マンパワー雇用予測調査・「人材不足」に関する追加調査結果発表
日本における企業の「人材不足感」は81%と調査開始以来の最高値
エンジニア、営業/販売職、会計・財務スタッフなどの職種において人材不足感が高い
今回の調査結果では、2011年の調査時に人材不足を感じている職種のトップだった「営業・販売スタッフ」が2位に後退し、「エンジニア」が首位となりました。「会計・財務スタッフ」、「IT系エンジニア」といった専門性の高い職種は、引き続き企業が人材不足を感じている職種の上位にランクインしています。この結果から、専門的かつ高度なスキルや知識を必要とする職種、または、需要の増減によって人員の入れ替わりが頻繁な職種において多くの企業が人材不足を感じていることがわかります。さらに、今回は、「カスタマーサービス担当スタッフ」が初めて10位以内に入っています。
総合人材サービスのマンパワーグループ株式会社(本社・神奈川県横浜市、取締役会長代表執行役社長:ダリル E.グリーン、資本金:40億円)は、1011社を対象に、現在の労働市場における企業の人材不足感、および人材不足を感じている職種について調査を行いました。調査対象となった企業の81%が、必要な職種に対して「人材不足を感じている」と回答、今回調査を行った国・地域の中で日本が最も高い数値となっています。本調査はマンパワー社が、企業の「人材不足感」に関し、マンパワー雇用予測調査の追加調査として2006年から開始し、毎年行っているものです。今回の調査は、世界では39カ国・地域の約40,000社の企業を対象に、2012年1月に実施したものです。
日本における企業の「人材不足感」の推移は以下のとおりで、2012年は前年同期比1ポイント増の81%と過去最高値を記録しました。長引く円高や世界的な金融不安など企業にとって厳しい経営環境は続いており、人材の採用についても慎重になっている企業が多く、企業が必要とする人材の不足感は未だ解消されていないことがわかります。世界の平均値である34%と比べると、日本は47ポイント高く、調査対象となった国・地域中、日本企業の人材不足感が最も高い値を記録しました。(図1参照)
さらに、企業が人材不足を感じている職種を詳しく見てみると、2011年から職種の内容にはほとんど変化は見られないものの、順位には変動が見られます。2011年は3位だった「エンジニア」が1位、2011年は4位だった「会計・財務スタッフ」が3位に順位を上げており、総じて引き続き専門性の高い職種において人材不足感が強いといえます。2012年度の1位から10位は図2のとおりです。
まず、2006年の調査開始以来、常に1位だった「営業/販売職」が初めて2位に後退しました。一方、2011年は3位だった「エンジニア」が1位、4位だった「会計・財務スタッフ」が3位と順位を上げています。「エンジニア」という職種に関しては、航空工学、電気工学、機械工学などの専門的な分野において専門資格や同等の知識をもっている人材の需要が高まっているようです。昨年から、ローコストキャリアと呼ばれる格安航空会社の参入が相次ぎ、より高機能かつコスト効率の高い航空機の開発等が進む中、専門知識を持つ人材ニーズの高まりが考えられます。
さらに、「技術者」は、2位から4位に後退しています。順位は後退したものの、営業分野では、「営業・販売」が2位に入っていることに加え、企業の中間層を担う職種である「営業マネージャー」や「管理者・スーパバイザー」も、引き続き10位以内に入っており、営業体制強化のための人材確保が重要になっていることがわかります。具体的には、営業マネージャーは、7位から6位に上がり、管理職・スーパバイザーは昨年から変化はなく10位となっています。
さらに、「IT関連スタッフ」、「IT関連のプロジェクトマネージャー」といった、より専門知識を必要とする職種は、2011年からほぼ順位に変化はないようです。IT業界では、以前から業務をプロジェクト単位でアウトソーシングすることが多く、プロジェクトを管理できるスキルと知識を備えた人材が必要とされているようです。
また、今回の調査では、「顧客サービス担当スタッフ」が2006年の調査以来はじめて10位以内に入っており、インターネット通販やスマートフォンの販売増など、コールセンター等での顧客対応ニーズが増加していることが考えられます。さらに、2011年には9位だった「医者および看護師以外の医療専門家」が8位に上がっています。特に、介護や福祉分野では、人材の離職率が依然として高いことに加え、今後ますます高齢化が進むことが予想されるため、人材確保が急務となっていることが考えられます。
■ 約8割の企業が必要な人材を確保できなかった場合、顧客の要望に応える能力に影響があると回答
人材不足を感じていると回答した企業826社に対し、必要な人材が確保できなかった場合、顧客の要望に応える能力にどれくらいの影響があるかについて調査したところ、「非常に影響がある」と回答した企業は25%(210社)、「やや影響がある」と回答した企業は59%(486社)となっています。合計で88%の企業がなんらかの影響があると感じており、企業のサービスレベルを向上または維持するためには的確な人材確保が重要なことが伺えます。またアジアの他の国・地域と比べても、日本企業は必要な人材の確保を経営上の重要事項としていることがわかります。(図3参照)
■ 人材確保が難しい理由は「対人力」が1位、続いて「協調性」など、ヒューマンスキルが主流
人材不足だと感じる職種において人材の確保が難しいと回答した826社に理由を調査したところ、「対人力」と回答した企業が最も多く、27%となりました。また、2番目に多かった理由に、「チームワーク・協調性」、「熱意・モチベーション」と回答した企業がそれぞれ26%、続いて「柔軟性・順応性」と回答した企業が23%、「不明瞭なことや複雑なことへの対応力」と回答した企業が22%、「実務経験不足」、「対話スキル」、「問題解決力・意思決定力」と回答した企業がそれぞれ21%となりました。 総じて、会社への順応性や他の社員との良好な関係を築けるといったヒューマンスキルを重視している企業が多いことがわかります。昨年の結果では、「実務経験不足」を理由に挙げた企業が最も多く、その他「給与でのミスマッチ」や「企業に対する知識や業界知識がない」と回答した企業も多かったものの、今回は、数回の面接ではなかなか判断できないヒューマンスキルを重視する企業が増えており、希望する人材の確保が難しくなっているようです。
■人材の確保が難しいと回答した企業の3割が「人材確保のしくみを改善」することで対応と回答
人材不足だと感じる職種において人材の確保が難しいと回答した826社に、人材不足を解消する戦略について質問したところ、「人材確保のしくみを改善する(高いポテンシャルを持つ社員を選定する、経営陣の後継者を育成するなど)」と回答した企業が35%と最も多い結果となりました。少子高齢化による労働人口の減少が進む中、後継者の育成に加え、定年の引き上げ、再雇用制度、女性社員の活用など、企業が人材を確保するための環境やしくみを改善することが急務となっています。また、「採用が難しい職種における社員の能力開発ニーズに沿った研修内容を策定する」と回答した企業は27%となり、2番目に多い施策となっています。新たに人材を採用するよりも、既存社員の能力やポテンシャルを考慮し、必要とされるスキルを持つ人材に育成するかたちで対応する企業が多いことがわかります。さらに、「既存の社員により多くの研修や能力開発の機会を提供する」と回答した企業は22%となり、昨年に引き続き自社だけでなく、外部の教育機関に研修を委託する企業も増えているようです。
■ グローバルにおいては人材不足を感じている企業の割合は前年同期から変化はなく34%
世界において回答した40,000社のうち34%の企業が、特定の職種への人材不足感を感じていると回答しています。必要とする人材の採用に困難を感じている企業の割合は、日本(81%)、ブラジル(71%)、ブルガリア(51%)、オーストラリア(50%)、アメリカ合衆国 (49%)、インドおよびニュージーランド(それぞれ48%)の順で高い数値となりました。今回、世界において人材不足感が最も高い地域は、アジア太平洋地域で、2011年から変化はなく45%となっています。また、北・南米地域は、2011年に比べ4ポイント増の41%となり、企業の人材不足感が増しています。人材不足感が最も低い地域は、2011年に引き続きヨーロッパ・中東・アフリカ地域で、前年同期に比べ1ポイント減の25%となっています。
【調査概要】
調査時期 : 2012年1月19日~2月1日
調査対象 :東京・大阪・名古屋の次の7業種における企業の人事部門長
(1) 金融・保険・不動産、(2) 製造、(3) 鉱工業・建設、(4) 公共・教育(役所、学校関係)、(5) サービス(情報処理、ソフトウェア、娯楽など)、(6) 運輸・公益、(7) 卸・小売
質問内容 :
①雇用形態を問わず、どれほど人材不足を感じていますか?
②最も人材不足感があるのはどの職種ですか?
③②でご回答いただいた職種で必要な人材が確保できなかった場合、貴社のクライアントの要望に応える能力にどれくらいの影響があると思いますか?
④必要な人材が確保できなかった職種における人材確保が難しい理由は何ですか?
⑤人材確保の難しさに対して、どのような戦略で克服しようと考えていますか?
調査方法 :次のいずれかの方法で回答を収集。
(1) 電話による聞き取り (2) 電子メールによるアンケート
有効回答数:日本国内 1011社、世界39カ国・地域では40,000社
調査の歴史:2006年からマンパワー雇用予測調査の追加調査として開始し、年に一度、マンパワー雇用予測調査の全調査対象国において実施します。
今回の調査結果を踏まえ、日本で人材不足を感じている企業が引き続き増加傾向にあるということは、企業が必要としている人材の採用やミスマッチに苦慮していることが伺える結果であるといえます。そのような状況を踏まえ、マンパワーグループでは、企業と求職者の方々における雇用のミスマッチを少しでも解消できるよう、今後もより多くの雇用機会の創出を目指します。
◆ 本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(マンパワーグループ株式会社 http://www.manpowergroup.jp/ /6月1日発表・同社プレスリリースより転載)