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アフターフォローまで行う人材紹介業を展開
コンサルティング領域に特化し、企業・人材と継続した関係を築く

アクシスコンサルティング株式会社 代表取締役社長

山尾 幸弘さん

コンサルティング領域に特化する人材紹介事業を祖業とするアクシスコンサルティング。大手コンサルティングファームに所属するコンサルタントの四人に一人が同社に登録していると言われています。近年は人材紹介事業だけでなく、コンサルティング人材のスキルシェアに関わる事業も展開。2002年に同社を創業した山尾幸弘さんに、コンサルティング領域に特化した人材紹介業を始めた経緯、人材業界における課題、今後の展望をうかがいました。

プロフィール
山尾幸弘さん
アクシスコンサルティング株式会社 代表取締役社長

やまお・ゆきひろ/1962年生まれ。味の素ゼネラルフーヅ株式会社(現:味の素AGF株式会社)にて営業・マーケティング業務を担当。1992年国内系エグゼクティブサーチ会社に入社。IT、製造、通信、サービスなどさまざまな業界、大手からスタートアップベンチャーまで、幅広い企業ステージのエグゼクティブサーチを手がける。同社取締役を経て、2002年アクシスコンサルティング株式会社設立、代表取締役社長就任。社会や企業の課題解決、価値創造を推進するハイエンド人材が持つ才能・力を社会の隅々まで届けるため、ハイエンド領域の人材紹介事業、スキルシェア事業の複合ソリューションを確立・展開。

黎明期の人材業界で、コンサルティング領域の人材の可能性を感じた

どのような学生時代を過ごしていらっしゃいましたか。

学生時代はバスケットボール部・演劇部に所属していました。演劇部では、役者というより、主に演出や舞台監督などの裏方を担当していました。チームをプロデュースして、みんなで一つのものをつくりあげることが非常に楽しかったですね。

大学卒業後、味の素ゼネラルフーヅ株式会社(現 味の素AGF株式会社)に入社。その後、国内系エグゼクティブサーチ会社に入社されています。キャリアの軌跡についてお聞かせください。

演劇を経験していたこともあり、マスコミやメディア関係の仕事に関心をもちつつ、知名度が高くてブランド力のある企業を訪ねて、最終的に味の素ゼネラルフーヅ株式会社に採用されました。同社では8年ほど営業やマーケティングの仕事を経験しました。

その後のエグゼクティブサーチ会社への転職については「明確なビジョンと将来像を描いて転職した」と言いたいところですが、「未成熟な黎明(れいめい)期にあって将来性のある業界で自分の力を試してみたかった」というのが本音です。

人材業界以外に、セキュリティー関連やエンターテインメントなどいくつか業界を絞ったうえで、最終的に人材業界に転職しました。30年ほど前の人材業界は黎明期で、業界を知る人があまりいない状況でした。

2002年に貴社を設立されましたが、その経緯や思いについてお聞かせください。なぜ、コンサルティング領域に特化した事業を手がけようと思われたのでしょうか。

独立が絶対条件ではなかったのですが、時代の変遷とともに人材業界の中で新しい価値を模索したい、提供したいという考えが大きくなっていきました。

2000年頃からコンサルティング業界やコンサルタントに注目するようになりました。監査法人を出自としたコンサルティングファームを中心に業態変革の波があり、業務プロセスやIT関連へと業容が拡大する時期でした。

コンサルタントの方々は高い能力と専門性があり、あらゆる産業やセクターに関する知見を持っている。この方々の価値はおそらく1社に留まらないだろうと考えました。こうした予見のもと、コンサルティング業界を中心とした人材紹介業を模索したいと考えるようになったのです。当時の会社にもその思いをぶつけましたが、思いは通らず、自身で新しい価値を創造したいと考え独立しました。

私は食品メーカーで働いていたとき、ユーザーの声を聞くことやアフターフォローを重視していました。そのため、人材紹介業ではアフターフォローをあまりしないことを不思議に思っていました。企業から求人のオーダーがきたときだけ対応して、後は離れてしまう。人材紹介業の成り立ちはあっせん業なので、紹介して終わりという慣習だとは思いますが、企業からも人材からも「なぜ伴走してくれないんだ」という声を聞くことが多かった。その違和感があったからこそ、継続的に企業や人材の要望に応えていきたいと強く思うようになりました。

DX、ハイエンド、コンサルティング人材の能力を市場でシェアする発想

貴社は、ハイエンド人材を最適配置し、産業の活性化を目指していらっしゃいます。現在、特に力を入れていらっしゃる事業・取り組みについてお聞かせください。

当社は、人材紹介事業とスキルシェア事業という二つの事業を展開しています。主力事業であるコンサルティングファーム向けの人材紹介事業を引き続き拡充しながら、事業会社向けの人材紹介事業と、市場成長率の高いスキルシェア事業に特に力を入れています。

スキルシェア事業とは、副業や兼業、フリーランスで働く人材に関わるサービスです。『フリーコンサルBiz』というサービスでは、DXやコンサルタントなどのハイエンド人材が独立・起業をしてフリーランスとして働く支援を行っています。企業側は課題の解決を加速するために、インソースの人材ではなく、アウトソースをうまく活用することができます。

『コンパスシェア』は、副業支援サービスを行うビジネスプラットフォームです。ビジネスモデルとしては、Webプラットフォーム上に登録している方を企業とつなげ、手数料をもらう仕組みです。

副業については、労働人口が減少する中、人材のシェアリングをしないと労働力を確保できないことから、政府が強く推進しています。そして、コンサルティング業界も段階的に副業を解禁しているような状況です。こうした背景を受けて、会社員として大手企業のコンサルティングをしているコンサルタントが、空いた時間で地方企業や中型プロジェクトにスポットで携わることができるサービスを提供しています。

山尾幸弘さん(アクシスコンサルティング株式会社 代表取締役社長)インタビューの様子

コンサルタントの方にとって、スキルシェアすることはどのようなメリットがありますか。

コンサルタントの方にとっては多様な経験ができる機会につながります。今は「就職」ではなく「就ミッション」の時代だと考えているんです。多様な能力を会社員として1社に提供するだけでなく、副業や兼業、フリーランスとしても発揮してシェアしていく。そんなふうに働き方が多様化し、自律的にキャリアを形成する時代になってきています。

2018年以降、厚生労働省や経済産業省などが副業兼業を促進するガイドラインを出しています。その理由は労働人口が足りず、日本経済が伸び悩んでいるからです。こうした状況下で、DXやコンサルティング人材などの上流人材の能力をシェアしていくことに意味があります。能力の高い人の可能性を一つの会社に留めず、2〜3社でシェアしていく社会を実現していきたいと思っています。

今は「BtoP(Business to Person)」の時代です。企業を通じて人とつながるのではなく、企業や案件や取引が直接個人につながっているんです。そんな時代において、当社はDX、ハイエンド、コンサル領域におけるBtoPの担い手になりたいと考えています。

なぜ、ハイエンド人材との中長期的な関係構築に注力されているのでしょうか。

人材紹介業はアフターフォローをあまりしないという慣習にとらわれず、継続的にサポートしていくべきだと考え、顧客に継続して対応するビジネスモデルを模索しました。どの人材紹介企業もやっていないことに取り組むことに魅力を感じましたし、顧客の声にも応えたいと考えています。

また、企業だけに限らず人材側とも中長期的な関係を構築することを重視しています。今の時代は60代まで働くとしても、3〜4回ほどは転職の機会があることが普通です。転職は手段であって目的ではなく、その方のスキルアップやキャリアアップを支援することによって、リピートや紹介などのリファラルも生まれてきているんです。

もちろん、当社も最初からすべての顧客や人材から支持を得たわけではありません。こうした当社のビジネスモデルとサービスを理解してくれる顧客を継続的にサポートすることで、少しずつノウハウを蓄積してきました。

二極化していく人材業界で、人材・企業と長期的に関わり価値を発揮する

現在の日本企業の「人と組織」「人事」に関する現状や課題をどのように捉えていらっしゃいますか。

日本の事業会社は350万社以上といわれていますが、正社員主義の企業がまだまだ多い。しかし、労働人口は減少し、市場の変化や技術革新、グローバリゼーションのスピードが上がる中では、正社員だけで経営課題や事業課題を解決することはなかなか難しいのが実状です。さらに、DX、ハイエンド、コンサル人材などの高い能力をもつ職種の有効求人倍率は7〜8倍ほど高く推移し、多くの企業が求める人材を採用できない状態です。

だからこそ、正社員だけでなく副業や兼業、フリーランスなどのアウトソースの人材を活用していく必要があります。

貴社を含む人材紹介業界、スキルシェア業界について、現状や課題をどのように捉えていらっしゃいますか。また今後、この業界はどのようになっていくとお考えですか。

今後は二極化が進んでいくでしょう。生き残っていくのは、企業の課題解決に寄り添うことができ、キャリアを考える人材に対して長期的に価値を提供し続けられるコンサルティングができる人材会社です。

一方、単なる情報として求人情報を人材に紹介したり、企業に人材の情報を提供したりするだけの人材会社は厳しくなっていくでしょう。今はスカウト型の転職メディアもあり、企業と人が直接つながれるからです。

企業も人材も信頼して相談できるパートナーが欲しいと思っています。だからこそ情報だけでなく、いかに付加価値の高いサービスを提供できるかが、人材紹介業界全体に投げかけられています。

今後、生成AIなどを活用したマッチングが加速する中で、人材紹介会社を介さずに企業・個人が自分たちで判断するケースが増えていくと思います。ただし、企業から見ると高い採用コストをかけて採用した人材が自社にフィットしないケースもあり、個人も一次的な情報で転職した結果、ミスマッチだったということは起こりえます。

人材紹介会社の役割は、そういったミスマッチが起きにくいように補完することです。例えば、企業が採用したいと言っても「本当に採用するべき人材は、こんな人ではないですか」と提案したり、企業が課題解決や価値創造するためにはどのような人材を採用すべきかと議論したりしています。企業と人材の利益のためにも、我々のようなパートナーが必要だと思います。

山尾様がお仕事をするうえで最も大切にされていることは何ですか。

私自身の理念やビジョンは「あらゆる課題は、人で解決する。」というコーポレートステートメントに凝縮されています。

人材をヒューマンリソースという資源ではなく、ヒューマンキャピタルという資本と捉え、日本で不足・偏在する高いレベルの専門性と能力をもった人材を最適に配置し、循環し続けていく社会を実現したいと考えています。それが私たちの介在価値であり、市場や企業、人材の利益のために伴走し続けます。

顧客の利益を大事にすると言いながらも、自社の利益やサービスにこだわる会社が多いように思います。そうではなく、徹底的に顧客の課題解決や価値創造などの利益に寄り添うことを大事にしていきたい。会社として実現したいパーパスがあり、パーパスを実現する大事な担い手である社員の利益も大切にしたいと考えています。

サービスの継続利用と複数サービスへのリカーリング(継続)を推進

貴社は今年3月に東京証券取引所グロース市場に上場されましたが、その後どのような変化がありましたか。

上場して半年が過ぎ、「ビジネススタイルを推進してほしい」「もっと成長してほしい」など、社内外から期待の高まりを感じる声が増えてきました。身の引き締まる思いです。

また、自社の採用への効果も実感しています。当社がコンサルティング業界に強みをもっていることは認知されていますが、事業会社としての信用力や知名度はまだまだです。上場したことによって、当社が提唱する事業やサービスをより推進していきたいと考えています。

貴社が今後手がけようと考えていることや展望について、お聞かせください。

まずは、先ほどお話しした二つの事業を継続して連携していく仕組みを拡充し、展開していきたいと考えています。

当社がお会いするハイエンド人材は、経営幹部や取締役などの方々です。長期的なキャリアパートナーとして伴走すると同時に、所属する会社の採用を支援するビジネスパートナーという存在にもなりえます。採用で困っている会社は多く、ご自身が経営幹部として抱えている自社の人的課題についても解決してほしいという要望をもっているからです。

当社が長期的に企業や人材とお付き合いしているというと、「2~3年伴走して転職活動をしなかった場合、収益を上げられるんですか」と聞かれることがあります。たしかに、短期的に考えれば、即時的な企業と人材のマッチングをしているほうが収益は上がるかもしれません。

しかし、当社のビジネスモデルの特徴として、ハイエンドな人材とお付き合いしているからこそ、ビジネスパートナーにもなりえる。そこがリカーリング(継続)のポイントです。

山尾幸弘さん(アクシスコンサルティング株式会社 代表取締役社長)インタビューの様子

また、企業と人材を単体で捉えるのではなく、それぞれのニーズに合わせた価値提供を行っています。企業側が抱える人材の課題に対しては複数の手法で解決することが可能です。例えば、課題整理は『コンパスシェア』のスポットコンサルティングで支援し、課題解決に向けた実行は『フリーコンサルBiz』でフリーランスのコンサルタントを活用したプロジェクトによって支援、課題解決後の運用や内製化は祖業の人材紹介業で正社員の方を紹介する。三つのソリューションを組み合わせられるのです。

人材側については、正社員としての転職だけでなく、フリーランスとして独立した場合の営業支援・案件紹介も行っています。高度で専門的な能力を持っていても営業力がなかったり、起業したてで信用力が低かったりする場合、なかなか仕事につながりにくい。そういった場合、我々を通じて人材と企業を結びつけていくこともできます。さらに、独立した方が設立した会社を支援することも可能です。また副業を経験することにより独立や異業界・異業種での業務も体験できるため、キャリアが広がるのと同時にキャリアチェンジによるリスクも減らすことが可能になります。

現在、人材サービス・HRソリューション、法人向け業界で働いている皆さま、後に続く皆さまにメッセージをお願いします

時代やマーケットが変わっても、転職してもしなくても生き残れる人材を目指してほしいと思っています。そのためには、各々が好きだと定めた仕事に関しては簡単にあきらめず、しっかりとやりきることが必要です。

若手の方々を見ていてもったいないと感じるのは、賢いあまり、先を見すぎてしまって、見切りが早いことです。誰かに強制されたわけではなく、自分がやるべきこととして定めたことをしっかりとやりきれば、気づいたときは高度なプロフェッショナルになっています。だからこそ、「自分はこのくらいかな」とリミットを定めずに、自分の可能性を信じて追求してほしいと思います。

今は情報があふれかえっていて、調べたら多くのことがわかる時代です。表面的なことはすぐにキャッチアップできるでしょう。しかし、顧客との関係構築や人を教えることなどで一人前のプロフェッショナルになるには、約1万時間は必要だと考えています。

当社の社員には「1年目で結果が出なくても全然気にしません。ただ、教育のサポートをするのでしっかりと走ってほしい」と伝えています。もちろん当社に限らず、一度選択したなら、今いる会社でもやりきることが大事です。

一つ、二つの分野でプロフェッショナルになれたら市場価値が高まり、転職でも副業でも独立でも、自分で選択できるようになります。キャリアを最終的に選ぶのは自分自身ですが、さまざまな提案を受けられる人材になったほうがいいですよね。そうすれば、自分の好きなことを選べる。高度で専門的なプロフェッショナルになれれば、さまざまな生き方を選択できるようになると考えます。

山尾幸弘さん(アクシスコンサルティング株式会社 代表取締役社長)

(取材:2023年9月29日)

社名アクシスコンサルティング株式会社
本社所在地東京都千代田区麹町4-8 麹町クリスタルシティ6F
事業内容人材紹介事業/スキルシェア事業
設立2002年4月

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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