『日米欧CEO報酬比較』2024年調査結果を発表
2024年8月6日(火) -- 世界をリードするアドバイザリー、ブローキング、ソリューションのグローバルカンパニーであるWTW(NASDAQ:WTW)は、日米英独仏の5カ国における売上高等1兆円以上企業のCEO報酬について、2023年度にかかる2024年6月末までの開示情報を用いて調査を実施しました。
《 日米欧CEO報酬比較(2024年調査結果) 》
国名/基本報酬/年次インセンティブ/長期インセンティブ
●米国:183百万円(9%)/371百万円(19%)/1,437百万円(72%)/合計:19.9億円(+5.7%)
●英国:191百万円(23%)/284百万円(35%)/345百万円(42%)/合計:8.2億円(-2.2%)
●ドイツ:228百万円(26%)/306百万円(35%)/338百万円(39%)/合計:8.7億円(+4.3%)
●フランス:186百万円(23%)/283百万円(34%)/353百万円(43%)/合計:8.2億円(+1.6%
●日本:95百万円(34%)/99百万円(36%)/82百万円(30%)/合計:2.8億円(+2.2%)
*中央値ベース
【参考】日米欧ROEの比較(中央値ベース)
2024年調査ROE
米国 16.64%
欧州平均11.35%
英国 11.63%
ドイツ 9.51%
フランス12.90%
日本 9.85%
(中央値ベース)
【出 所(2024年調査について)】
2023年度にかかる開示資料よりWTWが作成。なお、調査対象は以下のとおり:
米 国:Fortune 500のうち売上高等1兆円以上の企業389社の中央値
英 国:FTSE 100のうち売上高等1兆円以上の企業51社の中央値
ドイツ:DAX構成銘柄のうち売上高等1兆円以上の企業34社の中央値
フランス:CAC 40のうち売上高等1兆円以上の企業35社の中央値
日 本:時価総額上位100社のうち売上高等1兆円以上の企業の82社の連結報酬等の中央値
※ 米英独仏のデータについては、開示情報をもとにWTWの調査部門(Global Executive Compensation Analysis Team, GECAT)が分析。各国のデータサンプルにつき、在籍期間等により年額が得られないデータサンプルは異常値として集計上除外している
※ 括弧内は2023年度調査結果からの増減率(現地通貨ベース)
※ 参考1におけるROEについては、S&P Capital IQのデータを基にWTWにて作成
※ 参考2については、各年度における現地通貨ベースの額を円換算している
※ 参考3における報酬構成比率イメージを表すパイチャートは、分析対象企業における「基本報酬に対する年次インセンティブの割合」、「基本報酬に対する長期インセンティブの割合」の中央値/75%ile値/90%ile値を用いて算出している
※ 円換算レートは2023年平均TTM(1ドル=140.56円、1ポンド=174.86円、1ユーロ=152.00円)
《 コメント 》
分析所見
CEO報酬比較(中央値ベース)
- 英国は報酬減(現地通貨ベース)。各報酬項目での微小な減少が総報酬に影響。
- 米国・ドイツ・フランスは報酬増(現地通貨ベース)。米国は各報酬項目、ドイツは基本報酬と長期インセンティブ、フランスは長期インセンティブの増加が影響。
- 日本は昨年比で2.2%程度の報酬増。変動報酬は総報酬の2/3を占める。
- ROE(中央値ベース)については、米国や欧州平均の値と比べて日本の値は相対的に低い状況。
WTW
経営者報酬・ボードアドバイザリープラクティス
コンサルタント ブラウン ジョン
今年のCEO調査結果では、中央値で見ると総報酬水準が2.7億円から2.2%増の2.8億円に達した。一方で、欧米企業との差は、特に変動報酬の部分で依然として大きい。資本収益性の面でも、報酬水準の高低と似た傾向が見られ、ROE(自己資本利益率)の中央値は米国が最も高く、次いで欧州(平均)、日本の順となっており、各国における報酬水準と業績の間に関連性が見られる。なお、欧米だけを見た場合でも、特に長期インセンティブを重視する米国企業の報酬水準が高い。変動報酬を重視することで、企業価値向上と連動した報酬獲得の機会が増え、これが米国企業における価値創造を後押ししているとも考えられる。
日本企業においても、総報酬の中央値(2.8億円)では基本報酬、年次インセンティブ、長期インセンティブの割合がほぼ1:1:1だが、総報酬上位10%(7.6億円)の企業では、この割合がおよそ1:2:4となっている。つまり、業績に連動する変動報酬を重視する企業ほど報酬が高く、国内の大手企業の中でも報酬水準に顕著な差が出始めている。
業績と報酬水準に関連があるとすれば、企業価値が低迷しているとされる日本企業でも、変動報酬の割合を拡充することにより報酬獲得の機会を増やし、価値創造能力の向上を目指すことが考えられる。このような報酬の仕組みは、長期的な価値創造への取り組みを外部に示せるほか、経営層の意識改革や、グローバル人材の獲得にもつながる可能性がある。
ただし、報酬を増やすには社内外の関係者の理解が必要だ。欧米並みの報酬水準を目指す場合、それに見合う業績の達成とガバナンスの整備が求められる。具体的には、高い業績目標の設定、不正があった場合の報酬返還制度の導入、経営者による自社株の長期保有を促す仕組み、報酬委員会の適切な運営などが、変動報酬を増加していく際の前提条件となるだろう。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(タワーズワトソン株式会社 / 8月6日発表・同社プレスリリースより転載)