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【ヨミ】トランザクティブ メモリー トランザクティブ・メモリー

「トランザクティブ・メモリー」(Transactive memory)とは、1980年代半ばに米ハーバード大学の社会心理学者、ダニエル・ウェグナ―が唱えた組織学習に関する概念で、日本語では「交換記憶」あるいは「対人交流的記憶」「越境する記憶」などと訳されます。組織学習の一つの側面である組織の記憶力(経験によって学習した情報の蓄積)において重要なのは、組織全体が「同じ知識を記憶すること」ではなく、「組織内で『誰が何を知っているか』を把握すること」である、という考え方です。英語でいえば、組織の各メンバーが「What」よりも「Who knows What」を重視し、共有している状態を指します。
(2013/11/11掲載)

トランザクティブ・メモリーのケーススタディ

共有すべきは「誰が何を知っているか」
直接対話が組織の学習能力を高める

近年、経営学の分野では、組織の学習能力というテーマが大きな関心を集めています。組織も個人も過去の経験から学習し、その学習によって組織全体の効率や生産性が高まるわけですが、そうした学習を促すにはどうすればいいのか。この問いに対する答えのひとつとして、組織の記憶力という観点から注目されているのが「トランザクティブ・メモリー」のコンセプトです。

「顧客のA社については○○さんがくわしい」「商品Bの技術のことなら△△さんがよく知っている」――そうした組織内の‘Who knows What’をメンバー全員が共有している状態のことをトランザクティブ・メモリーといいます。組織における情報の共有化というと、一般的には「組織の全員が同じ情報を知っていること」を指しますが、そもそも個人が一人で把握できる情報量には限界があります。それなのに、例えば100人いる組織で100人全員が同じ情報を知ろうとするのは、効率的ではありません。組織として学習することのメリットは、メンバー全員が各自の担当分野、専門分野に特化して知識を蓄え、その専門性を効果的に組み合わせて活用することにあるからです。

したがって組織の学習能力を向上させるためには、組織全体で同じ情報を共有することよりも、「誰が何を知っているか」の情報を、誰もが引き出しやすい状態で共有していなければなりません。いわば“知のインデックスカード”のしくみを組織内に整備し、それをメンバー全員が正確に把握している必要がある、というのがトランザクティブ・メモリーの考え方なのです。

トランザクティブ・メモリーに組織のパフォーマンスを高める効果があることは、ヴェグナーに続くさまざまな研究者の実験や統計分析によって実証されています。例えば、ある米国の大学のMBA(経営学修士)の学生からなる61のチームが地元企業に対して行ったコンサルティング・プロジェクトを分析した研究では、「自チームの他メンバーの専門性をよく知っているか」「他のメンバーから得られる専門知識を信頼しているか」といったアンケート調査によってチームのトランザクティブ・メモリーの高さを数値化し、プロジェクトの成果との関連を調べたところ、トランザクティブ・メモリーの高いチームほどクライアント企業からの評価も高いという結果が得られました。さらにこの研究では、チームのメンバー間のコミュニケーションの質や頻度とトランザクティブ・メモリーとの関連性についても分析を加えています。その結果、興味深いことに、トランザクティブ・メモリーの高いチームでは、「フェイス・トゥ・フェイスの直接対話によるコミュニケーション」がメンバー間で頻繁に行われていたことがわかりました。組織の知について考察する上で、非常に示唆に富んだ研究結果といえるでしょう。

(※参考:入山章栄『世界の経営学者はいま何を考えているのか』)

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