OD Network Japan 2014 国際大会
[ 取材・レポート ] ODネットワークジャパン国際大会運営委員会
組織開発(Organization Development 以下OD)について交流と学びを続けてきたODネットワークジャパン(代表理事 金井壽宏)は、2014年8月末に2日間の日程でODNJ国際大会2014を開催しました。本大会は、ODNJが開催する年次大会としては3度目、そして海外からのゲストを招聘しての国際大会としては初の開催となり、さまざまなセクターから400名以上の方々がご参加されました。参加者の7割近くがODNJのイベントには初めて参加されたとのことで、組織開発に対する興味関心が高まってきていることがわかりました。大会の概要についてご報告いたします。
ODNJ国際大会2014 開催概要
■ODネットワークジャパンとは
ODネットワークジャパン(OD Network Japan 以下ODNJ)は、健全な組織の実現を通じた社会の持続的繁栄に貢献することを目的として2010年に有志によって設立された、プロフェッショナルなOD実践者相互のオープンな交流から研鑽を重ねるコミュニティーです。現在は年次大会に加えて研究会や分科会などを中心に活動を続けています。2014年からは神戸大学の金井壽宏先生を代表理事に迎え、活動の深化と拡大を図っています。
■ODNJ国際大会2014とは
ODNJ国際大会2014(運営委員長 清宮普美代)は、ODネットワークジャパン(ODNJ)が実施する年次大会であり、海外からのゲストスピーカーを招聘して実施する、はじめての国際大会です。今大会では、志を同じくする仲間が集まり、対話やワークショップ、事例発表などさまざまなスタイルで、ODの概念やスキル、アプローチについて共に学び、情報交換し、刺激し合うことを目的に開催されました。
今大会は8月30日・31日の2日間にわたって池袋にある立教大学 14号館全体を使って行われ、2日間を通しての参加者数は435名でした。大会の構成は両日共に基調講演と個別のセッションという流れで行われ、8月30日はAI(アプリシエイティブインクワイアリー)の第一人者であるダイアナ・ホイットニーが基調講演を行いました。この基調講演では組織開発の潮流についてその最新事情を、その背景にある哲学も踏まえて紹介していただきました。そして2日目には組織開発の第一人者であり金井先生の恩師でもあるエドガー・H.シャイン先生がウェブを通して過去から現在まで続く組織開発の発展について基調講演を行い、その後金井先生を交えて参加者との対話を行いました。こうした基調講演に続いて両日合わせて30もの事例発表・体験セッションが行われました。このほかにも、大会1日目終了後には懇親会が、2日目終了時には大規模なクロージングが行われ、大会は日本において組織開発に興味を持つ人々の交流の場としても大いに盛り上がっていました。
名称 | OD Network Japan 2014 国際大会 |
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開催期間 | 2014年8月30日(土)~31日(日) |
大会テーマ | 社会を変える OD の実践 日本の OD の過去・現在・未来 ~個人から組織、世界へ~ |
会場 | 立教大学 池袋キャンパス 14号館 |
参加者人数 | 435名 |
トラック及び セッション数 |
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主催 | OD Network Japan (http://www.odnj.org/) |
大会の様子
今大会は海外からのゲストも参加し、400名以上が参加する大規模な年次大会となりました。2日間にわたる大会の様子をご紹介いたします。基調講演、事例発表、体験セッションの様子についてはセッションサマリーをご覧ください。
■会場の様子
会場となった14号館のある立教大学池袋キャンパスは、池袋駅から徒歩10分弱という立地にもかかわらず、風情のあるレンガ造りの建物が印象的な場所でした。14号館は地上6階・地下1階で、今大会では主に2階から5階を基調講演や事例発表に、地下1階を体験セッションやクロージングに使用しました。
また、14号館内ではメインコンテンツである基調講演や各セッション以外に加えて、大会期間中を通して書籍販売、カフェテリア(1階)、ライブラリー(6階)という三つの取り組みが行われました。
カフェテリアの様子(1階)
書籍販売の様子(1階)
■オープニング
8月30日朝、ODNJ国際大会2014のオープニングは、参加者同士で参加の理由を聞き合うチェックインで開始されました。チェックインが完了すると、大会運営委員長清宮普美代、ODNJ代表理事金井壽宏が開会挨拶を行いました。続いて、ODについての国際的なネットワーク団体であるIODA(International Organization Development Association)副代表のRobert Barnet氏と、アジアにおけるネットワーク団体であるAOD(Asia Organization Development Network)理事のMark Pixley氏が登壇し、今大会に対するコメントを寄せました。
オープニング時のワークの様子
海外ゲストの挨拶
金井先生(ODNJ代表理事)の開会挨拶
清宮大会運営委員長の挨拶
■ハーベスティング
今大会の特徴の一つは、大会全体を通して「ハーベスティング」に取り組んだことです。オープニングから始まり、各セッションでは参加者がセッションの中で気づいた事や質問したいことなどを付箋に書き込み、各セッションを出る際にそれを壁に設置された用紙に貼って行きました。こうした書き込みは今大会最後に実施されたクロージングセッションにおいて利用され、参加者全体の学びの共有と一体感の醸成に成功しました。
開会式のチェックインを始めとして
すべてのセッションで参加者は
コメントを付箋で残しました。
基調講演やセッションに参加された
方から寄せられたコメントが
クロージングで共有されました。
一部の講演やセッションの内容は
スタッフによって書き出され、
クロージングで共有されました。
■クロージング
二日目最後に地下1階で行われたクロージングでは、まず「ハーベスティング」として各セッションに設置された用紙が室内の壁に張り出され、参加者たちは2日間のさまざまなセッションの様子をそれぞれ振り返りました。その後、小さなグループで2日間の振り返りを共有したのち、全体でチェックアウトを行って2日間の国際大会は終了しました。
当日は多くのボランティアスタッフが
大会を支えていました。
クロージングの様子
金井壽宏先生(ODNJ代表理事)挨拶
ODNJ国際大会2014は、日本における組織開発の第一人者でありODNJ代表理事でもある金井壽宏先生(神戸大学大学院経営学研究科教授)の開会あいさつによって幕を開けました。
ODNJ国際大会2014という場で、こうして組織開発興味を持った方々がお揃いになって共に学ぶ機会を得るというのは、組織開発の主旨からして非常に重要なことだと思います。組織開発というのは決して一人で学ぶというものではなく、共に歩もうという意識が大事なのではないかと私は思っているからです。
あまり読まれることがないのですが、、David Bakanという人の”Duality of Human Existence: An Essay on Psychology and Religion”(1996)というすごくいい本があって、そこでは人間性には二つの側面があると書かれています。ひとつは何事とかを成し遂げるエイジェントとして動くという「エイジェンティク(agentic)」という言葉です。一方、なにかを作り出すと同時に、それを共に成し遂げる、つながるというのが大事だとも書かれています。そこでその本では、「エイジェンティク」と並べて「コミューノナル(communal)」という言葉を人間性の二つ目の側面として挙げています。
皆さんがもしリーダーシップの研究を学ばれたなら、実はリーダーシップの軸もタスクと人々との関係性だということをご理解いただけると思います。つまり、共に成し遂げるということがリーダーシップなので、その時に人々の関係性という軸から成り立っていることから考えると実は組織開発のようなものが非常に重要なのです。私の恩師のエドガー・H.シャイン先生の区別だと、われわれは普段もコンテンツばかりにこだわっているというのです。言われてみれば確かに、子供の時って覚えるばっかりですよね。ですが、共に学ぶという事の「共に」という部分の方が大事なので、本当は小学校の時からクラスの先生もより効果的な質問をだすとか、一人ひとりに考えてもらうとか、違う意見こそ倍一生懸命に聞くとかそういうことをする必要があるのです。違う意見があるのだから、ディスカッションが起こるのだという事が大事なのに、なんとなく一方的に、先生や親や先輩から知識も考えも躾も詰め込まれてきたという時期が長いので、大人になってからも「共に」の部分にアプローチする組織開発が重要になるわけです。
この組織開発という考え方と実践の方法があるおかげで、共に学ぶ場が生き生きし、一人で考えるよりも良い意見にたどり着くという事が可能になります。それも、ただ単に良い意見にたどり着くだけじゃなくて共に考えているプロセスがあったので、その解決案に対して一緒に考えたメンバーの間で納得度が非常に高いというような、そういう組織開発を目指せばいいなと考えています。
私たちはこういう組織開発の技法を、急に学べるものではありませんが、私は3年間エドガー・H.シャイン先生のそばにいたので先生をモデルにして学ぶことができました。今日もダイアナ・ホイットニー先生みたいにこの分野のエキスパートがいらっしゃるので、そういう方をモデルにして、学べたら良いと思っています。そしてまた、お互いがお互いのモデルだと思いますので、わたしも含め、ささやかながらODに入門しているという経験が部分的にでもあるのならば、そういう経験をこの場にいる間にシェアできたらなと思っております。どうか自分自身も含めこの場にいらっしゃる皆さんが、壇上にいるかどうかに関係なく、「共に」にいい学びの機会になるように祈っております。
講演者インタビュー:ダイアナ・ホイットニー
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)が対話による組織の未来をつくる
ODNJ国際大会2014では、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)で有名なダイアナ・ホイットニーを招聘し、8月30日には「組織開発の新しい潮流」というテーマで基調講演を、翌日には「なぜ、AIをすると組織開発が成功するのか?」というテーマでAIの体験セッションを行いました。本稿では、ダイアナ氏のインタビューの模様をお伝えします。
ODNJの基調講演では、現在の組織開発の潮流は診断型から対話型へ向かっているというメッセージをお聞きしました。なぜ、今の時代に、対話型の組織開発が求められるのでしょうか?
一つ目のポイントは社会が変わってきているからです。経済界では、永い間、リーダーが考え、指示命令をだし、メンバーを引っ張ってきました。リーダーは指示をする人、メンバーは指示通りに働く人だったのです。今の時代には、一人のリーダーが的確な指示を出すことが難しくなってきました。あまりにも、社会の変化が激しく、顧客にしても、技術にしても、競合の動きにしても、すべてを捉えて指示することができなくなっているのです。ですから、対話で一人ひとりの知恵や体験を収集するのです。
二つ目のポイントは社員の意識の変化です。いまの社員はロボットのように言われることを実施するだけでは満足しません。自分で考え、自分たちの知恵を出して、貢献したいという人が増えています。そんな人たちには、自分たちの力を発揮する場を作ってあげる。自分の強みを活かせる場を持ってもらう。そんなことができると、人は最大限の力を発揮します。対話により自主的に活動する場を持てると人の強みを生かすことができるようになるのです。
三つ目は人のエネルギーです。診断型で問題をえぐりだし、その原因を追究して、解決する方法では人のエネルギーを奪われてしまうことに気づき始めている組織が多いのです。「組織の悪いのは社員であるあなたの行動が悪いせいだ。だから、あなたの行動を変える必要がある。」と言われては、誰もが楽しい気持ちで仕事ができません。
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)を代表とする対話型未来創造の組織開発では、強みや価値を見出して、それを生かして、どんな未来をつくりあげられるかを語ります。未来のありたい姿を共有して、それを実現するために、必要な考えや行動を考え、自主的に動いていくのです。それを我々は組織に命を吹き込むとか、命を与えると表現します。一人ひとりのポジティブなエネルギーが組織の中に充満し、未来のために貢献したいという気持ちが起こってくるのです。対話型の組織開発はエネルギーを引き出し、そのエネルギーを使って未来に向かって行動する人をつくります。
ODNJの「なぜ、AIをすると組織開発が成功するのか?」というセッションを2日目におこないました。そこではAIコンサルティングでは組織開発の成果をあげることが強調されていました。AIはなぜ成果を創りだしやすいのでしょうか?
AIはクライアントの組織から提示される目的を達成したり、課題を解決したりするために行われます。AIが成果を出しやすい理由はいくつもありますが、ここでは三つお話しします。
まず一つ目は関係性です。関係性を良くすることで成果が生まれやすくなります。AIでは、参加者がインタビューなどをして、お互いの理解を深めます。また、クライアントの組織にとって重要なことを話し合い、未来のありたい姿を他のメンバーと共に描いていきます。共に強みを認め合い、共通の夢を作り上げるのです。お互いに違いを認めながらも共通の夢に向かうのです。この関係性が良くなることが協力を生み、集合的知恵を生み出すのです。ここで生み出される知恵が成果を生み出す源泉のひとつです。
二つ目の理由は、ポジティブな進め方です。AIでは、誰もが尊重され、夢を実現するために何をできるかを考えます。人は未来を実現しようとするときにエネルギーを燃やします。そして、強みやお互いの存在を認められると、自己肯定感を持つことができます。自信を持っている人は情熱的に仕事に取り組みます。つまり、ポジティブさが自信を生み出し、その自信が成果をつくるのです。
最後の理由は自己組織化によるエネルギーを活用することです。実行段階では、自主的にチームをつくり活動をします。チームのメンバーはそれぞれの強みを自覚し、それを活かそうとしますから、得意な仕事をすることになります。強みを活かした仕事は早く正確にできるものです。成果を出す理由は多くありますが、重要な三つをお話ししました。
ONDJの年次大会ではハーベスティングといって講演終了後に付箋に感想を書いてもらい、壁に貼り付けました。その中で多かったのが、AIを使えるようになりたいということでした。AIで組織開発が出来るようになるために何をすればいいのでしょうか? アドバイスをいただけたらお願いします。
AIではインタビューやコラージュづくりなど、さまざまなワークを取り入れています。論理で考えるだけでなく、気持ちにも訴えらえる方法を使っているのです。左脳と右脳を使う全脳ワークショップなのです。AIには4Dプロセスがあり、これを実施するとAIを行うことができます。じつは、この4Dプロセスで最も重要なところはデザインの設計段階とデスティニーの実行段階です。そこまで行かないと成果は出せません。4Dプロセスを適切につかえる。まずはここがスタートラインの第一歩です。
4Dプロセスをすることはさほど難しくないのですが、組織に成果を創りだすためには、深い考察と思慮と経験が必要です。そのベースになるのがAIの哲学です。特に重要なのは社会構成主義。この考え方では、意味やの物事の良否は関係性できまるとしています。何が正しいかも関係性で決まってくるのです。そして、Words create world.言葉が世界をつくる。対話を重ねることから未来の世界を作っていきます。
AIには他にもいくつかの哲学とか原則と呼んでいるものがあります。成果を出せるAIを運営するにはこのような哲学をよく知って、その哲学をベースに対話の構造を設計する必要があります。哲学に基づく対話の設計が成果の出せるワークショップには必須です。されに言えば、AIのプラクティショナーはこのAIの哲学をしっかり持った生き方を体現してほしいと思っています。
AIを学ぶにはODNJの中に「ポジティブ組織活性化・AI分科会」があると聞いています。そこはAIに興味がある人が集まって学ぶ場であり、交流する場であると聞いています。ここで仲間と一緒に活動されたらいかがでしょうか? Center for Positive Change の資格制度を日本でも行っています。ここでは、サクセスポイント株式会社と日本マンパワーが、AIの哲学まで含めたAIプラクティショナーを育成する活動をしています。AIで組織開発をするプロを目指す方やAIを社内で本格的に取り入れて組織開発を進める方にはお薦めです。
体験セッション報告:ラリー・ドレスラー
ODNJ2014国際大会では2日間を通して30の事例発表・体験セッションが行われました。その中から、「トラックC1 あり方について:あなたのチェンジエージェントとしての隠れた力を発見する」と題したラリー・ドレスラー氏の体験セッションの概要を紹介します。7月に発売されたばかりの「プロフェッショナル・ファシリテーター(原題:Standing in the fire)」の著者ということもあり、60名の定員はあっという間に満席となり、オブザーブを含め100名近くが参加するという人気セッションとなりました。
■組織開発(OD)実践家の「あり方」を考える
組織開発に関心のある人なら誰でも、どのようにすればよい変化を起こせるか、効果的な介入方法は何かを常に考え、理論や手法、スキルを学び身に付けるためにお金と時間を費やしています。しかし、いくらすばらしいスキルやテクニックを身につけても、それを扱う自分自身のあり方が不十分では役に立ちません。介入が成功するかどうかは介入者の関わり方、あり方にかかっているからです。だからこそ、どんな場面でも勇気と明晰さをもって落ち着いてその場に臨む自分となるために、自分の内面を鍛えなければならないのです。
今回のセッションは、ドレスラー氏が長年の経験と多くの実践家のインタビューから編み出したマインドを鍛えるための六つの流儀を、ワークを交えながら紹介し、参加者と共にOD実践家としてのあり方を考えるという興味深い内容でした。
■内面を磨く六つの流儀とは
ドレスラー氏の提唱する六つの流儀は次のようなものです。 「自分の状態変化に敏感になる」「『いま、ここ』に集中する」「オープンマインドを保つ」「自分の役割を明確に意識する」「意外性を楽しむ」「共感力を養う」
「では、立ち上がって自分自身に三つの質問をして下さい。その答えが見つかったら、どうぞ椅子に座って下さい」まず、ラリー氏は参加者にそう話しかけました。
「今日、私は誰のためにここにいるのか?」
「私はどんな貢献するためにここにいるのか」
「私の役割は何だろう。役割でないものはなんだろう?」
これらの問は、六つの流儀の中でも特に大切な「自分の役割を明確に意識する」につながるものです。いきなりの大きな問いに戸惑っている参加者もいましたが、この質問により自分と向き合い内省するというマインドセットがしっかりできたようです。
次はOD実践家をスーパーマンになぞらえて、そのパワー(強み)と力を弱めるもの(クリプトナイト)を発見するワークです。どのような時に平常心をなくすのか、何がその引き金を引くのか、その時身体や感情、思考はどうなっているか、等を考えていきます。
自分の状態変化に敏感になると、瞬時にいつもの自分に戻ることができるようになります。
さらに、「いま、ここ」を忘れたときどのような事が起きるのか、思い込みや固定観念に捕らわれるとどのような問題がおきるのか、さまざまな事例やワークを交えながらセッションはインタラクティブに進んでいきます。「意外性を楽しむ」ワークでは、即興でダンスをするワークに会場から飛び入り参加した人達が見事なダンスを披露してくれました。意外性を楽しむためには、想定外のことを歓迎し遊び心をもって柔軟に向き合うマインドが大切ですが、さすがにOD大会に出席している人達だけあって、即興はお手のものでした。
「六つの中でどれが最も重要か。学ぶ順番はあるのか」とか「どんな時も動揺せずに対応するはどうすれよいか」と言う質問には、「六つはそれぞれつながっている。どれが一番重要とか、どれから学べば良いというものでない。ただ、もし迷ったらあなたのパートナーにどれから学ぶべきか聴くのが一番。また、動揺しないようにするのは無理。大事なことは『ああ、今動揺したな。感情のスイッチがはいったな』、と気づいて素早く元の状態の戻せるようになること」と答えていました。
ドレスラー氏の穏やかで明確な語り口と体験に基づいたわかりやすい事例にすっかり引き込まれ、あっという間の3時間でした。わかっているようでなかなか実践できないのが自分のあり方を鍛えるということ。ドレスラー氏のセッションから、参加者は多くの気づきと学びを持ち帰ったことでしょう。
セッションサマリー
■基調講演(1)
初日である8月30日の基調講演はAIで有名なダイアナ・ホイットニーによるものでした。この基調講演では、「組織開発の新しい潮流」というテーマで伝統的な組織開発のテーマとその新しい方向性に触れられました。伝統的な組織開発が持っていた組織と人に対する世界観は科学的物質主義的であり、一方新しい組織開発はより参加型の世界観であるとの対比を通して、新しい組織開発の潮流が語られました。また、新旧の組織開発のアプローチの対比として、古いアプローチはデータに基づいてよくない点を直そうとする診断型であり、新しい潮流は参加者との対話を中心としてポジティブな側面を推進しようとする対話型のアプロ―チが紹介されました。
■基調講演(2)
翌日の8月31日には、エドガー・H.シャイン先生の講演がウェブを通して「組織開発~過去、現在、そして未来~」というテーマで行われました。この中でシャイン先生は、組織開発の原形となったいくつかの研究を紹介するとこから始め、どのようにして研究者や実践者たちが組織に注目するようになったかが紹介されました。そして、組織やマネージャーに対する研究を背景にして、さまざまな手法が開発されてくるようになり、現在の組織開発へと大きな流れがつながってきたと紹介がされました。そうした手法の開発は、組織開発の技術的な側面に対する過度な偏りを生み出し、対象組織内に存在する人間的な要素や文化を無視することにつながってしまったという議論が紹介され、そこから組織に対する関わり方についてプロセスコンサルテーションなどが紹介されました。講演の最後では組織開発の未来について触れられ、組織開発はより複雑な事象や異なる文化のインクルージョンに取り組むようになるだろう指摘しました。
エドガー・H.シャイン教授
金井壽宏先生
■各発表トラック概要
今大会では、2日間を通して5トラック30セッションが実施されました。トラックA、OD実践事例の紹介として、企業における取り組み事例の紹介を中心としたセッションが実施されました。トラックBは、英語によるOD事例発信というタイトルで、日本における事例を海外に発信し、また会議における取り組みを日本に紹介するという目的の為に実施されました。トラックCではODの実践手法トラックとして、ODを組織において推進していくための様々な手法が紹介されました。トラックDはODにまつわる理論を紹介するトラックとして、三つのセッションが実施されました。最後に、トラックEではソーシャルデザイン取り組み事例として、企業内における組織開発に留まらず、社会全体やコミュニティに対して取り組んでいる団体の活動が紹介されました。
セッションの様子
セッションの様子
参加者の声
今回参加された方々からは、アンケートやFacebookなどを通してさまざまな声をいただきました。特に多かったのはダイアナ氏やシャイン先生、金井先生といった素晴らしい登壇者の話を直接聞ける機会に対する満足感でした。また、個別のセッションに対しても具体的な取り組み事例に加えて、体験ワークショップや理論的な背景を学ぶこともできた点が良かったという声も多くいただきました。特に大きな反響があったのはハーベスティングとそれを利用したクロージングでした。これらの取り組みによって今大会における参加者・発表者・運営スタッフが一つのコミュニティーのようになることができ、とても雰囲気が良かったというコメントを多くいただきました。
ODNJの今後の活動にむけて
現在、ODNJは年次大会の実施のほかに研究会や分科会などで活動を行っています。また、2015年には初の会報誌を発行する予定です。2015年度の具体的な活動内容は会報誌やウェブサイト、Facebookなどで告知していきますので、ぜひご覧ください。
- ODネットワークジャパン国際大会運営委員会
- (委員長)清宮普美代 (担当)小森谷祐司
- 住所:〒105-6205
東京都港区愛宕2丁目5番1号 愛宕グリーンヒルズMORIタワー5階 (株式会社ラーニングデザインセンター内)- Email:ODNJ2014@ODNJ.org
- 電話:03-6680-2698
- Fax:03-6854-3737
- 大会ウェブサイト:http://www.ODNJ.org/2014conference/index.html
- 大会Facebook:https://www.facebook.com/ODNJ2014