企業子宝率
企業子宝率とは?
「企業子宝率」とは、企業の従業員一人(男女問わず)が、その企業に在職している間に何人の子宝に恵まれるかを推計する指標で、正式には「企業の合計特殊子宝率」と呼ばれます。一人の女性が生涯に産む子どもの数を調べる「合計特殊出生率」を参考にした計算方法で算出しますが、合計特殊出生率の調査対象が15~49歳の女性であるのに対し、企業子宝率は男性を含めた15~59歳の従業員を対象とします。
職場の“子育て支援環境”を測る指標
「大企業ほど充実」は常識のウソ!?
福井県は女性の就業率や共働き率は全国1位で、3世代同居率や1世帯当たりの年間収入は全国2位、さらに保育所の待機児童率もゼロという育児・就労環境の良さで知られます。その福井県が全国で初めて、県内の中小企業約3,000社を対象に「企業子宝率」調査を実施し、2012年2月にその結果を発表しました。
回答を寄せた297社のうち上位50社の子宝率の平均は1.70で、2.0を上回る事業所も、2.48の「岡本ペンキ店」(敦賀市)を筆頭に7社(平均2.19)を数えました。子宝率2.0という数字は、3人以上の子宝に恵まれた従業員が何人もいなければ実現できません。同県では「子宝率が高い企業は子育てしやすい職場環境が整っている」として、この最上位7社を「子育てモデル企業」に認定しています。
「子育てしやすい環境」というと、一般的には規模の大きな企業ほど福利厚生が手厚く、育児休業などのサポート制度も進んでいるというイメージが強いでしょう。しかし意外なことに今回の調査では、従業員規模が小さくなるほど企業子宝率が高くなるという結果が出ました。上位50社の企業子宝率を従業員数別に比較すると、10~19人の21社が平均1.76、20~49人の25社が1.70、50人以上の4社が1.40。モデル企業に選ばれた7社も、従業員は14~38人(調査時点)といずれも小規模です。同県では、7社に共通する特徴として、社内のコミュニケーションが十分にとれていること、育児のための遅出や早退に職場の理解があること、自宅が勤務先に近い従業員が多いことなどを挙げています。
ユニークな「企業子宝率」を提唱し、福井県の調査も監修した、東レ経営研究所部長で内閣府男女共同参画会議専門委員の渥美由喜氏は、「企業子宝率は、職場風土を反映している。今後は中小企業の職場風土の良さに学ぶところがあるのではないか」と強調します(読売新聞2012年2月21日付)。たしかに上述のモデル企業の事例を見るかぎり、仕事と育児の両立を支援する制度の重要性もさることながら、年始に社長と従業員全員が初詣をして昼食会を開いたり、社員旅行やイベントなどを通じて家族ぐるみの交流を深めたりするなど、組織の雰囲気そのものが家族的であることも、高い子宝率を支える大きな環境要因となっているようです。
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