クライアントの課題解決はパートナーシップから
人の強みを引き出すAI時代のコーチング
ビジネスコーチ株式会社 代表取締役
細川 馨さん
多様な企業と連携しながらクライアントに貢献する
今の企業には、人や組織に関してどんな課題があるとお考えですか。
コーチングの観点からいえば、コーチ型リーダーの育成が急がれていると感じます。ビジネスと成果は、隣り合わせの関係です。AIやロボットが発達するこれからの社会において、人間が仕事で成果を上げるとすれば、それは創意工夫の部分です。自ら考え行動に移すという人間の強みを生かすことが求められるわけですから、指示待ち人間ではこれからの時代を生き抜くことは厳しい。
本来、人間は主体性を発揮し、自分の考えに基づいて行動するほうがやりがいを感じるのではないでしょうか。そこでポイントとなるのが、上司からの問いかけです。管理職は部下に指示を出すのではなく、質問をしてほしい。あの有名な経営学者であるピーター・ドラッカーも、人が自発的に動けるように環境を整えるのがリーダーの仕事であり、チームのミッションを問い続けることが重要だと主張しています。
「考える組織」をつくり上げるうえで、人材育成ビジネスに携わる人たちができることとは何でしょうか。
まずは、クライアントが何を求めているのかを知ること。ここから始まると思います。また、クライアントの課題に応えるにあたっては、自社が手がけるサービスの範囲で考えるのではなく、他社との連携も視野に入れることが大切ではないでしょうか。私は、コーチングは万能ではないと理解しています。そのため、あらゆる企業と連携を図りながら、顧客の課題解決に取り組んでいます。
大手の人材開発企業や、マーケティング会社も当社のパートナーです。中には、4500万人分のビジネスパーソンのアセスメントデータを持つところもあります。例えばコーチングや人事制度改革にデータを活用すれば、人材の適材適所が実現し、働きがいのある組織づくりに貢献できます。ひいては、私たちが目指す組織のあり方、つまり、生産性、人間関係の質、思考の質が向上し、一人ひとりがリーダーシップを発揮する形を実現できるのです。
アップルだって、いろんな企業とパートナーシップを結んでいるからこそ、世間を驚かすプロダクトを形にできています。人材開発も全く同じで、多様な企業と連携しながらクライアントに貢献することが求められているのではないでしょうか。
今後の展望をお聞かせください。
ビジネスコーチングを世に広めていきたいと考えています。そのためには、当社が自発的に成長する組織でありたい。若い世代を中心とした社員たちが経営者となって、網の目のように会社が広がっていくことが理想です。例えば、子ども向けのビジネスコーチングがあってもいいと思うんです。コーチングを生かして人の成長を支える事業なら、どんどんチャレンジしてほしい。
私自身は、クライアントのビジネスコーチであると同時に、社員にとってのビジネスコーチでもあります。若い人や子どもたちにとってのビジネスコーチにもなりたいのですが、一人でやるには限界がある。だから皆の力を借りて多くのクライアントを支え、今度はクライアントがコーチとなるプラットフォームをつくりたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
先ほど紹介した、マーシャル・ゴールドスミス博士から聞いた話です。ある日マーシャルは、95歳になる老人に「人生の目的とは何でしょうか?」とたずねました。その老人は、「幸せになることだ」と答えたそうです。続けてマーシャルは、「では、幸せになるにはどうすればいいのでしょうか?」と老人に質問します。すると彼は、「まず、家族を大切にすること。次に、どんなに小さくてもいいから夢を持つこと。あとは、いくつになっても学び続け、謙虚さを忘れずにいることだ」と答え、そして最後に、「多くの人をコーチすることだよ」と言ったそうです。
マーシャルは、その老人が誰だったのかを教えてくれませんが、晩年のピーター・ドラッカーだったかもしれません。マーシャルは、ドラッカーが亡くなる直前を共に過ごしていますから。人間は、いつか死ぬものです。ならば、幸せに生きたほうがいい。マーシャルから話を聞いて、私はその通りに生きているなと感じました。若い皆さんにもそのように生きてほしいですね。
社名 | ビジネスコーチ株式会社 |
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本社所在地 | 東京都千代田区麹町2-2 KIHOHビル1F(受付) 5F(セミナールーム) |
事業内容 | ・コーチングサービス ・人事制度サービス ・イノベーションサービス ・クラウドサービス |
設立 | 2005年4月6日 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。