたメンバーの業務負荷の調整など混乱を招くだけでなく、事業の中核を担う中堅社員の喪失は経営課題につながりかねません。多くの企業が人手不足の課題を抱える中、中堅社員が定着し、エンゲージメントが高い状態で勤続してもらうために、どのような手立てを講じることができるでしょうか。
今回はミドルキャリアの勤続・離職に対する考え方を成長実感や働く環境などの切り口からレポートします。
調査結果の概要
- 「今の会社で働き続けたい」ミドルキャリアは55.6%と、半数以上
- 今の会社で働き続けたい理由、「人間関係が良好」「仕事内容に満足」が上位に
- 今の会社で働き続けたくない理由、「給与等への不満」がトップに。次に「仕事内容への不満」「この会社で成長できない」が続く
- 業務で成長を感じる機会がよくあるほど「今の会社で働き続けたい」
- 自身の成長に役に立った会社の良いところ、勤続意向の高い人は「雰囲気・文化」「上司からのサポート」が高い結果に
<考察>ミドルキャリアの離職防止のポイントを解説
調査結果の詳細
1. 「今の会社で働き続けたい」ミドルキャリアは55.6%と、半数以上
まず初めに、社会人5年目以上の役職がついていない中堅社員(以下、「ミドルキャリアと記載」)へ、現在の会社で働き続けたいと感じているかを質問しました。
現在の会社で働き続けたいかという質問に対して、働き続けたいと「感じる」が14.6%、「どちらかといえば感じる」が41.0%、「どちらかといえば感じない」が28.8%、「感じない」が15.6%でした。
本リリースでは、この会社で働き続けたいと「感じる」「どちらかといえば感じる」と回答したミドルキャリアを『勤続意向者』、「どちらかといえば感じない」「感じない」と回答したミドルキャリアを『離職意向者』として分類し、分析していきます。
2. 今の会社で働き続けたい理由、「人間関係が良好」「仕事内容に満足」が上位に
『勤続意向者』に対して、今の会社で働き続けたい理由は何か質問しました。
結果、「人間関係が良好だから」と回答した人が最も多く、37.5%となりました。次に、「仕事内容に満足しているから」が36.4%、「働き方に満足しているから」が25.8%となりました。
一方、回答割合が低かった項目は、「組織の文化・風土に満足しているから」(6.5%)や「叶えたい目標が実現できるから」(7.6%)でした。
3. 今の会社で働き続けたい理由、社会人5年目は「業界への将来性」が高く、社会人8年目までは「仕事内容」も増加傾向に。社会人8年目以降は「働き方への満足」が高まる
『勤続意向者』が今の会社で働き続けたい理由は、年次別に違いがあるのでしょうか。
年次共通して高い割合になった項目は「人間関係が良好だから」となり、全年次で3割以上が回答しました。一方、各年次共通して低い割合になった項目は「組織の文化・風土に満足しているから」「叶えたい目標が実現できるから」「自身への評価に満足しているから」となりました。
年次によって特徴が現れた箇所を見ていくと、社会人5年目では、他年次に比べて「業界の将来性に期待しているから」「会社の理念(ビジョン)に共感しているから」が高くなりました。社会人6年目では「働き方に満足しているから」が高くなりました。さらに、社会人5年目から社会人8年目までは「仕事内容に満足しているから」が増加傾向にありました。
社会人8年目以降になると、「働き方に満足しているから」が高まる傾向にあり、社会人11年目以降が最大の結果となりました。
4. 今の会社で働き続けたくない理由、「給与等への不満」がトップに。次に「仕事内容への不満」「この会社で成長できない」が続く
次に、『離職意向者』に対して、今の会社で働き続けたくない理由を質問しました。
結果、「給与等に不満があるから」と回答した割合が最も高く、39.4%となりました。次に、「仕事内容に不満があるから」が23.4%、「この会社で成長できないと感じるから」が21.1%となりました。
一方、割合が低かった項目は、「複数の会社でキャリアアップしたいから」(5.1%)、「他に叶えたい目標があるから」(6.2%)が、「自身への評価に不満があるから」(10.1%)でした。
5. 今の会社で働き続けたくない理由、「給与等への不満」は全年次共通で最大に。「この会社で成長できない」は、比較的若い年次が回答する結果に
『離職意向者』が今の会社で働き続けたくない理由を年次別に見ていきましょう。
全体を通じ、「給与等に不満があるから」が全年次3割を超え、共通して高くなりました。また、「仕事内容に不満があるから」と回答した割合も、全年次共通して、約2割前後が回答する結果となりました。
また、「この会社で成長できないと感じるから」と回答した割合は、社会人8年目が31.9%、社会人5年目が28.3%、社会人6年目が20.9%となり、比較的若い年次において回答割合が高くなる傾向が見られました。
6. 業務で成長を感じる機会がよくあるほど「今の会社で働き続けたい」
ここからは、「成長実感」別に、勤続・離職意向に違いがあるかを見ていきましょう。
結果、業務で成長を感じる機会(縦軸)が「とてもよくある」と回答した人のうち、80.5%が勤続意向者であることがわかりました。一方、業務で成長を感じる機会が「全くない」と回答した人のうち、81.3%が離職意向者であることがわかりました。成長実感と勤続意向に相関関係があると言えるでしょう。
7. 自身の成長に役に立った会社の良いところ、勤続意向者は「雰囲気・文化」「上司からのサポート」が高い結果に
最後に「自分の成長に役に立ったと感じる会社の良いところ」について、勤続・離職意向に違いがあるか調査したところ、勤続意向者は「職場の雰囲気・文化」「上司からのサポート」「配属先の仕事内容」「先輩からのサポート」「OJT制度」「人事評価制度」「目標管理制度」など、多くの項目で離職意向者よりも高い割合となりました。一方、離職意向者、「同僚からの刺激」「表彰制度」「従業員意識調査」「ジョブローテーション」が高い割合となったものの、全体を通じて勤続意向者よりも低い項目が目立ちました。
まとめ
本調査では、ミドルキャリアの『勤続意向者』と『離職意向者』について調査を行いました。
『勤続意向者』が「この会社で働き続けたい」と考える理由は、「人間関係の良好さ」が最も高く、次に「仕事内容への満足」が続く結果となりました。年次別に比較すると、社会人5年目は「業界への将来性」が高く、社会人5年目から社会人8年目までは「仕事内容への満足」も高まる傾向にありました。また、社会人8年目以降は、「働き方への満足」が高まったことより、ミドルキャリアの後半はワークライフバランスが実現できる企業を求める傾向にあることが推察できるでしょう。
一方、『離職意向者』が「この会社で働き続けたくない」と考える理由は、「給与への不満」が年次共通して高くなりました。次に「仕事内容への不満」、「この会社で成長できない」が続きました。年次別に比較すると、「この会社で成長できない」の項目が、比較的若い年次において、回答割合が高い傾向にありました。
さらに、「成長実感」について勤続・離職意向で比較したところ、業務で成長を感じる機会がよくあるミドルキャリアは「今の会社で働き続けたい」と回答する割合が高く、「成長実感」と「勤続意向」に相関関係があることが明らかとなりました。また、勤続意向者の成長に役に立った会社の良いところとして、「職場の雰囲気・文化」「上司からのサポート」が上位に挙がったことも踏まえると、「人間関係が良好かつ、心理的安全性の高い環境下で、成長を感じながら働いていきたい」というミドルキャリアの想いが垣間見える結果となりました。
【考察】〈ミドルキャリアの離職防止のポイント〉
30歳前後の時期は、会社や業務の全体像が見え、プライベートでは結婚・子育てなどの変化もあったり、今後のキャリアについて立ち止まって考える機会が多くなります。他社で働く同世代の話を聞き、「隣の芝生が青く見える」こともあるでしょう。企業にとっては、現場で活躍する中堅社員の離職は大きな痛手となります。
本調査では、業務で成長を感じる機会がよくある中堅社員は勤続意欲が高いこと、また勤続意向のある中堅社員は、人間関係の良好な職場で働いていることが最大の要因であることが明らかになりました。
本調査結果を踏まえ、中堅社員の離職防止策を検討する際、以下2点を点検するとよいでしょう。
① 中堅社員が成長する職場の雰囲気・文化になっているか
② 中堅社員が業務を通じて成長実感を得ているか
■中堅社員が成長する職場の雰囲気・文化の作り方
中堅社員は若手社員とは異なり、経験を積んでいるため、新たな知識・スキルを身につけなくても一定の仕事ができる状態にあります。また、後輩が増え、先輩としてのプライドも生まれるため、成長につながるストレッチな(本人の現在の力量より難易度の高い)仕事への挑戦を避け、成長が止まってしまう状態になることがあります。一方、これまでの経験を踏まえ、新たな領域や苦手な領域へと踏み込み、成長を続ける中堅社員もいます。
中堅社員個人へのサポートも重要ですが、加えて、中堅社員がストレッチな仕事へ挑戦できる「心理的安全性」の高い職場になっていることが重要です。例えば、今までやったことがない新しい業務に挑戦すると、わからないことを先輩や上司に質問することも多くなるでしょう。しかし質問した時に、「こんなことも知らないのか」といった反応が多い職場であれば、自分も同じように言われると推測し、不安になるでしょう。あるいは失敗をすると「こんなこともできないのか」と非難される環境では、失敗を恐れて挑戦を避けるようになります。
心理的安全性を高めるために、まずはオープンなコミュニケーションを促進することが重要です。社員が自由に意見を述べたり質問したりできる環境を整えることで、失敗を恐れずに新しい挑戦に取り組む意欲が高まります。また、上司はフィードバックを建設的に行い、失敗を学びの機会と捉える姿勢を示すことが求められます。さらに、チーム内での信頼関係を築くために、定期的なミーティングやランチ会などを開催し、社員同士の交流を深めることも効果的です。
(1)業種
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(ALL DIFFERENT株式会社/3月28日発表・同社プレスリリースより転載)