「働く人の本音調査2024」第1弾(お金・機会・人間関係)
企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、従業員規模が50名以上の企業に勤める25歳~59歳の正社員8,376名に対し、「働く人の本音調査2024」を実施し、その分析結果第1弾を公開しました。
本調査は、働く人たちがマネジメントについてどのような希望を持ち、マネジメントの実態をどのように捉えているのか広く質問したものです。第1弾の今回は、働くうえでの「お金・機会・人間関係」にまつわる分析結果をまとめています。
【今回の調査にあたり】
産業構造の変化や、少子高齢化、個人のキャリアに対する意識の変化など、企業の経営環境が大きく変わってきている昨今、変化が激しい時代に企業価値を持続的に向上させるのは人材であるという考えから、「人的資本経営」が注目されています。当社は、これまで60年以上に渡って人々の内面(性格、志向、価値観など)を測定してきた技術を活かし、人材、つまり働く人々の意識・特性を多角的に捉えるプロジェクトを昨年発足しました。「働く人の本音調査2024」は、プロジェクト発足以降2回目の調査として実施したものです。
【エグゼクティブサマリ】
TOPIC1:現在の年収に対する意識
・50代でも年収に満足している人は3割未満
TOPIC2: 人事マネジメントに対する希望と実態の乖離
・【希望】人事評価は機会よりも給料に反映してほしい人が75.0%と多数派
・【実態】人事評価において実際に機会よりも給料に反映されている割合は約半数に留まる
・希望と実態に乖離がある人は、そうでない人と比べてワーク・エンゲージメントが低い傾向
TOPIC3: 人間関係とワーク・エンゲージメントの関係性
・人材マネジメントに対する希望と実態が合致しているかということ以上に、人間関係がワーク・エンゲージメントに影響している可能性がある
1.調査のポイント
【TOPIC1:現在の年収に対する意識】
●年収に満足している人はわずか27.2%、一方で満足していない割合は45.2%も
仕事や会社に対する考えの中で、今の年収にある程度満足している人(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人)が全体の3割に満たない27.2%であることが明らかになりました。
一方で、満足していない人(「あてはまらない」「どちらかといえばあてはまらない」と回答した人)は45.2%にも及びます。
●50代でも年収に満足している人は3割未満
年収が比較的高いと考えられる50代であっても、現在の年収に満足している人はわずか29.2%という結果に。さらに、『働く人の本音調査2024』ではほかにも様々な質問を投げかけましたが、年収の満足度は肯定的な回答が全設問の中でも最も少ない結果となりました。
【TOPIC2:人事マネジメントに対する希望と実態の乖離】
個人が企業から受け取る報酬は給料のほかにも、希望する仕事を任せてもらえたり、希望する部署へ異動させてもらえたりといった「仕事の機会」もあると言えます。
そこで続いては、人事評価において給料と仕事の機会のどちらを重視する人が多いのか、また実態として人事評価が給料と機会のどちらに反映されている場合が多いのかを明らかにしました。
●【希望】人事評価は機会よりも給料に反映してほしい人が75.0%と多数派
「仕事や働き方に関する考えについて、あなたは『A.給料(月給や賞与の増減)』と『B.仕事の機会(希望する仕事が任されたり、異動希望が叶うこと)』のどちらに人事評価をより反映してほしいと思うか」という設問に対する回答結果です。
この結果を見ると、75.0%もの人(「A」「どちらかといえばA」と回答した人)が「人事評価は、機会よりも給料に反映してほしい」と希望していることが分かります。
●【実態】人事評価において実際に給料に反映されている割合は約半数に留まる
「あなたの会社では、人事評価がより反映されているのは、『A.給料(月給や賞与の増減)』と『B.仕事の機会(希望する仕事が任されたり、異動希望が叶うこと)』のどちらか」という設問に対する回答結果です。
実態として人事評価が給料に反映されていると回答した人(「A」「どちらかといえばA」と回答した人)は、全体の51.3%に留まり、図表3の回答結果も踏まえると、人事評価に対する希望と実態に乖離がある人が少なからずいることがわかります。
●希望と実態に乖離がある人は、そうでない人と比べてワーク・エンゲージメントが低い傾向
人材マネジメントの希望と実態に関して、それらが合致している群と乖離している群間でワーク・エンゲージメントスコアの平均値の違いを示したデータです。
給料と仕事の機会だけでなく、他の質問項目においても、希望と実態が合致している人たちはワーク・エンゲージメントが統計的に有意に高いことがわかります。またそれに伴い、人事評価を機会よりも給料に反映する会社の方が、ワーク・エンゲージメントが高い従業員の割合が大きいと考えられます。
図表6では、回答者一人ひとりの回答を分析し、10種類のモチベーション・リソースのうちの上位3位までを割り出し、集計したデータです。
データを分析すると、金銭(38.6%)よりも、安定(46.4%)や統率(41.9%)や注目(40.3%)の方が高い数値になっています。つまり、今回の回答者が特別金銭を重視しているわけではなく、金銭以上にこれらの要素でモチベーションを掻き立てられる人が多いと言えます。それにも関わらず、年収に満足している人が3割未満で、人事評価を機会より給料に反映してほしいと望む人が多いということは、回答者の給料に対する不満は根強いものだと考えられます。さらに、今回の回答者がとりたてて金銭を重視している人たちというわけではないことを踏まえると、給料に対する不満は多くの日本のビジネスパーソンが抱えているものと考えられるのではないでしょうか。
【TOPIC3:人間関係とワーク・エンゲージメントの関係性】
加えて、本調査から「人間関係とワーク・エンゲージメントの関係性」も見えてきました。
●人材マネジメントに対する希望と実態が合致しているかということ以上に、人間関係がワーク・エンゲージメントに影響している可能性がある
人間関係に関する項目を肯定した群(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した人)と否定した群(「あてはまらない」「どちらかといえばあてはまらない」と回答した人)のワーク・エンゲージメントスコアの平均値の違いを示したデータです。
この図表から、今の会社に、仕事とは関係のない共通の話題・趣味のことで一緒に盛り上がれる上司・同僚がいる人、キャリアについて何でも相談できる上司・同僚がいる人は、そうでない人よりも、ワーク・エンゲージメントスコアが明確に高いことが読み取れます。
今回の調査では回答者の給料への不満が少なくないことが明らかになりました。ただ給料や機会は人事制度や組織構造に関わるため、改善するのは容易ではないことが考えられます。一方で、それらに対する希望が叶っているかということだけがワーク・エンゲージメントを左右するわけではなく、上司・同僚などの人間関係なども、働く個人の日々の仕事のやりがいや成長・貢献実感に大きく影響するといったことがわかりました。職場の人間関係であれば、経営層や人事の方ではない、現場の管理職やメンバーであっても、主体的に働きかけを行うことができるのではないでしょうか。一人ひとりが、職場の士気を高める行動をとることは十分に可能なのです。
2.調査担当研究員のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
技術開発統括部 研究本部 組織行動研究所 研究員 兼 データ活用推進グループ
大庭りり子
今回は、「働く人の本音調査2024」と題して、働く人はどのような人材マネジメントを求めているのか、そして、それぞれが所属する組織の人材マネジメントの実態はどうなっているのかということを軸に、それらのギャップの程度や、ギャップがどのような影響を及ぼしうるのか、ということを確認しました。
本レポートは、まず「年収」に関する結果をご紹介しています。物価や税負担の上昇が著しい昨今においては、特に満足していない方が多く、人事評価への反映においても、「給料」を重視する声が多数派となりました。「仕事の報酬は仕事」という言葉もありますが、それは衛生要因(職場環境や給与など、仕事の不満足に関わる要因)がある程度満たされていてこそ、感じられることなのかもしれません。
また、人事評価への反映等については、個人が認識している実態も併せて確認し、どのような違いがあるのかを見ていきました。その上で、個人が認識している所属組織の実態を問いました。なお、本レポートにおいては、「『A.給料(月給や賞与の増減)』と『B.仕事の機会(希望する仕事が任されたり、異動希望が叶うこと)』のどちらのほうに、人事評価をより反映してほしいと思いますか」という設問を取り上げていますが、図表5のとおり、さまざまな問いかけをしています。その他の設問の結果に興味を持ってくださった方は、是非オープンデータをお問い合わせいただき、個別にご確認ください。
次に、ギャップが及ぼす影響のひとつとして、図表5に示したすべての項目で、希望と実態が合致している人たちは、それらが乖離している人たちと比べてワーク・エンゲージメントが高い傾向にあることが確認できました。こういった人材マネジメントに関する事項が、働く一人ひとりが前向きに仕事に取り組めるかどうかということに強く関わっていることを改めて知ることができ、制度設計のお手伝いを行っている当社としては、身の引き締まる思いです。
そして、このような希望と実態のギャップ以上に、上司や同僚との関係性がワーク・エンゲージメントには大きく関わっていると判明したことが、今回の分析を通じて得られたもっとも興味深い示唆でした。制度面よりは個人の意思や努力が反映される領域であるものの、コミュニケーションを歓迎する雰囲気の醸成など、組織からの後押しも肝要です。より仕事に対して前向きな個人が増えることは、いうまでもなく、組織にとっても有益なことでしょう。今回のレポートを通じ、個と組織が互いに尽力できる職場の望ましさを提示できていれば幸いです。
【調査概要】
調査名:働く人の本音調査2024
調査目的:働く人の人材マネジメントに対する希望とその実態、それらとエンゲージメント・意識・特性の関係を明らかにするため
調査対象:従業員規模50名以上の企業で働いている25~59歳の正社員
・大卒もしくは大学院卒
・一部業種を除外、役員以上の役職者を除外
調査方法:インターネット調査
項目数:189問
実施時期:2024年3月19日~29日
有効回答数:スクリーニング調査:10,117名 本調査:8,376名
本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ/ 6月20日発表・同社プレスリリースより転載)