詐欺求人
詐欺求人とは?
「詐欺求人」とは、企業が求人を行う際に、職場の実態と異なる虚偽の好条件を提示して応募者を集め、入社させようとすること。「ブラック求人」とも言われます。2013年頃から、ハローワークや民間の就職サイトを通じた求人において、賃金、就業時間、職種や仕事の内容などの求人条件と事実との食い違いが発覚するケースが急増、社会問題に発展しつつあります。職業安定法は、求人時の労働条件の明示を義務付けていますが、ハローワークや大学などに虚偽の求人を出した企業を直接処罰する規定はありません。
ブラック企業の求人を締め出す新制度も
横行する悪質な虚偽記載には実効乏しく
「ブラック企業」の求人はブロック――厚生労働省は今年3月から、違法な長時間労働や残業代の不払いといった労働基準法違反を繰り返す企業からの求人をハローワークで受理しなかったり、企業に求職者へのより正確な情報開示を求めたりすることで、若者の就職トラブルを防ぐ新制度をスタートさせました。これは、いわゆる「ブラック企業問題」を背景に昨秋成立し、順次施行されている「青少年雇用促進法」にもとづく措置です。
これまで、ハローワークでは、企業が出した求人は原則、すべて受け付けなければなりませんでした。しかし新制度により、法令違反を繰り返すブラック企業からの求人は、拒否(受付不受理)できるようになりました。具体的には、違法な長時間労働や残業代の不払いなどの違反行為で、労働基準監督署から1年間に2回以上是正指導されるなどした企業が対象に。また、新卒者を募集する企業には、「過去3年間の採用者数と離職者数」「残業時間」「有給休暇の実績」などの情報を開示する努力義務が課され、就職活動中の学生や大学、ハローワークなどから要求があった場合はいずれかの情報を提供することが義務づけられました。厚労省は、民間の職業紹介事業者にも同様の対応を促しています。
こうした対策は、労働者がブラック企業に送り込まれることを防ぐための決め手となり得るのでしょうか。NPO法人「POSSE」の今野晴貴代表は、「今回の新制度には重大な視点が抜け落ちている」と言っています。それが、ハローワークなどの求人情報に、虚偽の好条件で騙して入社させる「詐欺求人」が横行している実態です。
近年、ハローワークの求人票が実際の労働条件と違うという相談が全国の労働局などに相次いで寄せられています。厚労省の集計によると、2012年度7783件、13年度9380件、14年度12252件。このうち13年度は41%にあたる3815件で、14年度は36%、4360件で実際に食い違いが確認されました。相談内容の内訳は「賃金関係」が最多で、「就業時間」「職種や仕事の内容」と続いています。
職業安定法65条では、「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者」には罰則が科されるとされ、自社サイトなどを通じて直接、詐欺求人を行った企業は処罰されます。しかし、ハローワークや大学などに虚偽の求人を出す企業を取り締まる仕組みは現時点ではありません。新制度が施行されても、ハローワークや民間の職業紹介事業者には、求人の記載事項についてその真偽を確かめる術がほとんどなく、“前科”が明らかな企業以外からの求人は原則、拒否できないからです。先述の今野代表は、「深刻な事態。国や民間による効果的な対策が必要だ」と訴えています。
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