精神障害者の職場定着へ、職場の「緩いつながり」と「適切な業務の切り出し」が重要に~就労移行支援事業所「ウイングル」を利用して就職した障害のある方を対象にした調査を実施:LITALICO
「障害のない社会をつくる」というビジョンの下、障害者向け就労支援事業や子どもの可能性を拡げる教育事業を全国展開する株式会社LITALICO(本社:東京都目黒区、代表取締役社長:長谷川敦弥、証券コード:6187)が運営する障害者のための就労移行支援事業所「ウイングル」(2016年8月1日より「LITALICOワークス」に名称変更)は、ウイングルを経て企業・団体等に就職し、現在就労中の方を対象に、2016年4月に「就職者アンケート」を実施いたしました。今回はその中から、2018年の雇用義務化を控え、近年雇用が急増している精神障害者の就労後の職場定着に向けて、職場内で求められていることを把握するため、「精神障害」のある方に対象を絞り、調査結果をまとめましたので、ご報告いたします。
[調査結果サマリー]
■ 現在の職場で、過去に退職を考えたことがあるのは約6割。きっかけは「給与」と「人間関係」が2大要因
■ 「退職を考えたことがある」方が職場内で困っていること
・職場内で配慮が進んでいない「人間関係の問題」
・職場内で配慮が進んでいても課題となる「業務内容」「業務量」
■ 「退職を考えたこと」の有無による差異
・「仕事上相談できる人」の数に違いはほぼないが、「気軽に話ができる人」の有無や人数には差があり、「緩いつながり」が重要と推察される
・仕事が「適切な難易度」と感じる人ほど退職意向が少なく、「簡単すぎ」でも「難しすぎ」でも退職意向が増加傾向に。「適切な業務の切り出し」が重要と推察される
*集計対象者:就労移行支援事業所「ウイングル」を経て企業・団体に就職し、現在就労中の方のうち、「障害種別」で「精神障害」と回答した412名の結果を集計しました。
*調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100にならない場合があります。
[調査結果詳細]
<退職を考えたことが「ある」方と「ない」方の割合・そのきっかけ>
現在の職場でこれまでに退職を考えたことがあるかを尋ねたところ、60.7%(250名)の方が「退職を考えたことがある」と回答していました。
退職を考えるきっかけとしては、「給与が上がらない」「会社の人間関係」が4割を超える回答を集めており、この2点が退職意向に大きな影響を及ぼすことがうかがえます。
※以降の質問では、職場内での定着に向けたポイントを探るため、退職を考えたことが「ある」方と「ない」方に分けて、結果をまとめました。
<職場で困っていることと受けている配慮>
「職場で困っていること」と「職場で受けている配慮」を同じ項目から選択してもらい、退職を考えたことがある方の回答上位順に並べたところ、「困っていること」で1位となった「人間関係の問題への対応」については、「配慮されていること」では21.6%で上位5項目には入らず、人間関係の問題については職場で配慮しきれていない傾向にあることが分かりました。一方、「業務内容の調整」「業務量の調整」は多くの方が「配慮されていること」として回答しているものの、「困っていること」でも上位に挙がっており、業務の内容や量に関しては、配慮を行っていても個別のニーズに対する適切な配慮とはなっていない可能性が示唆されました。
<「人間関係」では、仕事上だけに留まらない緩いつながりが求められている>
「仕事内容について必要な時に質問や確認ができる人」の有無には両者の違いはそれほどありませんでしたが、「気軽に話したり相談できると感じる人」については、退職を考えたことがある方では「いない」という回答が目立ち、その人数にも差がありました。仕事上だけの関係性に留まらない、「気軽に話ができる人がいる」職場環境が必要とされていることがうかがえます。
<「業務内容」では適切な難易度の業務割り振りがポイントに>
業務の難易度について尋ねた質問では、退職を考えたことのない方は「ちょうどいいと感じる」の回答が退職を考えたことがある方を大きく上回りました。また、退職を考えたことがある方では、「難しいと感じる」「簡単と感じる」がともに退職を考えたことのない方を上回っており、適切な難易度の仕事を任せられるかも、職場定着への一つのカギであることがうかがえます。
<参考:人生の満足度と「退職を考えたこと」の有無の関係>
退職を考えたことのない方ほど、現在の人生に「満足している」と回答する傾向が高い一方、退職を考えたことがある方では、人生の満足度が高くない傾向にあり、仕事の充実感と人生の満足度は密接な関係があることが分かりました。
■ 今回の調査結果から
精神障害のある方の企業での雇用が近年急増する一方、ハローワークを通じて就職された精神障害者のうち、半数以上が1年未満に退職してしまうというデータ(※)もあり、職場への定着が新たな課題となっています。
今回の調査では、現在の職場で退職を検討したことが「ある」方と「ない」方に分けて、両者のギャップを抽出することで、精神障害のある方の職場での定着に向けて、ポイントとなる事項を探りました。その結果、人とのつながりに関する項目や業務難易度で、特に退職を検討したことがある方とない方の間で回答内容に開きが出ていることが分かりました。
ウイングルでは、今後も定着支援において、就職された方に対して面談を通じて寄り添いながら、業務量や業務内容、人間関係など多面的な支援のニーズを明らかにして、職場定着に向けた課題解決に取り組んでいきます。また、障害者雇用に不安を抱える企業に対し、今回の調査結果などから見えた職場定着へのポイントをアドバイスするなど、企業側のサポートにもより一層注力し、障害のある方がより満足度の高い就労を実現することを通じて、よりよい人生につながる支援に取り組んでまいります。
※独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「精神障害者の職場定着及び支援の状況に関する研究」(PDF)
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社LITALICO http://litalico.co.jp/ /7月19日発表・同社プレスリリースより転載)