【イマドキ新入社員の仕事に対する意識調査2021】Vol.3
株式会社日本能率協会マネジメントセンター(代表取締役社長:張士洛、東京都中央区、以下JMAM[ジェイマム])は、2020~2021年に入社した新入社員と、新入社員の育成に関わる上司・先輩社員の計2,068名に対し、新入社員の意識と行動、指導者の指導と育成に関するアンケート調査「イマドキ新入社員の仕事に対する意識調査2021」を実施しました。今回は、2021年調査結果からみる「調査結果で見えたイマドキの新入社員・若手社員の成長課題」について一部抜粋してお知らせします。なお、本調査リリースは4回に分けて配信いたします。今回は第3回目となります。
調査結果から、新入社員(Z世代)の特徴やコロナ禍による働き方の変化などの影響で、「入社後の職業キャリアが描けなくなっている(2020年調査より+4.6%)」、「コミュニケーションストレスは上昇傾向(2019年調査より+12.7%)」、「挑戦よりも無理ない範囲で業務に取り組みたい(新入社員の54.4%がYesと回答)」などの実態が明らかになりました。
これは新入社員が成長していくために必要な成長循環サイクル(目的・目標設定→周囲のサポート→実践的な経験→振り返り)が回りづらくなっている状況といえます。この状態が進行することで、成長に必要な3つの「しこう(志向・思考・試行)」の格差やチームで成果を上げる3つの行動原理(Goal Holding、Task Working、Feedbacking)も機能しにくくなり、チーム力の低下を招くことも考えられます。この状況を乗り越えるためにも、成長循環サイクルを回し、成長していくための仕組みづくりが重要といえます。
<調査概要>
調査方法: インターネット調査 調査時期: 2021年6月 調査地域: 全国
有効回答: 2,068名。2020~2021年に入社した新入社員1,020名、新入社員の育成に関わる上司・先輩社員1,048名
(新入社員は、例年比較のため企業規模501名以上の大卒の686名に母数を絞って集計)
調査結果(一部抜粋)
■新入社員(Z世代)の成長支援で起こっている実態
人が自律的に成長していくためは成長循環サイクル(目的・目標設定→周囲のサポート→実践的な経験→振り返り)を回し続けることが重要となります。しかし、本調査結果からテレワーク(在宅勤務)などの普及により、新入社員の「組織社会化(※)」の遅れ、職場での関係性の希薄さや指導のしづらさの増加、そして新入社員(Z世代)の特徴である「挑戦よりも失敗しない傾向」や「ストレス耐性の低下」などの課題が重なり、個人やチームが強くなるために必要なサイクルが回りづらくなっていることがわかりました。
※「組織社会化」とは、新しく組織に加わったメンバーが必要な意識・知識・技術などを獲得し、組織に適応していくプロセスのこと
【キャリア形成のゆらぎ】
今の会社で成長したいという気持ちが高まる一方で、配属後すぐに職業キャリアが描けなくなっている
2021年入社の新入社員は、ここ数年の新入社員と比べても「今の会社の事業に関わるなかで、成長していきたい」という気持ちが高いことがわかりました。一方で、テレワークの普及も影響し1人仕事が増えた影響か、感情処理に関する課題の増加や業務経験を通じたキャリア形成が描けなくなっていることも明らかになりました。
【「働く」への価値観変化】
柔軟な働き方を求める一方で、自分自身の成長は「挑戦よりも、無理ない範囲で取り組む」傾向が上昇
「働き方」に関しては、時間・場所・契約にしばられない、柔軟かつ多様な働き方を求める一方で、自分自身の成長は「挑戦よりも、無理ない範囲で取り組む」傾向が上昇しており(2020年調査より+2.7%)、自分らしさを大切に、無理なく、「働くこと」と適度な距離感を保って成長したい傾向がうかがえます。
【職場での関係性の希薄】
テレワーク(在宅勤務)普及以降、新人・若手社員のコミュニケーションストレスは上昇傾向
本調査では新入社員、指導者側いずれも40%程度が「テレワーク(在宅勤務)中心の勤務」と回答する結果となりました。その影響もあり、コミュニケーションがとりづらいために生じるストレスはコロナ禍以降増加傾向にあります(2019年調査より+12.7%)。上司・先輩への相談のしづらさは減少傾向にあるものの、依然として、半数以上は「相談がしにくい」と回答しており、職場関係性の希薄さを解消していくことは課題といえます。
【指導のしづらさが増加】
テレワーク(在宅勤務)普及以降、新入社員・若手社員(以下新人・若手)の指導はしにくくなり、成長実感も下降傾向
指導者の半数以上がテレワーク(在宅勤務)普及以降、「新人・若手以降の指導はしにくくなった」と回答しています。2020年と比べればその数値は減少しているものの、指導者側の環境適応や新入社員へのケアなど負荷が増していることも影響してか、指導・育成を通じた指導者自身の成長実感が年々減少していること(2019年調査より-4.6%)も特徴といえます。
【挑戦よりも失敗しない傾向の強さ】
「意識」と「行動」のギャップが大きく、自走に少し時間がかかる新入社員が増えている
新入社員の70%以上が「失敗から学ぶことは多いので、恐れずに取り組むことが大切である」と回答する一方で、「失敗したくないので、責任ある大きな仕事は任されたくない」と思っており、この傾向は年々上昇傾向にあります(2019年調査より+8.9%)。この結果は「意識」と「行動」のギャップが大きく、自走に少し時間がかかる新入社員が増えているともいえるため、小さな成功体験を積み重ねながら1歩ずつ成長していく支援や気構えが指導者側に求められているといえます。
【実務経験量や成長速度の低下】
無理ない範囲で業務に取り組み、仕事で行き詰ったときも上司・先輩から働きかけて欲しい
テレワーク(在宅勤務)などの普及により、入社早々に1人仕事を求められている新入社員もいる中で、彼らの成長意欲としては「無理ない範囲」「仕事に行き詰っている状況は上司・先輩が察して話しかけてもらいたい」というスタンスが半数以上であることがわかりました。また働き方改革が進む中、指導者側も「成長につながる仕事であっても、残業をしないことを優先して業務を減らしている(52.2%がYes)」と回答しており、必然的に業務経験を通じて成長をしていく量や速度に変化が生じていることがわかりました。
【ストレス耐性や文章力の低下による「内省力」「回復力(レジリエンス)」などの停滞】
指導者も人事担当者も、新入社員の「打たれ弱さ」などは育成課題と実感している
減少傾向ではあるものの、指導者の59.4%はここ数年の新入社員は「打たれ弱い」と感じています。それを踏まえ、人事部門への期待として高くなっているのは、配属前までに「打たれ強さ」「計画、段取りの仕方」などの強化策の実施です。この傾向は、実際に新入社員の育成を担当している人事・教育担当者へのアンケートでも同様の結果が出ています。
【総括】「しこう(志向・思考・試行)」の格差を広げず、チーム全体で成長循環サイクルを回す
環境変化に柔軟な対応をしていくためにも、これからはビジネスパーソン1人ひとりが日々のプロセスから学びを深め、自律的に成長しながら期待される行動(アウトプット)を実現することが求められます。一方で、コロナ禍において働く場所や時間の自由度が増す中、学生から社会人への移行(トランジション)が進まず、組織適応課題が増していることも事実です。この課題を解決するためにも、3つの「しこう(志向・思考・試行)」とチームの行動原理を高め、自律的な成長循環サイクルを回し続けることが求められているといえます。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社 日本能率協会マネジメントセンター/12月9日発表・同社プレスリリースより転載)