ジェック、『2015年 新入社員「企業人としての意識」調査報告』
~「貢献・報酬の意識」「組織活動の意識」の点数はやや改善
「職業人の意識」「自己実現の意識」の点数は引き続き減少~
本調査は、株式会社ジェックが担当した新入社員研修において、新入社員自身が自分の企業人としての意識傾向を確認し成長の方向を知るために、研修開始冒頭に実施しているものです。設問では、「企業人としてもつべき考え方」を問い、回答は「そう思う」「わからない」「そう思わない」の三択式です。
本報告では、研修現場での傾向と併せて、2015年の特徴、および2001年以降の回答傾向についてご報告します。
「企業観」「仕事観」の変化
2014年は「5つの意識」の点数がすべて減少し、大きな変化があった年でしたが、2015年は2014年に比較してプラス0.1ポイントからマイナス0.2ポイントの変動で、大きな変化は見られませんでした。
その中で「貢献・報酬の意識」「組織活動の意識」は共に0.1ポイント上昇しました。設問「企業では、百の知識より一つの成果の方が尊ばれるべきである。」に対して「そう思う」と答えた割合は、2014年から2.4ポイント上昇、2013年との比較でも1.1ポイント上昇しています。
職場や企業に関する設問についても、回答率が上昇したものがあります。設問「職場のモラル(道徳)は、職場のモラール(やる気)以上に重要なことだ。」に対して「そう思う」と答えた割合は、2014年から5.0ポイント上昇、2013年と比較しても2.1ポイント上昇しています。「企業が存続している背景には、必ず社会に役立っているという事実がある。」に対して「そう思う」と答えた割合は、2014年は2013年より0.8ポイント減少しましたが、2015年は3.1ポイント上昇し、2013年と比較して2.3ポイント上昇、2001年からは12.3ポイント上昇しています。企業や職場に対する意識(考え方)が健全になりつつあると考えることができます。
一方で、2013年から2014年で大きく減少した「職業人の意識」は0.1ポイント減少、「自己実現の意識」は0.2ポイント減少し、2013年との比較では、「職業人の意識」は0.7ポイント減少、「自己実現の意識」は1.0ポイント減少したことになります。
2014年に報告した4つの設問のうち、「我々従業員は、会社の利益を生み出す手段であって、職場で個性を発揮することは難しい。(そう思わないと回答)」の傾向が改善しており良い兆しですが、他の3つの設問で減少傾向が続いています。
これらの傾向と、前述の職場や企業に関する意識、および次のような現象を併せて推察すると、企業に依存する傾向が強まったとも考えられます。
・設問「会社は自分で努力しようとしない人たちの成長にまで、責任を持つ必要はない。」に対し、「そう思う」と答えた割合は、2014年から1.4ポイント減少、2001年から、14.2ポイント減少
・入社動機で「会社に将来性がある」を選択した割合は、2014年から4.3ポイント上昇。
・採用説明会では、社風に関する質問や年次休暇の取得率など、働く環境に関する質問が増えている(弊社が新入社員研修を担当した企業の採用担当者)。
また、冒頭の設問(4つの内3つ)や次のような現象より、仕事に対する熱意が低下している、つまり仕事に対する意識(考え方)が昨年に引き続きマイナスのイメージになっていると捉えることができそうです。
・入社動機で「能力や個性が生かせる」を選択した割合は、2014年から2.4ポイント減少、2001年からは11.7ポイント減少している。
・「世の中には、本気で取り組む気になれないほどくだらないことが多い。」という設問に対し「そう思わない」と答えた割合は、2013年から1.5ポイント減少し、2001年から7.9ポイント減少している。
依存と逃避傾向の強まり
新入社員研修を担当したインストラクターから、昨年に引き続き「真面目で理解力が高く、修正力も高い」「自分にとっての意味・価値を理解すると行動する」という報告が上がっています。また、プレゼンテーションや司会、時間管理に慣れた方も見受けられました。これらは近年の新入社員の共通した強みです。「自分を振り返るのは苦にならない。受講感想文にも自分の傾向を書ける。」という報告も多く、自分を知ることへの興味も引き続き強いようです。
一方、次のような傾向も多くみられました。
・事細かく指示しないと行動しない。失敗しないことを意識している。
・質問は多く細かい。自分で考えずにすぐに教わろうとする。
・自分のためにならないと思ったら、周りがやっていてもやらない。
・褒めると動くようになる。自分を評価してほしいという欲求が高い。
・合格点主義。合格すれば良しで、満点を目指す行動をとらない。
・誰かが動くのを待つ傾向が強い。最初に意見を言った人や声の大きな人の意見に(自分と考えが違っていても)すぐに賛同する。
・当たらず障らず、保守的な人間関係を求める。ルール違反などをお互いに指摘し合えない。
2014年の調査報告で人間関係について「人間関係の距離を測って行動する」「主観を表に出さない、衝突をしない傾向」と記載しましたが、上記のように2015年も同様の傾向が見られました。嫌われないことや周りに合わせることに注意が行き、結果として自分の意見を発表できなかったり、自分のやりたいこともやらずに済ませてしまったりすることが多いようです。このように、組織の中で個性を発揮しようとする「自己実現の意識」が低下し、積極的に行動するよりも叱られないようにすればよいなど、従属的に依存してでも自分を守ろうとする保守的な傾向は継続しています。
更に、人事の方から新入社員研修に対して「上位者、先輩に報告・連絡・相談がない。コミュニケーションを取らないので取れるようにしてほしい」との要望が2014年は多数寄せられました。言われたことや指示されたことはやろうとしますが、中間での相談や結果報告がないため低いレベルの業務遂行になってしまったり、休憩時間でもスマートフォンを見てひとりで過ごすため、以前はその時間に行われていた暗黙知のスキルや知識の伝授が進まないという現象が現場で生じています。
このように、求められている以上の結果を出す行動をとらない(避ける)、職場での同期以外の人間関係を積極的に構築しようとしないなど、逃避の傾向も従属的依存傾向と共に強まっていると推察します。
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社ジェック http://www.jecc-net.co.jp / 7月2日発表・同社プレスリリースより転載)