「自身のデジタル技術が伸ばせないのなら、むしろ転職を望む」従業員の意志が明らかに~『デジタル人材の需要ギャップに関するレポート』:キャップジェミニ・LinkedIn
キャップジェミニは10月26日、世界最大のプロフェッショナルネットワークであるLinkedInと共同で、デジタル人材のギャップに関するグローバルレポートを発表しました。このレポートでは、特定のデジタルスキルをもつ人材の需要と供給、複数の業界ならびに国・地域におけるデジタルロールの有用性について分析しています。
このレポート(『The Digital Talent Gap—Are Companies Doing Enough?』)では、従業員が自分のデジタルスキル(*1)を評価する際に感じる懸念や、現在職場内に従業員が使用できるトレーニングリソースが存在しない/不足していることが明らかになりました。
また、レポートのハイライトのひとつとして、従業員の50%近く(デジタル面で優秀な従業員(*2)の60%近く)は、時間とお金を投資して、勤務時間外に自腹で自分のデジタルスキルを磨いているという事実もあきらかになりました。
拡大しつつあるデジタル人材ギャップ
調査対象企業の2社に1社が 「デジタルギャップは広がりつつある」と認識しています。「デジタル人材のギャップは企業のデジタルトランスフォーメーションプログラムを阻害し、デジタル人材の不足は、企業に競争優位性を失なわせる」に対して、半数以上(54%)の企業が同意を示しています。
人材ギャップが広がってしまったにもかかわらず、デジタル人材を育てるためのトレーニングの予算は、調査対象企業の半分以上(52%)で横ばいまたは削減傾向を示しています。また、調査対象企業の50%が「デジタル人材のギャップについて話題にし続けてはいるが、ギャップを埋めることはあまりしていない」と答えました。
スキルのありきたり化(余剰)・無用化関する懸念が離職を促す?
現在、従業員の多くが自分のスキルについて、「すでに余剰・無用」あるいは「近い将来余剰・無用となる」と懸念しています。全体では、従業員の29%が自分のスキルセットは「すでに余剰・無用」または「1~2年以内に余剰・無用となる」、また1/3以上(38%)が「4~5年以内に余剰・無用となる」と答えています。特にY世代とZ世代では従業員(*3)のほぼ半数(47%)が「現在の自分のスキルセットは、この先4~5年で余剰・無用となるだろう」と感じています。
業界別に見ると、今後4~5年でスキルセットが余剰・無用となると答えた従業員が最も多かったのは、自動車業界(48%)、続いて銀行(42%)、通信、保険(いずれも39%)という結果になりました。
また従業員は、企業のトレーニングプログラムについて、あまり効果的ではないと感じています。今日のデジタル人材の半数以上が「役に立たない」または「出席する時間がない」と答え、また半数近く(45%)が「無益で退屈」と表現しています。
スキルの余剰・無用化に関する懸念、そして企業によるスキルアップの取り組みに対する信頼の欠如が、離職の潜在的な引き金となっています。デジタル能力・スキルのある従業員の半数以上(55%)は、「現在の職場では自分のデジタルスキルの成長が見込めないと感じたら、別の企業に移る意思がある」と答え、また半数近く(47%)が「より優れたデジタルスキルの育成を提供する企業に魅力を感じる」と答えています。しかしながら企業は、雇用する側には「スキルアップした従業員の離職」という懸念事項もあることを指摘しています。雇用主のほぼ半数(51%)が「従業員はトレーニングを受けた後に退職する」と考えており、また半数(50%)が「自社のデジタルスキルのトレーニングセッションへの出席者が少ない」と答えています。
キャップジェミニのエグゼクティブリーダーシップ&チェンジのヘッドであるClaudia Crummenerlのコメント:
「企業は、デジタルスキルの向上という非常に重要かつ巨大な課題に直面しています。スキルの余剰・無用化が従業員回答者にとって重要な懸念であるならば、これに対処するために、スキル育成のための明確な道すじを確保することが不可欠です。今後もデジタル人材ギャップは広がり続けます。企業はこれを傍観したままではいられません。企業は、従業員の進化のための一貫したイノベーションとプランニングを常に行っていく必要があります。」
ハードデジタルよりソフトデジタルで顕著な人材ギャップ
今回のレポートでは、ハードデジタルスキル(高度なアナリティクスや自動化、人工知能、サーバーセキュリティなどの分野)を経験した人材への需要が高いことが明らかになりました。しかしながら、ソフトデジタルスキル(顧客中心主義や学習への情熱など)こそが企業の最も求めるものであり、多面的で包括的なデジタルプロフェッショナルの特徴としてますます重要になっています。ソフトデジタルスキルにおける最大のギャップは、曖昧さとコラボレーションにおける心地よさに関するものです。
- 従業員の51%が「自分の会社にはハードデジタルスキルがない」と答えたが、59%は「従業員にソフトデジタルスキルが欠けている」と認識しています。
- デジタル面で秀でた人材の72%が、俊敏性や柔軟性を奨励する、起業家やスタートアップのような文化をもつ企業に就職したいと答えています。
- デジタル人材は、実験や失敗が許されない環境ではうまくいきません。実験の文化がなければ、イノベーションも苦労するでしょう。
必ず求められる、マストハブなデジタルロール
今回レポートでLinkedInのデータを分析した結果、この1年間で平均して最も需要が高かったのは、データサイエンティスト、フルスタック(マルチ)開発者でした。以下に、今後2~3年で最も注目を集めるデジタルロールのトップ10を順番に提示します。
- 情報セキュリティ/プライバシーコンサルタント
- 最高デジタル責任者/最高デジタル情報責任者
- データアーキテクト
- デジタルプロジェクトマネージャー
- データエンジニア
- 最高顧客責任者
- パーソナルWebマネージャー
- 最高IoT(モノのインターネット)責任者
- データサイエンティスト
- 最高アナリティクス責任者/最高データ責任者
管理職専門の人材斡旋企業であるRussell Reynoldsのマネージングディレクター、Tuck Rickards氏のコメント:
「企業は、デジタル人材とは、注目を集めるために優れたオファーを提示する、小規模な人材の集まりであることを認識する必要があります。企業は、一般的な従業員と同じ方法でデジタル人材と関わることはできないかもしれません。彼らは、賢くアプローチしなければなりません。」
<調査方法>
キャップジェミニはLinkedInと協力して、グローバルならびに複数の国および地域内で、特定のデジタルスキルとデジタルロールの需要と供給について分析しました。今回キャップジェミニは、2016年度の売上5億ドル以上、従業員数1,000名以上の大企業で働く従業員753名、ディレクターレベルまたはそれ以上のエグゼクティブ501名に対して調査を行いました。調査実施期間は2017年6月から7月、調査対象はフランス、ドイツ、インド、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、英国および米国の9カ国、対象とした業種・分野は、自動車・部品、銀行、消費財、保険、小売、電気通信、公益事業の7セクターに及びました。
キャップジェミニは、LinkedInのデータをベースに、上記9カ国の7つのセクターにおける特定のデジタルスキルとデジタルロールの需要と供給について分析を行いました。LinkedInは、ある特定のデジタルスキルセットまたはタイトルをもつメンバーがリクルーターに検索された回数を以って需要を測定しました。LinkedInは、最も需要の高いデジタル人材を特定するための「需要指数」を開発しました。この指数は、過去12ヶ月の平均InMails数(すなわち、LinkedInのネットワークを介したリクルーターからの働きかけ)を需要とし、特定のデジタルタイトルまたはデジタルスキルをもつメンバーの数を供給として、その比率を表したものです。
※1:LinkedInは、今回の調査を行うにあたり、「デジタル」を数多くのデジタルハードスキルとデジタルソフトスキルならびにデジタルジョブタイトルを含め、幅広く定義しました。LinkedIn、キャップジェミニの両社は、この定義により、技術イノベーションに関連するアクティビティを「ほぼ」すべて網羅できたと確信しています。
※2: デジタル面で優秀な(digital-talented)従業員とは、少なくとも24のデジタルハードスキルのいずれかひとつと8つのデジタルソフトスキル(調査を含め)の4つに堪能である人物を指します。
※3:Y世代およびZ世代とは、18歳から36歳をさします。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(キャップジェミニ株式会社 https://www.capgemini.com/jp-jp/ /10月31日発表・同社プレスリリースより転載)