2021年の日本における昇給率は2.2%の見通し
企業に対するコンサルティング業務、保険のブローカー業務、各種ソリューションを提供する業務における世界有数のグローバルカンパニーであるウイリス・タワーズワトソン(NASDAQ:WLTW)が実施した最新の昇給率調査では、新型コロナウイルス感染の広がりによる影響の収束が見通せないなか、2021年の予測昇給率はアジア太平洋地域平均で5.3%、日本は2.2%との結果が明らかになりました。
2020年、新型コロナウイルスの影響によりアジア太平洋地域の企業は昇給予算の下方修正を余儀なくされ、2020年の実績昇給率は各国平均で+5.4%となり(2019年は同+5.6%)、さらに今年2021年の予測昇給率についても、20地域のうち13地域で前回調査から下がる結果となりました。 日本の2021年予測昇給率についても、前回調査の+2.4%から+2.2%に下落しています。
オーストラリア、中国、ニュージーランド、台湾など新型コロナウイルスの影響が比較的抑えられている地域では、パンデミック後の安定回復に向けて、2021年の昇給について慎重ではありつつも楽観的な見通しを持っています。一方、インドの2021年の予測昇給率は、2020年実績の9.0%に対して1.1%減の7.9%と最も大きな低下が見込まれています。
ウイリス・タワーズワトソン の日本のリワード部門統括・シニアディレクター森田純夫は、「新型コロナウイルスは日本の2020年の昇給動向にも影響を及ぼしており、危機対応として昇給の抑制や賃金の減額に踏み切る会社がみられた一方で、全体として平均的な昇給率は2.3%と、前年の2.4%とほぼ同様でした。業界によって事業への影響度が大きく異なり、対応にも差がみられることがこの新型コロナが及ぼす影響の特徴といえます。」と述べています。
今回の調査からは、賃上げの凍結を予定している企業の数は大幅に減少することが見込まれ、2021年に向けて企業が楽観的な見方を持っていることがわかります。昨年、アジア太平洋地域の民間企業の3分の1近く(30%)がコスト削減のために賃上げを凍結しましたが、その比率は今年は13%の企業に減少することが現時点では予想されており、すなわち残る87%の企業が昇給を実施する予定です(2020年の昇給実施企業は70%)。
主要産業のパンデミック後の成長が給与と人材のトレンドを牽引
今回の2021年の昇給予測データには、各業界におけるパンデミックの影響は色濃く反映されているといえます。ただし、中には業績の観点からみてパンデミックの影響を大きく受けていない産業もあります。楽観的な見通しを持っているのは、製薬・医療サービス、ハイテク領域で、これらの業界では今年5%以上の昇給が見込まれています。これらの業界では、2021年のさらなる業績伸長を目指し、引き続き人材の需要は旺盛であることが予想されます。
「新型コロナの影響が広がって以降、多くの企業が事業戦略の見直しに着手しています。なかでも、地域を問わず、デジタルトランスフォーメーションは組織の変革を加速させる上で重要な役割を果たしており、人材需要の動向にも影響を与えています。日本においても、データサイエンス、サイバーセキュリティも含めたリスクマネジメントの分野で報酬水準が高い傾向がみられます。このような領域における人材需要が旺盛であることが背景にあります」と森田は述べています。
2021年の昇給における明確な戦略の設定
COVID-19は、業界だけでなく、国や地域に関わらず、いずれの従業員に報酬の原資を割くべきか、という問いを投げかけました。今回の昇給率調査では、特に新興市場において経営層と製造現場の労働者の給与格差が著しく大きいことが示されています。中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイでは、経営層の給与水準が製造現場の労働者の25倍以上に達している一方、オーストラリア、香港、日本、シンガポール、韓国、台湾などでは15倍以下に留まっています。
「新興国市場では、多くの企業が急成長を遂げており、多くの企業において、その成長を実現する強力なリーダーや経営チームを組成し維持するニーズが強まっています。その結果、企業は経営層のつなぎ止め(リテンション)や報酬に予算を割く傾向があります。一方、日本においては、コーポレートガバナンス・コードの導入以降経営層の報酬体系や報酬水準の見直しについては多くの企業で取組みが講じられた一方で、従業員層の報酬についてはまだその取組みは道半ばといえます。専門スキルによって貢献するいわゆる「高度専門職」のあり方、それを前提としたマネージャーの役割と責任などの再定義もあわせ、組織全体の雇用や仕事のあり方に即した報酬体系の再構築が求められています。ジョブ型人事制度の導入に関する議論もこうした文脈のなかに位置づけられるべきです」と森田は付け加えています。
「2021年は、暗中模索であった2020年に比べると、楽観視はできないものの、企業は各々の予測シナリオのもとで処遇のあり方について着実に検討を進めているようにみえます。いま求められているのは、目先の昇給などの対応のみならず、自社としての中長期的なトータル・リワードのあり方をどのように定義し、従業員に示すかということです。ここで打ち出される自社固有のメッセージが、優秀な人材の確保やそれを通じた中長期的な競争優位性の確率の成否を握るといえます。」
報告書について
昇給率調査レポートは、ウィリス・タワーズワトソンのデータサービス部門が実施している調査の結果レポートです。調査は2020年10月/11月にオンラインで実施され、世界130カ国以上をカバーする18,000セット以上の回答が寄せられました。
本レポートでは、2020年以降の企業の報酬計画を支援する手段として、ウィリス・タワーズワトソンが毎年実施している昇給率調査レポートの一部を要約して掲載しています。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(ウイリス・タワーズワトソン / 2月4日発表・同社プレスリリースより転載)