JILPT、「情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査」
~テレワークは、生産性の向上、家庭生活と仕事の両立等に効果をもたらす~
労働政策研究・研修機構(JILPT)は、在宅勤務等テレワークの広がりおよびその雇用管理や働き方の実態等の現状を明らかにしようという趣旨・目的の下、「情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査」を行いました。
調査結果のポイント
◆企業調査結果
<テレワークを実施している企業は1割ほど>
テレワークのうち在宅勤務の実施割合は、「会社の制度として実施」が1.7%で、「上司の裁量・習慣として実施」を含むと5.6%。また、モバイルワークを含むテレワーク全般の実施割合は、「会社の制度として実施」が3.5%で、「上司の裁量・習慣として実施」を含むと13.2%。
<テレワークの実施目的は、“生産性の向上”、“移動時間の短縮・効率化”、“家庭生活との両立”で5割から6割>
テレワークの実施目的(複数回答)は、「終日在宅勤務」では、「家庭生活を両立させる従業員への対応」(50.9%)が最も高く、次いで、「定型的業務の効率・生産性の向上」と「従業員の移動時間の短縮・効率化」(ともに43.9%)、「従業員のゆとりと健康的な生活の確保」(31.6%)、「創造的業務の効率・生産性の向上」(28.1%)など。「1日の一部在宅勤務」では、「従業員の移動時間の短縮・効率化」(55.1%)が最も高く、次いで、「家庭生活を両立させる従業員への対応」(46.9%)、「定型的業務の効率・生産性の向上」(44.9%)、「創造的業務の効率・生産性の向上」(40.8%)など。「モバイルワーク」では、「定型的業務の効率・生産性の向上」(62.6%)が最も高く、次いで、「従業員の移動時間の短縮・効率化」(61.9%)、「顧客満足度の向上」(28.4%)、「創造的業務の効率・生産性の向上」(27.7%)など。
<テレワーク実施者に適用されているのは、7割前後が「通常の労働時間制度」>
テレワークを行っている従業員に適用している労働時間制度は、「終日在宅勤務」、「1日の一部在宅勤務」、「モバイルワーク」とも「通常の労働時間制度」の割合が最も高い(それぞれ68.4%、64.7%、73.0%)。次いで、「終日在宅勤務」、「1日の一部在宅勤務」で「フレックスタイム制」(それぞれ29.8%、35.3%)、「モバイルワーク」で「事業場外のみなし労働」(30.9%)。
<テレワークの実施は、生産性の向上、家庭生活と仕事の両立等に効果がある>
テレワーク実施の効果として回答割合が高かったのは、「終日在宅勤務」では、「家庭生活を両立させる従業員への対応」(51.8%)、「定型的業務の効率・生産性の向上」と「従業員の移動時間の短縮・効率化」(ともに35.7%)、「従業員のゆとりと健康的な生活の確保」(33.9%)など。「1日の一部在宅勤務」では、「家庭生活を両立させる従業員への対応」と「従業員の移動時間の短縮・効率化」(ともに44.9%)、「従業員のゆとりと健康的な生活の確保」(32.7%)、「創造的業務の効率・生産性の向上」(30.6%)など。「モバイルワーク」では「従業員の移動時間の短縮・効率化」(58.4%)、「定型的業務の効率・生産性の向上」(54.5%)。
<テレワーク実施の問題・課題は、“進捗管理”、“労働時間管理”、“情報セキュリティの確保”、“コミュニケーション”>
「終日在宅勤務」では、「進捗状況などの管理が難しい」(36.4%)、「労働時間の管理が難しい」(30.9%)、「コミュニケーションに問題がある」と「情報セキュリティの確保に問題がある」(ともに27.3%)、「評価が難しい」(18.2%)など。「1日の一部在宅勤務」では、「労働時間の管理が難しい」(42.0%)、「コミュニケーションに問題がある」と「情報セキュリティの確保に問題がある」(ともに28.0%)、「進捗状況などの管理が難しい」(26.0%)など。「モバイルワーク」では、「情報セキュリティの確保に問題がある」(42.3%)、「労働時間の管理が難しい」(40.3%)、「機器のコストがかかる」(25.5%)など。
◆従業員調査結果
<5人に1人がテレワークをすることがある>
実際にテレワークをすることが「ある」従業員は20.6%、「ない」従業員は79.4%。
<テレワークをすることがある従業員の4人に1人が、週1日以上「自宅」で仕事をしている>
テレワークをすることが「ある」従業員が「所属企業の事業所」で仕事をする頻度は、「ほぼ毎日」が72.5%と高い。それ以外の場所では、「自宅」で仕事をする割合が比較的高く、その頻度は、「ほぼ毎日」が5.6%、「週に3~4日」が4.8%、「週に1~2日程度」は14.7%と、2割以上の従業員が「自宅」で週1日以上仕事をしている。
<テレワークをすることがある従業員の1か月の実労働時間は長くはない>
テレワークをすることがある従業員の1か月の実労働時間は、「160時間以上180時間未満」(29.8%)、「180時間以上200時間未満」(22.6%)の割合が高く、「200時間以上220時間未満」(13.9%)、「140時間以上160時間未満」(12.2%)がこれに続く。
<テレワークは、仕事面、生活面の両方でメリットがあると考えられている>
テレワークを行っている従業員が考えるテレワークのメリット(複数回答)は、「仕事の生産性・効率性が向上する」(54.4%)が群を抜いて高い割合。その他、「通勤による負担が少ない」(17.4%)、「顧客サービスが向上する」(16.5%)、「ストレスが減り心のゆとりが持てる」(15.2%)など。
<テレワークは、「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」、「長時間労働になりやすい」、「仕事の評価が難しい」などのデメリットがあると考えられている>
テレワークのデメリット(複数回答)は、「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」(38.3%)が最も高い割合で、次いで、「長時間労働になりやすい」(21.1%)、「仕事の評価が難しい」(16.9%)、「上司等とコミュニケーションが難しい」(11.4%)など。なお、「デメリットは特にない」という回答も28.1%みられる。
※調査結果の最終的なとりまとめは調査シリーズNo.140として刊行。
◆ 本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/ /6月4日発表・同機構プレスリリースより転載)